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私たちの足跡

皆様のおかげをもちまして、なんとなんと今回で200話目!

ここまで読んでくださっている皆様、ブクマ登録、評価、誤字報告、感想欄で支えてくださっている全ての皆様に感謝の気持ちを込めて!本日2話投稿してます!



卒業式は順調に進んでいき、在校生代表による送辞が始まった。


在校生代表は、運動部の新キャプテンを務めている女子だ。もう話す前から感極まって泣いている。なんとか涙をこらえ、卒業生たちの前に立つ。


最初はいかにも先生が指定したんだろうな~というようなお堅い定型文から始まり、徐々に彼女自身の先輩たちとの思い出の回想に入っていった。


「私のミスで、先輩たち最後の試合を終わらせてしまい、ぐすっ、ロッカールームで謝った時、先輩たちは笑ってゆ、許してくれました。でも、私がロッカールームを出た後に、先輩たちの堪えるような鳴き声が聞こえてきて…!」


恐らく彼女と同じ部活の仲間であろう女子たちのすすり泣く声が在校生の席の中から聞こえてくる。もう後半からはあまり聞き取れなかったが、先輩たちの分も頑張ります、みたいな内容だった、と思う。こうして聞いていると部活っていいな、とふと思う。同じ目標を持った仲間と努力を重ね、時間を共有する。……青春だなぁ。


なんとか在校生代表による送辞が終わり、続いて卒業生代表による答辞が始まった。卒業生代表は言わずもがな、生徒会長も務めた一条陽菜乃先輩である。えっへん。…お前がドヤ顔すんなって話ですよね、すみません。どこに向けてかわからない謝罪を心の中でして、舞台袖から耳に意識を集中させる。


「答辞。暖かい日差しが差し込む今日、桜宮高校を卒業する…」


まるで原稿を読んでいるように感じさせないような自然な口調とハキハキした聞き取りやすい声は、いつも聞いていた生徒会長のものだった。陽菜乃先輩があの制服を着て、この学校にいるのも今日で最後か…。そう思うと寂しいな。


「私がこの高校に入った理由は”青春がしたかった”これだけです。具体的には皆さん知っての通り、学校祭でのバンド演奏です。……この目標のために、私は一年生のときからメンバー集めに奔走しました。仲間が増えたり減ったりするなかで、もうダメなんじゃないかと、卒業までにバンド演奏なんて無理なんじゃないかとそう思ったときもありました。ほんのちょっとですが」


陽菜乃先輩が高校に入った理由を言ったとき、周囲の大人たちはどよめいた。普段は品行方正な生徒が、本音をぶっちゃけたのだ。それでも、彼女を知る者たちは何も驚かない。少なくとも俺は知っている。陽菜乃先輩がどれだけ”青春”に全力を捧げてきたのかを。


「2年と半年かかりました。長い、本当に長い時間です。でも、最高の仲間を見つけることができました。楽しい時間はあっという間に過ぎてしまったけど、悔いはありません。卒業生のみんなの中にも、部活動に高校3年間を捧げた人、勉強に心血を注いだ人、いろんな人がいると思います。努力が報われた人、結果に泣いた人、本当にいろいろです」


本来なら卒業生の先頭に立って、在校生の前で話すはずが、陽菜乃先輩はマイクをスタンドから外して卒業生たちの目を見て話している。女子も男子も関係ない。卒業生のあちこちの席から涙を流す声が、堪える声が聞こえてくる。


「私たちの3年間は決して無駄じゃない!ここで過ごした3年間の高校生活は、私たちの足跡は立派な道になって続いている!」


セリフじゃない。心からの言葉でそう言ってくれるから、心に響くんだ。陽菜乃先輩と同じ学年の先輩たちが少し羨ましい。あの人と3年間を共に過ごすことができたなら、どれほど楽しかったろうか。卒業生たちの陽菜乃先輩を見る顔から、どれだけ慕われていたのかわかる。


「さて、これは答辞だから。後輩たちから送られた言葉に答えないとね」


握っていたマイクをマイクスタンドに戻し、在校生の方に向き直った。3年の先輩たちに比べると、1、2年生が陽菜乃先輩と関わった時間は少ないが、その姿は鮮烈に刻まれている。


「付いてきてくれてありがとう。君たちのおかげで、今年の学校祭は創立以来一番の盛り上がりだと言われています。私の突然の思い付きの行動を実現可能にしてくれた実行委員の皆、無茶ぶりに付き合ってくれた運動部の皆、半泣きで手伝ってくれた文化部の皆、本当にありがとう!あとごめんなさい!」


俺が知らないだけで、この人めちゃくちゃ多方面でやらかしてたんだな~。そしてそれでも恨まれない人徳よ。


「先生方、ごめんなさい。これが私の本性です。ご面倒をおかけしました」


生徒たちは見慣れていても、教師たちは見慣れない陽菜乃先輩の素顔。それでも誰一人、陽菜乃先輩の自由な答辞を止めようとする人が出てこないのは、驚きすぎて動けないのか、それとも最後くらいと大目に見てくれているのか。まぁ、バンド演奏してたときに薄々先生たちも「あれ?なんかイメージと違うな?」ってなったと思う。勘のいい先生は薄々気づいていたんじゃないだろうか。


「一番、感謝を伝えたいのは、卒業生全員の保護者の方々です。とあるサッカー部員からは、早朝練習のじかんに合わせてお弁当を作って送迎してくれたお母様がいると聞きました。クラスメイトからは、夜遅くに終わる塾の時間に毎回迎えに来てくれて、温かいご飯を作ってくれるお父様がいると。受験で苦しいときの、一番の応援団は家族でした。ありがとうございました」

「「「ありがとうございました!!!」」」


鼻の奥がツーンとした。卒業生に感情移入したのではなく、保護者の気持ちになってしまったのだ。俺って枯れてんのかな…。


「最後になりましたが…、あ~、最後、かぁ。卒業、したくないな~」


卒業生、涙腺崩壊。水たまりができるんじゃないかってくらい陽菜乃先輩の言葉で泣いてる。言ってる本人は笑ってるけど。


「みんな、ありがとう!さよなら!!」


陽菜乃先輩には明日会う。わかってる。これでお別れじゃないって。でも、頭ではそうわかっていても、これは…。


泣いてない、断じて泣いてない!



こうして涙、涙、涙の卒業式が幕を閉じるのだった。



・作者からの感謝話・

前書きでも触れたとおり、本作なんと200話目に突入しました。いや~本当にありがたい限りです。だいたい一年前に投稿を始めて、ついこの前100話だ~やった~!って喜んでいた気がするんですが。時が経つのは早いもので。200話を読むって相当体力のいることだと思います。それでも新規の読者様がいらっしゃるのは本当に嬉しい限りですね。感想欄によく書いてくださる方たちはもう常連様といいますか…。作者を支えてくださっている方たちですね。本当にありがとうございます!それなのにこの作者と来たら最近感想を返信できていない…。ったくポンコツめ!近々まとまった休みがようやく手に入りそうなので、ようやく返信できそうです!お待たせして本当にごめんなさい!あれ?いつの間にか作者の謝罪話になっている…。ここまでグダグダのあとがきを読んでくださった方がどれだけいらっしゃるのかはわかりませんが、これだけは言わせてください!皆様のおかげでここまで来ることができました!本当に、ありがとうございます!そしてこれからも本作と、ポンコツ作者のことを、よろしくお願いします!!

2021/07/31 雪ノ音リンリン



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