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イプシロン

【アルファ(α)】御手洗穂希、【ベータ(β)】田中深凪、【ガンマ(γ)】真壁姫、【デルタ(Δ)】田中、【イプシロン(ε)】玉谷、【ゼータ(Ζ)】井村、【イータ(η)】鈴木

ってな感じです!




田中兄妹に連れてこられたのは、玉谷の実家だという花屋兼美容室だった。花屋の内装は店主の趣味だろうか、南国っぽくサーフボードやヤシの木なんかが飾られている。いや、ヤシの木は売り物だろうか?


「じゃ、俺は花を選んでるから。深凪、練習通りにな!」

「「アイアイサー!」」

「深凪ちゃん?玉谷?その手は何かな…?」


右腕を固める深凪ちゃんと、左腕をがっちりとホールドする玉谷に恐る恐る聞いてみると、返って来たのは笑顔だけ。少し離れた所にいる田中に助けを求めようかと思い、その姿を探すと店内の花をじっくりと眺めていた。助けを求める相手を完全に間違えたな。そもそもここに連れてきたのが田中なわけだし。


大人しく2人に連れられて花屋のカウンターの奥にある通路に入り、扉を抜けた先には木目調の温かい雰囲気の美容室が確かにあった。席は2席と、奥に洗髪するための座席が1席だけなのを見るに、個人経営なのだろう。


「花屋は父ちゃん、美容室は母ちゃんがそれぞれやってんだよ。まぁ、母ちゃんの方はほぼ趣味だな」

「へぇ~。玉谷はどっちか継ぐのか?」


花屋と美容室、どちらかを継ぐのだろうか。花屋の方にも、そして美容室の方にも飾ってあった家族写真を見る。両親のどちらからも愛されていることが一目でわかった。


「どっちも継ぐ気はないぞ?父ちゃんも母ちゃんも継いでほしいわけじゃなさそうだしな」

「そうなのか」


そういうものなのか。


「それじゃあしばさん。こちらのお席にどうぞ!」


初めて会ったときよりも随分と大きくなった声で俺を席に誘導する深凪ちゃんにちょっぴり感動しつつ、今さら抵抗する気力も失せて大人しく席に座る。


「本日はどのような髪形にしますか?」

「俺が決めるんだ?」


てっきり好き勝手にいじられるもんだと思ってたんだが。


「じゃあ、カッコイイ感じで」

「わかりました。可愛い系ですね~」

「あるぇ、おっかしいな~。全然伝わってないや」


なんだよ、可愛い系って。俺の注文と正反対の品なんですけど?


イプシロン(玉谷)、例の物を」

「ハッ!既にご用意してあります!ベータ様!」

「うむ、ご苦労」


背後で起きている寸劇を目の前の鏡越しに見る。楽しそうですね。俺なんてまな板に乗った魚の気分ですけどね。もう、煮るなり焼くなり好きにして!


空調が効いているのか、ぽかぽかと温かくて、ここ数日の睡眠不足もあって微睡に落ちてしまった。


―――トントントントン

―――ジュッジュ~

―――ピコンピコン


およそ髪形をセットする音には聞こえない音が聞こえてきたが、睡魔には敵わず眠りの中に落ちていった。


「ここはどうするんだったか…」

「それはこうじゃないか?」

「なるほど!…あ、しばさんはやはりお疲れだったんですね。眠ってしまわれたであります」


2人であれやこれや試行錯誤しているうちに、規則的な寝息が微かに聞こえてきた。


「本人は自覚無かったようだけど、顔色悪かったもんな。起こさないようにそっとやるか」

「はい!」






顔のあたりでなにかがもぞもぞと触れた感触で意識が覚醒した。


「んっ…」


眠る前の記憶を遡り、ここが美容室だったことを思い出す。沈んでいた頭を上げようとしたとき、視界の端に少しカールした金髪が見えた。


………ん?金髪?


寝惚けてぼんやりとしていた頭が一瞬で覚醒し、目の前の鏡に掴みかかるようにして自分の姿をガン見した。正確には、自分の顔に。


「な、なんじゃこりゃ~!?」

「「「うわぁ!びっくりした(であります)」」」


いつの間にか田中も美容室側に来ていたことは今はどうでもいい。それよりもなんだよこの髪!そして顔!


「なんかベタベタすると思ったら化粧してあるし!なんだよこのカツラは!」

「せっかく可愛い顔になったのに、話し方が残念でなりませぬ」


元の黒髪を覆い隠すように、長髪の女性用の金髪のカツラが被せてあり、髪形は所謂ツインテール。顔の横に垂れている横髪と、眉上くらいの長さの前髪にはふんわりカールがかかっている。


来るときには付けていた伊達メガネは外されており、隠すものがない目元にはピンク色の粉…えっと、アイシャドウ?が付けられているし、アイラインも、チークも、口紅もつけられている。なんでこんなに詳しいのかって?そりゃ香苗ちゃんに教えられたからさ、ハハッ。


「で、なんでこんなことに?」


立ち上がって後ろにいた田中、深凪ちゃん、玉谷に問い詰める。と、玉谷が急に慌て始めた。


「み、御子柴!頼むそれ以上近づかないでくれ!!」

「は?」

「開けてはいけない扉を開けてしまいそうなんだ!」

「…は?」


外面が変わっただけだぞ?何言ってんだこいつ…。


「しばさん!とっても可愛いでありますよ!」

「超かわいいぞ。俺が保証する」

「ありがとう、とでも言うと思ったのか!?」


可愛いって言われても1ミリも嬉しくない。田中に言われているとむしろ揶揄われているようにしか聞こえなくなってくる。


「どうどう、落ち着け。とりあえず次行くぞ」

「俺は馬じゃないんだが」

「じゃじゃ馬姫だろ」

「あ”?」

「ごめんなさい!いままで聞いたことないような恐ろしい声出さないで、しばちゃん!」


寝起きは声が低くなるんだよ。っていうかさっき、次って言わなかったか?


この先も続くのかと思うと気が重くなるが、田中たちは何やら楽しそうなので、まぁいっかと思ってしまうのだった。



~執筆中BGM紹介~

名探偵コナンより「真っ赤なLip」歌手:WANDS様 作詞:上原大史様 作曲:大島こうすけ様

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