サングラス
ここまで読んでくださった皆様、本当にありがとうございます!お礼に糖分ましましのお話に……
彩歌さんから貰ったバレンタインのチョコの箱の中に入っていた鍵。それはただの鍵ではない。ななななんと!彩歌さんの住んでいるマンションの部屋の鍵なのだ!大事なことだからもう一度言おう。彼女の、家の、鍵!はい、ぷりーずあふたーみー!
そして今日、ついにこの鍵を使うときがやって来た。
「智夏クン!」
「彩歌さん!す…、待たせちゃいましたか?」
すみません、と言いかけ、すんでのところで飲み込んだ。水野さんたちに「謝りすぎ」と言われて以来、気を付けているのだ。
気を抜くとうっかり謝りそうになってしまうので、気を引き締めていかなければ…。
それにしても今日の彩歌さんは一段と可愛い。もはや輝いて見えるね。
「待つ時間も楽しみの一つなんスよ」
んんっ。天使か。眩しい…っ!
「そんなに眩しそうな顔してどうしたんスか?」
「眩しすぎて彩歌さんを直視できません」
「サングラスでもかけるかい?」
サングラス。それは不思議な眼鏡だ。俺がかけると人間をかけたサングラス。彩歌さんがかけると海外セレブ。
「彩歌さん」
「鼻付きのサングラスもあるよ」
なぜそんなものを持ち歩いているんですか、というツッコミは置いておく。今は本題に入るべきときだ。
「彩歌さん」
「…」
左手を彩歌さんの目の前に差し出す。
「行こう?」
ほんのすこ~しだけ目が泳いで、耳を真っ赤にしながら、こくんと頷いた。
「なんか……改めて自分の家に彼氏を連れて行くってなるとなんか緊張しちゃって…。へへ」
「緊張するなら、手、繋ぎませんか?」
「…うん。今日の智夏クンは、なんか大胆?」
「そうですか?」
手を繋ぎながら彩歌さんの歩幅に合わせてゆっくりと人ごみの中を歩いていく。試験期間中は早めに学校が終わるため、今はお昼過ぎである。
多忙な彩歌さんの休日と重なったため、今日はこうしてデートができている。試験期間中だから、って最初は彩歌さんに断られてしまったのだが、俺がごり押ししたのだ。
「今日のテストはどうだった?」
「良い音でした」
「音……たしかに。シャーペン走らせる音ってなんかいいっスよね」
「っ!わかりますか!?」
「学生のときはな~んにも思わなかったけどね。今思えば、学生ならではの音だったな~と懐かしくなるんスよね」
「そういうもんですか?」
「君も歳を取ればわかるさ~」
ドヤ顔の 彼女の姿も 魅力的
御子柴智夏、心の5・7・5。つい一句詠んでしまうくらい今日も俺の彼女はかわゆい。
ほんわかと緩い会話を途切れることなく続けているうちに、とうとうマンションの前まで辿り着いた。道順は会話しながらもしっかりと頭に叩き込んでいる。これでいつでも来れる…っていつでもはダメだろ。
「こっちだよ」
「は、はいぃっ!」
「さっきまでの大胆智夏クンはどこに行ったっスか~?」
形勢逆転だ。いざ本丸を目の前にしたら心臓が全力疾走を始めてしまった。ノミの心臓めが!
グイグイと後ろから背中を押されながらエレベーターを使って上に昇る。
滑らかにエレベーターが動きを止め、扉が開いた。
「角部屋っス」
「了解っす」
「も~」
俺たち2人の足音と声が響く。
タンタンコツ、タンタンコツ…
いや、3人?足音が俺と彩歌さんと、もう1人。エレベーターに乗っていたのは俺と彩歌さんの2人だけ。……………ゑ?後ろに誰かいるはずない、よな?
「ねぇ智夏ク……」
俺の前を歩いていた彩歌さんが振り返って、俺の後方を見て動きを止めた。
やっぱり何かいるんですか?俺の後ろに一体何がいるんですか!?
「恨めしや~」
「!?!??!?!?」
肩口から知らない女の人の声が聞こえ、心臓が口から飛び出した。多分。
反射的に後ろを振り返ると、やっぱり知らない女の人がいた。体は透けてないし、足もあるから生きてる人だよね。そうだよね…?
「私の彩歌を返せ~」
「みーちゃん!?なんでここに!?」
みーちゃんって……たしか彩歌さんの高校以来の親友の名前か!
「あなたがみーちゃんだったんですか!」
「貴様にみーちゃんと呼ばれる筋合いはない!!」
「あ、はい」
どうやら初めての彼女のお部屋デートは部屋に辿り着く前に終了したようだ。
~執筆中BGM紹介~
リングより「feels like "HEAVEN"」歌手:HⅡH様 作詞:平田知昌様 作曲:平田知昌様/大坪弘人様
読者様から一時期リングの曲をめっちゃおススメされましたね。くーるー、きっとくる~




