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ドラマに出てた人



「「「え、誰?」」」


室内でサングラスをかけた怪しい人物と冬瑚と俺の3人が同時に同じ疑問をぶつけた。


正確に言えば、俺と冬瑚は言わずもがなサングラスの人物に向けて、そしてサングラス野郎は俺に向かって言った。


うん?ていうか今の声って…


「俺だよ俺!」

「詐欺ですか?息子を名乗ろうったってそうはいきませんよ」


なんせ御子柴家の息子は2人ともリビングにいるのだから。息子の前で息子のふりをしてお金をだまし取ろうなんて浅はかなり!


「えー、オレオレ詐欺だったの?リビングにあげちゃったわ、どうしましょ」

「お帰り頂くしかないね」


巧みな香苗ちゃんとの連係プレーで(うちに入れたのも香苗ちゃんだけど)サングラス野郎を追い出す流れに持っていけた。


「兄貴も香苗ちゃんもバカ言ってないでお皿出して。お昼ご飯できたよ」


秋人がフライパンに山盛りになった野菜たっぷりの焼きそばを持って顔を出した。これはいけない。サングラス野郎にかまけてないでお皿やら箸やら出さないと。


サングラス野郎を放置して家族で分担して昼食の用意をする。


「え、待って待って。こんなに他人の家で放置されたの初めてなんだけど。おもろ!」


サングラス野郎が何か楽しそうに言っているが、大皿に盛りつけた焼きそばをダイニングテーブルに移動させるのに忙しいので構っている暇はない。


あぁ、ソース焼きそばの良い香りが空っぽの腹を刺激してくる…。


ぐーーーーー


「いまの香苗ちゃんのお腹の音?」

「私の腹の虫はもっと可愛げのない音が鳴るわ」


ぐーーーーー


「冬瑚か?」

「ちゃいまんねん」


ぐーーーーー


「秋、」

「違う。はー―――。あの、そこの人。腹減ってるなら昼飯食べますか?」


最後に秋人に聞こうとしたら食い気味に否定されてしまった。しかもサングラス野郎に助け舟まで出してあげてるし。長めのため息はついてたけど。え、ため息って俺に対してのやつじゃないよな!?


「いいの!?ありがとう御子柴弟!」


こっちもこっちで遠慮なんてしないし。ま、うちのオカンが許可したんだからしょうがない。


「そろそろサングラスを取ったらどうですか、横浜さん」

「あ、そういや取り忘れてたわ。どーりで反応が微妙だったわけね」


サングラスをかけていたことを忘れているこのすっとぼけ男は、人気俳優の横浜真澄。『四界戦争』で俺たち魔人族(デーモン)チームの主人公アンバーの声を担当している。


「あ!ドラマに出てた人だ!」


ここで初めて顔を見た冬瑚が百点満点な反応を見せる。


「御子柴妹かわいすぎない!?写真撮っていい?」

「「「ダメ」」」


冬瑚以外の保護者組が般若の形相で否決する。うちの子に手ぇ出したら、俺たちが黙ってまへんで…。


さすがの横浜さんも俺たちの圧を察したようで、一瞬でスマホをポケットに戻した。


「すんません…」

「さ、ご飯食べようか」

「「「いただきます!!!」」」


ん~!うまっ!シャキシャキの野菜が焼きそばと絡み合って食べ応えがある。箸がどんどん進む。


さっきからずっとお腹が鳴っていた横浜さんは俺の倍のスピードで誰よりも焼きそばをかきこんでいる。


「見ていて気持ちいい食べっぷりですね」

「ふぉんなうみゃいめしひしゃしゅぶりゅにたぼたからつい」

「へ?なんて?」


リスのように頬袋いっぱいに焼きそばを詰め込んで話すものだから、何を言っているのかさっぱりわからなかった。


ごくり、と口の中にあったものを全て飲み込んで秋人が注いでくれたお茶を一気飲みしてもう一度言ってくれた。


「こんなうまい飯久しぶりに食べたからつい!って言ったんだ。いつもはコンビニ弁当とかで適当に済ますから」

「体が資本のお仕事なんだから、食事も栄養もきちんとらないと」

「自分でもそう思って自炊しようと考えてるんですけどねぇ。なかなか…」

「横浜さんは一人暮らしなんですか?」

「そ。父ちゃんが俺が芸能界に入るのを最後まで反対してたから、半ば家出みたいな感じで飛び出しちゃったんだ~。こうやって大学に通いながら芸能界に身を置いて自分で稼ぐようになって、両親のありがたみを感じてるよ」


へー。横浜さんにそんな過去が。勝手に順風満帆で苦労なんて知らない人なんだと思ってたや。


「そんな横浜さんがなぜうちに?」

「実は俺、ストーカーされててさぁ」

「へぇ……………えっ!?」


焼きそば食べながらなんて深刻な話をしてくれてんだこの人は。いや、聞いたのは俺だけども。


「ちょっと焼きそばが喉を通らなくなりそうなんで、食べ終わってから話を聞いてもいいですか?」

「全然いいよ~」

「え~!夏兄いま聞かないの?」

「続きが気になるわ~」

「冬瑚も香苗ちゃんも、他人の不幸を面白がるもんじゃないぞ」


小心者の俺と、話をお預けされてブーイングを出す女性陣と、それを嗜める秋人母さん…。


「お母さんいつもありがとう」

「誰がお母さんじゃい」

~執筆中BGM紹介~

ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかより「RIGHT LIGHT RISE」歌手・作詞・作曲:分島花音様

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