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Data.12 技能の力

 『いろはに町』を出てテクテクと森への道を歩く。この道はリアルのように舗装されているのではなく、多くの人の往来によって草が潰され、土がならされて出来た道って感じだ。


 今日も多くの人がこの道を行く。やっぱりみんな複数人で固まって歩いているから、1人でいる私は浮いている。


 MMORPGというのは基本的に4人くらいでパーティを組んで遊ぶものらしいけど、なかなか見ず知らずの人と一緒に遊ぶのってハードル高いよねぇ。リアルの友達と一緒っていうなら、また話は違ってくるんだけど~。


 なんてことを考えながら多くのプレイヤーが歩く道を外れ、深い森へと足を踏み入れる。まずは昨日、鹿やズズマと戦った場所に来てみたけど、そこには誰もいなかった。流石に2日連続同じ場所でレア魔物やレア暴漢には出会えないってことね。


 戦闘のない森は本当に静かだ。他の魔物もなかなか現れず、ただただ森の中を散歩ことになった。こんな深い森は22世紀じゃなかなかお目にかかれないから、新鮮な体験ではある。


 でも、私は大自然に癒されに来たわけじゃないんだよなぁ。なにか襲いかかってこないかなぁ。


「お……ウワサをすれば……かな?」


 近くから聞こえる低い唸り声、かすかに漂う獣臭、ズシッと重く響く足音……。


 数秒後、目の前に現れたのは茶色い毛を持つ熊だった。そのサイズは昨日の鹿を遥かに上回る。獰猛に光る瞳で私を見据え、口からはとめどなくよだれを垂らしている。


「斬るしかないようね……!」


 刀の柄に手を置き、いつでも抜刀出来るように構える。それに対して熊は私の方に真っすぐ突っ込んでくる。でも、突進ではない。ぶつかる直前で前足を振り上げ、爪で切り裂こうとしてきた!


「でも遅い! 虎影斬(こえいざん)!」


 前足を上げたことで丸出しになった胴体に斬撃を食らわせる! 刃の残像が墨で描かれた黒い虎の形になり、まるで虎が熊に食いかかっているように見える。まさに【虎影斬】って感じだ!


 その威力たるや、熊の体力ゲージを約4割も削り、巨体を大きくのけぞらせるほどだ。見習いの刀を使い、技能を発動していなかった鹿の時とは何もかも違う。


 これが電脳戦国絵巻の本当の戦い……!


 私が感動を覚えていると、熊はもう一度その爪を振り下ろそうとしてきた。同じ攻撃なら、こっちも同じことを繰り返すのみ。さっきよりも踏み込んだ力強い【虎影斬】を熊に向けて発動する!


「やあっ!!」


 さっきよりも確かな手ごたえ! 半分以上残っていた体力ゲージが一気に削れゼロになった。1回目は約4割しか削れなかったなのにどうしてだろう?


 もしかして、深く踏み込んで力強く刀を振るえば威力も上がるのかも……。うん、きっとそうに違いない。リアルでも踏み込んだ一撃の方が威力が高いわけだからね。


 でも、踏み込めばそれだけ体勢を戻すのに時間がかかって隙が大きくなる。魔物相手なら良いけど、手練れの人間相手なら不用意な踏み込みは命取りになる。状況を考えて刀を振らないとね。


「さて、熊さんは私に何をくれるのかなぁ?」


 熊さんが光の粒子となって消滅した後には……何も残らなかった。魔物を倒した後に武具が貰えるかどうかも運次第ってことだ。鹿角刀が手に入ったのは本当に相当なラッキーなんだろうなぁ。


 自分の妙な運の良さに感心しつつ森の中をうろつく。熊以外にも野犬、イノシシ、昨日のよりも小型の鹿などが襲いかかってきたけど、どれも大したことはなく装備も落としてはくれなかった。


鹿角(ろっかく)()き!」


 本日2体目の熊の魔物の喉を刀で貫きながら、私はふと思った。


「そういえば【鹿角突き】の説明は見てなかったなぁ」


 せっかくだし確認しておこう。まずは鹿角刀の情報を呼び出して……。


鹿角刀(ろっかくとう)

 種類:刀 評価:三つ星 血闘値:0.20

 武具技能:【鹿角突き】

〈鹿の角で作られた刀。特殊な加工により仕上げられた刃は並の金属よりも遥かに頑丈である〉


 ……ん? 血闘値上がってない?

 昨日は技能に関する情報を調べるのが精一杯で、装備に関する情報はまだ勉強不足だったりする。ということで、これもタッチして情報を呼び出してみよう。


血闘値(けっとうち)

 武具が戦いを経てどれほどの血を吸っているかを表す数値。その武具を装備して戦闘を行うことで数値を上げることが可能。数値が大きければ大きいほど武具の性能も上昇する。血闘値を1.00まで上げることが武具の評価を上げる条件の1つとなる。


 ふむふむ、要するに武具を装備して戦いまくってれば勝手に上がる数値ってわけね。数値を大きくすれば性能が上がるってのもシンプルで良い。評価を上げるっていうのは、三つ星が四つ星になるってことなのかな?


 まあ、とりあえず上げて損はない数値とわかっただけでも安心だ。言葉の響き的に上げちゃいけない数値感があったからなぁ~。


 あ、そうそう【鹿角突き】の方もチェックしないとね。そもそもこっちを見ようと思ってたんだから!


鹿角(ろっかく)()

 階級:上級 形態:体術 武具:刀

 属性:無 念力消費:中

〈鹿の突進の如く刀を突き出す技。突きの後に刀を大きく振り上げ、対象をカチ上げる追加攻撃を発動可能〉


 あれ? この技能には修練値がないんだ。通常の技能じゃなくて、武具技能ってところが関係してるのかな?


 それはそれとして、説明の追加攻撃っていうのが気になる。要するに敵を突きでぶっ刺した後、刀をそのまま振り上げてポーイッと敵を放り投げられるってこと? なんだか鹿というよりカブトムシみたいだけど、発動する機会は案外ありそうな気もする。


 ステータスを詳しくチェックするだけでこれだけ新しい発見があるんだから、これからも新しい装備や技能が手に入ったらしっかり確認していかないとね。


 とはいえ、今日は今のところ確認がメインになっちゃってるな。森の中には斬りごたえのある敵もいなさそうだし、ちょっと場所を変えてもいいかもしれない。


 マップを開いて森からすぐに行けそうな場所を探す。おっ、この緑っぽいところは草原かな? 深い森の中にずっといたから、青空が見える開放的な草原ってのは惹かれるなぁ~。


「よし、草原に行ってみよう」


 そっちには斬りごたえがある敵がいてくれるといいな!


「……むむっ?」


 やっぱりさっきから視線を感じるような……。まさかストーカー? アバターをあまりにもかわいく作り過ぎちゃった!?


 まあ、それも隠れる場所が少ない草原に行けばハッキリするはずだ。油断せずに森を抜けるとしよう!

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