表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/116

Data.14 滅多斬り

 興奮のせいかわからないけど、なんか体が軽くなった気もする……! この衝動に任せてこのまま……いく!


 私の豹変っぷりに驚いている2人の男の首を横一閃で切り裂き、そのまま体を回転させ胴体もズバッと斬り裂く!


 これで残りは5人……!

 あと5人しかいない!


「う、うわあああっ! く、来るなぁ! 炎熱弾(えんねつだん)っ!」


 杖を持った男が私から距離を取りながら火球を飛ばしてくる。なるほど、飛び道具が使える奴もいるってことね。このくらいの速度の球なら簡単に避けられるけど、避けながら近づくとなると少し面倒だ。


 ここは盾を使おう!

 肉の盾をね……!


「うぎゃああああああ……っ!」


 味方の火球が飛んで来るので私に接近して攻撃するのをためらっていた男の腹に刀を突き刺し、そのまま体ごと押して杖を持った男に接近する。味方を盾にされては撃てるものも撃てまい!


 どうすればいいのかわからず慌てるだけの杖の男も一緒に貫き、その後一気に刀を引き抜く。鹿角刀の刃は長い……。2人まとめて【虎影斬】で袈裟(けさ)斬りにし、これで残りは3人だけ!


 すでに背後に迫って来ていた3人のうちの1人が槍で私を刺し貫こうとする。でも、そんな腰の引けた突き方では全然力が入らない。それどころか、私に槍を持たれてグッと力を込められると……。


「あ」


 マヌケな声を出した男の手から槍がすっぽ抜ける。後はザクザク斬っておしまいだ。


 さて、残り2人はジャビと……。そう考えているうちにも次の攻撃が迫りくる。


 ツジギリ・システム発動者が死んだ時に発生する赤黒いモヤのようなものを隠れ蓑に、ジャビじゃない方の生き残りが大剣をぶん回す。男の周囲2メートルほどに(とど)まっていたら私は真っ二つだった。


 まあ、あくまでも地上の周囲2メートルの話だけど!


「縦回転のぉ……虎影斬!」


 空中に跳び上がっていた私は男の頭部を狙って刀を振り下ろし、その勢いでくるっと縦に1回転する。重力+回転の力に加え、刃は頭、首、胸にまで達したのでダメージは十分。これでジャビ以外のプレイヤーは全部斬り終わってしまった。


 気持ちいい時間もそろそろ終わりか……。


「もう勝った気でいるんじゃねーよぉ!!」


 ジャビが叫び、殺気を放つ。しかし、その殺気は正面にいるジャビ本人ではなく、私の背後から伝わってくる……。私はその感覚に従い、右へ小さく跳んだ。


 その瞬間、左肩に妙な刺激……!

 視線をそちらに向けると、さっき斬ったはずの作り物の蛇が左肩に食いついているのが見えた! しかも、噛まれた部分から痺れが広がっていく……!


「へへっ! 毒蛇鞭(どくじゃべん)には当然予備もあるんだよなぁ! どうだ体が痺れていく感覚はよぉ!? ハハッ! 調子に乗ってるからそうなるんだぁ!」


「……あんたこそ、どうして勝った気でいるの? 私が噛まれたのは左肩、痺れているのも左肩。そして、私が刀を握る手は右手。つまり……」


 強く大地を蹴り、一気にジャビとの距離を詰めにいく!


「あんたをぶった斬るのに何の支障もないってこと!」


「ナマイキ言いやがってガキが! 舐めてると潰すぞ!」


 ジャビは蛇の形の鞭を捨て、両手に普通の鞭を持って無茶苦茶に振り回し始めた。一見雑な攻撃に見えるけど、雑だからこそ攻撃の軌道が読みにくい。流石は組合(ギルド)のサブリーダーを名乗るだけあって、他の奴らとは一味違う。


 でも、私にとってこの程度の攻撃を(くぐ)り抜けるのなんて、そう難しいことじゃないのよね! 時に体をひらりと傾け、時にするりと刀で受け流す……。すぐにジャビの首が私の目の前……真正面に入った!


「鹿角突き!」


 突きの勢いによる加速を利用し一気に踏み込み、その首を貫いた! しかし、技能1つでは死なないことをジャビも理解していた。私が首を狙ってくるタイミングこそ反撃の好機と言わんばかりに鞭がこちらに迫ってくる!


 でも……もう遅い!


「虎影斬!」


 それは技能から技能への連携!


 首に突き刺さった刃を【虎影斬】の力で真下へと振り下ろす! 本来ならば体がコンパスのようになってしまうグロ技だけど、そこは全年齢向けゲーム。ただカッコいいエフェクトが表示されるのみで、血と内臓が飛び散ったりはしない!


 鹿角刀は難なく体を斬り裂き、勢い余って刃は地面にまで達した。それと同時にジャビの振るっていた鞭が私の体に触れる。しかし、その鞭が私にダメージを与えることはなかった。ジャビが死んだから、攻撃も無効化されたんだ。


「つ、つええ……! 強すぎる……っ! お前みたいな奴がなぜ無名なんだぁ……!!」


 私を褒めたたえる言葉を残してジャビは消滅した。


 ……ふふ、なかなか強敵だったな。こいつから『強すぎる』と言われるのは案外悪い気がしない。


「ステータス!」


◆基本情報

 名前:トラヒメ

 状態:麻痺

 体力:■■■■□□

 念力:■■□□□


 あー、やっぱり結構攻撃カスッてたよね。特に2本の鞭による攻撃は余裕のふりしてたけどヤバかった。一歩間違えたら……って奴ね。


 念力の方は思っていたよりも残っている。まあまあ技能を使ったし、途中で空っぽにならなくて良かった良かった!


 あと『麻痺』はジャビを倒しても消えてない。それどころか痺れる範囲が広がってるように感じる。時間が経てば体の広い範囲が痺れてくるから、ジャビは勝ち誇ったような顔をしてたのかな?


 でも残念……あんたを倒すのにそう時間はいらなかったのよね。


「それにしても……気持ちよかったなぁ……」


 体にまだ戦いの余韻が残っている。全身の神経が敏感なままだから、体に触れるそよ風すら気持ち良い。さらに曇り空が少しずつ晴れていき、雲の切れ間から光が差してくる……。


 私はどてーんと大の字になって寝転ぶ。ジャビが鞭をめちゃくちゃに振り回してくれたおかげで周りの草が短くなり、ほどよい芝生のようになっている。


 そうそう、草原ってこういう感じのを想像してたのよね。大自然の中に寝っ転がって太陽の光を浴びるなんて贅沢ねぇ~。あー、なんだか眠たくなってきた……。もう寝てしまおう……。


 そう思った矢先、私の耳は草を踏みしめ何かが接近してくる音を捉えた。どうやら、お昼寝はお預けみたいね……!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

新たなゲームシステムと共にブラッシュアップされた『神速抜刀トラヒメさん』がKindle電子書籍で配信中!
表紙画像をタップorクリックで販売ページに直接ジャンプできます!

89i7h5cv8q4tbuq1ilf5e4s31mr_1bla_go_np_c

ツギクルバナー
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
[良い点] めっちゃかっこいいアクションシーンです! [気になる点] 痺れたのは左手だけど右手で持ってるということは、太刀を使ってるんですか?普通の刀は両手で使うことを目的としていますが、太刀は馬上で…
[良い点] 「ガキが舐めてると潰すぞ」いただきました
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ