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Data.17 雷を刃に

「さて、いらない技能を見極めるためにも、まずは【敏捷増強】からチェックしてみるかな」


敏捷増強(びんしょうぞうきょう)

 階級:下級 形態:常時 修練値:0/40

〈敏捷性をわずかに上昇させる〉


 この技能は【体力増強Ⅰ】の素早さ版って感じだね。もしかして、さっき戦闘中に体が軽くなった気がしたのは、この技能のおかげだったり? もしそうだとしたら、この技能は私にとって必要な技能ということになる!


 このゲームを調べるうちに、私の動きにキレがないのはゲームへの慣れとか、人斬りのブランクが原因じゃないことに気づいた。ただ単純に身体能力を強化する技能が足りていないから、物足りない動きになっていたんだ。


 シンプルな対戦ゲームだった『VR居合』と違い、『電脳戦国絵巻』は時間をかけて強くなるMMORPGというジャンルなんだ。ゆえに最初から私の反射神経についてこられるほど強い体は用意されていない……。


 だからこそ、自分で理想の体を手に入れないといけない。この技能はその野望の第一歩としては十分なものだ!


「ねえ、うるみ。【虎影斬】じゃなくて、この【敏捷増強】を昇級させるってのはどう?」


「えっ、【敏捷増強】をですか……?」


 うるみはいぶかしそうな顔をする。


「確かに体の動きは速くなりますが、その速さを生かせるほど運動能力や反射神経に優れたプレイヤーは少ないと言われていますね。私もこのデフォルトの状態でリアルよりも身体能力が高いと感じていますし、これ以上の能力を持たされても頭がついていけるかどうか……」


 なるほど、普通は速さを上げる必要性を感じないから、この技能もあんまり良いものと思われていないわけか。でも、私には必要だしどんどん昇級させていきたいなぁ~。


「ちなみに今回手に入れた指南書は『風雷』という属性付きの指南書ですから、属性を持たない『常時』の技能の昇級には使えませんよ」


「あ、そうなんだ。じゃあやっぱり【虎影斬】に決まりかな」


 敵に大ダメージを与える技能も欲しいからねぇ。ズバッと斬り捨てるあの感覚を得るには、速さだけでもダメだもの。


 とりあえず【敏捷増強Ⅰ】は残すことにして、他にも有用な技能がないかチェックしていく。そして数分後、私はすべての技能を調べ終えた。


「……うーん、【敏捷増強】以外の5つの技能は使えなさそうだなぁ」


 なぜなら、刀に対応していない技能ばかりだからだ。


 【荒振(あらぶ)り】は鞭の技能。

 おそらくジャビが最後に使っていたぶんぶん鞭を振り回す技だ。


 【牛突き】は槍の技能。

 その名の通り、槍を構えて牛みたいに突進する技だ。


 【炎熱弾】は杖の技能。

 魔法のような技能も特定の武具を装備していないと使えないみたい。つまり、刀を持ったまま炎をばら撒くプランは実現できないわけだ。


 【石破断】は斧の技能。

 石を割るような重い一撃だってさ。刀に対応していたら欲しかったけどねぇ。


 唯一【硬化術(こうかじゅつ)・銅】だけは全武具に対応している太っ腹な技能だったけど、肝心の効果が『敏捷性が低下する代わりに防御力を上昇させる』ってのはねぇ……。


 私の理想と正反対だから持っていても仕方がない。きっとこの技能そのものは割と素晴らしい効果なんだろうけど、音楽性の違いって奴ね。


「よし、この5個を消費して【虎影斬】を昇級させる!」


 技能タブの【虎影斬】を長押しし、表示された技能一覧の中から消費する技能を次々タッチする。その後、何度か表示される確認画面に同意すれば第一段階は完了。無事に【虎影斬】の修練値は40/40になった。


 消費された技能は消えてしまうから、ミスが起こらないように確認の回数が多い。ちょっと手間だけど、こればっかりは仕方ない。間違って大事な技能を消しちゃったら、そのまま二度とゲームをやらないなんて人も多いだろうからね。


「それにしても、5個の技能でピッタリ40になってよかったよ。あ、もしかしてオーバーしてる分が知らず知らずのうちに消えていたりして……?」


「いえ、下級技能を消費して得られる修練値は『8』ですから、本当にピッタリですよ」


 つまり、8×5で40ってことか。1個でも手に入れる技能が欠けていたらアウトだったあたり、やはり私は運が良い!


 さあ、後は『風雷の中級指南書』を使うのみだ。修練値が上限に達した【虎影斬】を長押しすると、今度は昇級に使う道具を選択する画面が表示される。私が持っている指南書は1つだけなので、当然それを選択。やはり何度か確認が出て、それに同意すると……!


《技能昇級! 下級技能【虎影斬】は中級技能【雷虎影斬】に昇級しました!》


 雷虎影斬(らいこえいざん)

 何というカッコいい響き……!

 そして、明らかに雷の力が宿っているとわかる!


「早速試し切りを……!」


《町中での戦闘行為は禁止です》


 そうだった……。そもそも戦闘禁止区域だからこそ、この村に来たんだった。刀を振るうのはおとなしく村の外に出てからにしよう……と、その前に効果をしっかり確認しておかないとね。


雷虎影斬(らいこえいざん)

 階級:中級 形態:体術 武具:刀

 属性:風雷 念力消費:小 修練値:0/200

〈虎の如き気迫が稲妻を呼び覚ます一太刀〉


 おおっ、ちゃんと中級になってるし、属性も『風雷』になってるし、昇級したのに念力消費は小のままだし、修練値が桁違いに上がってるし、なんかいろいろすごい!


「ありがとう、うるみ。おかげで無事【虎影斬】を昇級させることが出来たよ」


「いえいえ、すべてはトラヒメさんの実力です。私なんてそんな……。でも、もしよろしければ早速【雷虎影斬】を見せていただけませんか?」


「うんうん! 念力の続く限りいくらでも見せてあげる!」


 なんてったって『稲妻を呼び覚ます一太刀』だもんなぁ……。きっとカッコいいエフェクトがバチバチ出ることだろう!


「むふふふふっ……ん?」


 村の外に出ようと立ち上がった時、近くの民家の戸がガラガラッと開いた。そして、中から明らかにあたふたしているおばさんが出てきた。あのあたふた加減……きっとただ事ではない。目もわかりやすいくらい助けを求めている……!


 ……あっ、おばさんと目が合ってしまった。おばさんはこちらに向かってくることはないが、目で何かを訴えている!


 なんだなんだ、何か始まるのか!?

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