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Data.28 迷宮への誘い

「トラヒメさん、ダンジョンに行ってみませんか?」


 レキとおばさんと別れた後、うるみはそんなことを言いだした。ダンジョンを知らない私は当然こう答えた。


「ダンジョンって何?」


「あっ、正式名称は『迷宮』と言いまして、ダンジョンという呼び方はプレイヤー間で使われている俗称(ぞくしょう)のようなものです」


「うーん、迷宮の方も知らないなぁ」


「そうですか……。改まって説明するとなると少し難しいんですけど、簡単に言えば入るたびに構造が変わる迷路を攻略する遊びです」


 迷路か……。

 私、じれったくてあんまり得意じゃないんだよねぇ……。細かいあの隙間を目で追っていくと、いつの間にか目が回って……。あー、なんか想像するだけでクラクラしてきた。


「あまり心惹かれないなぁ……」


「で、でも! 迷路といってもそこには魔物も出ますし、宝箱だって置いてあります! しかも初回クリア時には確定で報酬が貰えるんです! ダンジョンの難易度によっては三つ星装備や上級技能だって手に入るんですよ!」


 それは……心惹かれるなぁ! ちょうど装備や技能を集めるのが楽しくなってきたところだ。いらない物だってレキにあげれば『芝草村』が発展するしね。


「詳しい話を聞かせてくれるかしら?」


「了解です! まず何から話しましょうか?」


「んー、じゃあダンジョンってどこにあるの?」


「入口はこの世界の各地に存在しています。私が行こうと思っているのは、さっき渡った川の上流にあるダンジョンです」


 あの『悪鬼の森』に行くために渡った川の上流か。結構近場にあるんだなぁ。


「ダンジョンをクリアするっていうのは、具体的にどうすればいいの?」


「一番奥で待ち構えているボスを倒せばいいんです。もちろんボスはそのダンジョンに潜む魔物の中でも一番強いですが、それさえ倒せれば問答無用でクリアになります」


「なるほど、思ったよりシンプルだ」


 最終的に一番強い奴をぶっ飛ばせばいいんだもんね。私1人ならその前の迷路部分で尻込みしてしまいそうだけど、頭の良いうるみがいれば迷うことはなさそうだ。


 逆にうるみも、私がいれば戦闘に関しては安心って考えでしょうね。お互いに得があって楽しそうとなれば……!


「この話乗った! ダンジョンに行こう!」


「あ、ありがとうございます!」


「お礼はいいって! お互い様じゃない?」


 ということで、私たちは『芝草村』を出て川の上流を目指す。


 今日は草原でジャビと戦って、レキを救うために赤鬼とも戦った。時間的にも内容的にも、今日の冒険はダンジョン攻略でおしまいかな。もう十分お腹いっぱいだし、無理な大食いはこれからの楽しみを潰すだけだ。


 それにせっかくお母さんが家にいる日だから、2人で晩御飯を食べに行ってもいい。まあ、苦戦してる仕事がひと段落してたらの話だけど……。


「それにしても、私の新しい防具は三つ星評価なのに露出が多いよね。デザインは好みだけど、どこも守れてる気がしないな!」


 実際、露出度で言えば『草の葉衣』と大差ない。材質は草と葉っぱに比べたらそりゃしっかりしてるけどね。


「確かに守ってる箇所が少ないように見えますが、そういう防具でも評価が高いものは布がない部分の防御力も上げてくれているという話ですよ。もちろん、ガチガチに固めた鎧みたいな防具に比べると劣るのは間違いないですけどね」


「へー、これでも防御力は上がってるんだなぁ」


「この電脳戦国絵巻は数値による能力の表示を極力排除していますから、わかりにくいところもありますよね」


「まあね。でも、MMORPGってわけのわからない数字だらけっていうイメージがあったから、このゲームシステムの方が肌に馴染む気がするよ」


 昔、ステータス画面が大量の数字と謎の用語で埋まっているゲームの画像を見たことがある。あれを見た時の衝撃はなかなかのものだった。よくこんなの理解できるなぁ、みんな頭が良いんだなぁと思った気がする。


「確かに何でもかんでも表示されてない方が、逆にわかりやすいのかもしれませんね。それにトッププレイヤーの人たちは、感覚でダメージを把握できるようになるらしいですよ」


「何でも極めると見えないものまで見えてくるものよ。私はまだこのゲームではその境地に達していないけど、そういう感覚はわかる気がするな」


 ゲームについて熱く語り合っている内に、私たちは目的地の近くまで来ていた。苔の生えた岩を横目に、河原の砂利の上を歩き、水が流れ落ちる音を聞く。


「ここが『浮草(うきくさ)の滝』です。ダンジョンはこの滝の裏にあるはずです」


 滝の裏のダンジョンか……。まさにファンタジーって感じね。


 表であるここからでは、その入り口をまったく見ることが出来ない。滝からはそれだけ大量の水が常に落ちてきている。


 でも、これくらいの規模の滝なら現実世界にも存在する。そう考えると、なかなかリアルもファンタジーだ。だって何年も何十年も何百年も同じ場所から大量の水が流れ落ち続けてるのに、枯れることがないんだもの。


 もちろんその原理は科学的に証明されている。水は循環しているんだ。でも、それを説明されても感覚的には理解出来ない。さっきのゲームの話と真逆だなって思う。


 ……おっと、私としたことが自然に感銘(かんめい)を受けてらしくないことを考えてしまった。まあ、私も多感な女子中学生だからそういう時もある。


 ただ、ここからは刀の時間だ。切り替えていこう!

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― 新着の感想 ―
[一言] ネームド戦した後に休憩挟まずダンジョンにいく事を提案するうるみさん、主人公より戦闘狂では?
[良い点] 達人にしかわからないよ・・・ [一言] 切り替えていこう!× 斬り替えていこう!○
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