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Data.56 見えざる者

「滝が見えてきたね……!」


 渓谷を飛ぶ優雅蝶。その正面に大きな滝が見えてきた。以前行ったことがある『浮草の滝』より数倍大きい……!


「流石にあれに突っ込んだりはしないよ!」


 優雅蝶は滝を飛び越え、その勢いで一時的に森の木々の上まで飛び上がる。高いところからだと現在地がよくわかる。もう山の中腹あたりまで来ているみたいだ。


「そろそろどこかで一息入れてもいいかもしれないねぇ」


 リュカさんが念力回復の道具である小瓶に口をつけながら言う。


 確かに山に入って以降、戦いながらずっと飛んでいるし、そろそろ地面が恋しくなってきた頃だ。一度地に足をつけるのもいいかもしれない。そんなことを思いつつ、優雅蝶は再び木々の中に(まぎ)れるべく高度を落としていく。


 シュッ、シュッ、シュッ――!


 その時、風を切るような音が連続で聞こえた。そして、次の瞬間には優雅蝶が大きく揺れ、真っすぐ飛ぶことすらままならない状態になっていた! 揺れる視界の中、優雅蝶の羽を見てみると……穴が空いている!


 今の風切り音は飛び道具! つまり、私たちは狙われている……! でも、あのサルたちのような投石ではない。もっと鋭く、正確な、人の手による狙撃……!


「くぅ……! こうなったら着陸するしかない……!」


 ふらふらの蝶を操り、なんとか比較的安全な場所への着陸を目指すリュカさん。その間も執拗(しつよう)な狙撃は続き、蝶が攻撃を食らうたびに大きく揺れる!


「あっ……! きゃあああああああああ……っ!」


「うるみっ!?」


 揺れた拍子にうるみの体が空中へと投げ出される! 手を伸ばしたけど……ギリギリのところで届かなかった! うるみはその白くて長い髪を激しく揺らしながら地上へと落ちていく!


 この高度なら落下しても即死はしない気がするけど、問題は攻撃を行っている敵が地上にいるということ! 私も彼女を追って地上に降りなければ……!


「リュカさん! 私も降ります!」


「うん……! あ、まって! それじゃあ誰が私を守るんだい……!?」


「ごめんなさい! 後で助けに行きます!」


 勇気を出して蝶から飛び降りる! 何分にも思える長い浮遊感の後、私は木々の枝をバキバキと折りながら地上に落下した。うん、さほどダメージはない!


 シュッ――!

 またあの風を切る音!

 意識していれば反応は出来る……!


「……はあっ!」


 飛んで来た何かに対して刃を振り下ろす。しかし、刃にその何かが当たることはなかった。代わりに私の二の腕を何かがかすめたような感覚……!


「くぅ……!」


 ちょっとだけどダメージが入った……! それに体に当たってるのにその正体がまったく見えない。見えざる飛び道具とでもいうの……!?


 シュッ、シュッ、シュッ――!


 意地になって何としても斬り払いたい気分になるけど……ここは抑える! とりあえず、木の陰に隠れて様子をうかがうことにする。


「……気配が2つ」


 私が木の陰に隠れたことを知って、また飛び道具で狙えるように自分たちの位置を変えているみたい。こりゃ、待ってても近づいてくることはなさそうだ。こちらから接近しなければならない!


「こいつを使ってみるか……!」


 武具を鹿角刀から鰻斬宝刀(うなぎりほうとう)に変更する。この刀は重いけど、刃の幅がかなり広い。私みたいな細身の女子なら体のほとんどを隠せる。


 これを盾として構え、気配の方向へと接近する。向こうもすぐに私の移動に気づいたみたいで、飛び道具による攻撃が再開された。


 ただ、見えない飛び道具が鰻斬宝刀(うなぎりほうとう)を貫くことはなかった。それどころか、刃に当たってカキンッという音を立てても、大した衝撃が伝わってこない。見えない代わりに威力が低い飛び道具なのかも。


 それに何度も矢を受けていると、それが飛んで来た方向や距離が掴めてくる。もう、かなり近い……。おそらく、ここから数歩進んだ先の木の上にいる!


 私は守りを解き、一気に距離を詰めた。そして、その木の幹に斧を振るう要領で刃を当てる!


三舞(さんまい)おろし!」


 一振りで三度の斬撃を生み出す鰻斬宝刀(うなぎりほうとう)の武具技能! ガツンと幹に食い込んだ刃から追加で二度の斬撃が発生し、木を完全に切断する!


 ガザガザと葉を揺らしながら倒れゆく木。そこから2つの影が飛び降りる! 1つは足音もなく地面に降り立ち、もう1つは……腰から地面に叩きつけられた。


「いたーっ! ム、ムゥ……!」


 腰から落ちた方が、腰をさすりながら立ち上がる。その手には弓が握られている。こいつが見えない飛び道具……いや、矢を撃っていた奴か!


「このライオー様を地に落とすとは……やりおるわい! 流石はウワサのトラヒメといったところかっ!」


 こいつ『ライオー』っていうのか。見た目は小さい女の子なのに、しゃべり方がいかつい(・・・・)な。というか、この子たちが電脳暴走族とか言われてる『惨堕亞暴琉斗(さんだーぼると)』のメンバーでいいのかな?


 確かに服装は漆黒の羽織袴に金の刺繍でヤンキースタイルに近いけど……。それを着ているのが小学生でも低学年くらいの女の子ってねぇ。髪型も赤色のツインテールで少女感がすごい。


 あ、でも、もう1人の方はスラッと背が高くてナイスバディだ。水色のウェーブ髪に水色のアイシャドー、唇も水色で塗ってあるからすごく瑞々(みずみず)しい。


 服装は下半身の袴こそライオーと一緒だけど、上半身は水色と金色が混じったサラシのみというセクシー路線。どちらかと言えば、水色の女性の方がヤンキーっぽいし、こっちが組合(ギルド)のリーダーか……?


「総長どうします? 私が前衛で総長が後衛といういつものスタイルで良いですか?」


「いや、まずは我1人で戦おう。その実力……もっと知りたくなったわい!」


 いや、ちびっ子ヤンキーの方が総長かい! なんか調子狂うけど、先に攻撃を仕掛けてきたのはそっちなんだから、ぶった斬っても泣いたりしないでよね!

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