表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

164/467

乱闘だー!!

球技大会が終わります。



球技大会2日目。クラス対抗のドッヂボールの3位決定戦……の試合前。


「え~まじか。お前らホントに総合優勝しそうじゃねぇかよ。実は運動できたんだなぁ」


他の学年の授業を終えて様子を見に来た吉村先生(ヨシムー)がA組の戦績を見て驚きの声を上げた。


「それ俺らにちょー失礼だぞヨシムー」

「そーだそーだー」

「焼き肉の店ちゃんと予約しといてよ~」


決勝戦には行けなかったが、3位決定戦で勝てれば球技大会総合優勝に届きそうなのだ。


「しゃーねーなぁ。ここまで来たなら総合優勝するしかねぇだろ。気張れよ~」

「締まらねぇー」


相変わらず緩い先生だが、どうやら総合優勝したら本当に焼き肉をおごってくれそうなので、A組の面々にやる気が(みなぎ)ってくる。


3位決定戦。その相手は顔なじみが多いB組だ。


「師匠」

「もとやん、次の試合よろしく」

「こちらこそ……師匠って顔面キャッチが十八番(おはこ)だったのか」

「違うと断言しておく。これはクラスメイトがふざけて作ったやつだから」


真に受けないように、と注意喚起をしておく。


「それじゃああれも?」


もとやんが指さした背中には「実は田中はシスコンだってばよ!」と文字が書いてあった。


「あれは事実」

「なるほど」


試合までまだ少し時間があるため、もとやんと話していると、後ろから田中がやって来た。


「なぁに敵さんと仲良くおしゃべりしてんだ?……ってなんだ、もとやんかよー」

「もとやんは固定か?」

「いいじゃん、もとやん。覚えやすくて」

「まぁ、そういうことなら」


いいんかい。しょうがない、とでも言うように納得してしまったもとやんの器のデカさに感心していると、田中に続いて鈴木や井村までやってきた。


「あ、もとやんだ~」

「今日なんかドジった?」

「人を毎日ドジする人みたいに……。今日はビブスを反対に着ていたくらいで」


今日も今日とてしっかりドジってたんだな。4月からクラスメイトになるとあって、今は敵チームでも和気あいあいとしていると、B組の男子達がやってきた。


「おーいおいおい。元山は俺らB組のメンバーだぜ?」

「あ~ん?4月からは俺らA組の仲間になるんですけど?」


A組とB組でメンチを切り合っている横で、言い争いになっている本人に提案する。


「こういう場面では「私のために争わないで!」って言うんだよ」


悲劇のヒロインもとやん。うん、いんじゃね?


「僕ノ為二争ワナイデェ」


超棒読みじゃん。てか、やってくれるんだ。


「この決着は試合でつけてやる!」

「そうね。首洗って待ってなさい」

「そうだ!首あら……へ?」


B組の啖呵に途中参加してきたのはカンナである。それに今のセリフは朝聞いたような。まさk本当に対戦が実現するなんて。


突然のカンナの出現におろおろする男子達を横目に、うちの主砲エレナが参戦してきた。


「勝つのは私達A組よ」


ビリビリとカンナとエレナの間で火花が散る。クールの皮を被った元気娘と、お嬢様だけどわんぱく娘。猫かぶりのこの2人、同族嫌悪なのかどうにも馬が合わないようだ。


「おと、おとと、」

「エレナ?どうした?」


変な音を出しながら唸っているエレナを見る。どうやらエレナは何かの日本語を記憶の中から引っ張り出している様子だ。


「おととといきやがれ!ですわ」

「惜しい!おとといきやがれ、だよ」

「「細かいこと気にしてたらハげるわよ」」

「そういうところは息ぴったりだな」


素で話したら絶対仲良くなるだろ、この2人。






「それでは、A組VS()B組の3位決定戦を始めます」

「「「よろしくお願いします!」」」


男子だけの試合だと「おなっしゃ~す」みたいにゆるゆるの挨拶になるのだが、女子が入るだけできっちりと挨拶ができるのだ。プチ発見。


そんな感じで始まった試合だったが、ここでちょっとしたトラブルが発生した。


「へぇ、やるじゃない」

「あなたこそ」


カンナとエレナがお互いに狙いあっていて、ほぼキャッチボール状態になっているのだ。ちなみにこのキャッチボール、横から割って入ると死人が出そうなくらいに速くて重い。実際に敵も味方も何人も巻き込まれて外野送りになっている。


これを見かねた審判が新たにルールを追加した。それはボールをもう一つ増やすこと。つまり2つのボールで同時にドッヂボールをするのだ。


このルール追加により、地獄のキャッチボールが終わるかに思えたが、この二人、後ろに目が付いているのかと思うくらい避けて、取って、投げてをするのだ。


そして事件は起きた。


「これでもくらえぇぇ!」


もはやクールのキャラをどこかに置いてきたカンナと、わんぱく全開のエレナが同時にボールを思いっきり投げたのだ。お互いめがけて一直線に飛んだボールを二人とも避けた直後、パァァンという音が2つ同時に体育館内に響いた。


「玉谷!!」

「元山!!」


響いた音の正体は、お互いの外野にいた玉谷ともとやんの顔面にボールが当たった音だったのだ。


「「なんで避けるのよ!!」」


カンナとエレナがお互いに詰め寄る。


「乱闘だー!!」

「誰か止めろー!」


敵も味方もしっちゃかめっちゃかになっているのを、後ろに倒れていたもとやんと見つめる。


「大丈夫か?すごい音だったけど」

「そこまで痛くなかった」


場は滅茶苦茶になっていて、取っ組み合いでも始まっているのかと思ったが、なぜか中心でカンナとエレナが腕相撲をしていた。


「これ、なんの試合だったっけ?」

「たしかドッヂボールだったはず」


まぁ、みんな楽しそうだし、いっか。みんなに忘れられていたもう一人の被害者の玉谷もこっちにやって来た。


「大丈夫か、玉谷」

「顔面は大丈夫だけどな、心はだいじょばない」


忘れられてたもんな。どうフォローしたもんか、と考えていると、玉谷がなぜかニヤニヤしていた。


「変なとこ打ったか?」

「ちっげぇよ。さっき顔面キャッチしたときに、その、な。B組の女子に心配してもらってな」


はぁ。心配して損した。


「もとやん、あの眼鏡の子の名前、教えてくんね?」


もとやんに女子の名前を聞き出そうとしている玉谷は新しい恋をしたようだ。





結局、乱闘?の末、結果はA組もB組も3位タイという結果で終わった。そして、結果発表が始まる。



どんな幕引きだよ!?っていう読者様の総ツッコミが聞こえてくる…


~執筆中BGM紹介~

からかい上手の高木さんより「言わないけどね。」歌手・作詞・作曲:大原ゆい子様 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 長引による引き分けはアリ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ