怒られた
ついにあの2人が登場です!
後半は香苗ちゃん視点でお届けです。
ぐわんぐわんと痛む頭を起こし、床に座っている彩歌さんの隣に座る。
「彩歌さん、全然格好付かないけど、遅めのクリスマスプレゼント、受け取ってくれる?」
「は、はい」
緊張からか少し赤くなった彩歌さんに後ろを向いてもらう。プレゼントの包みを開けて、中からそっと取り出す。そういえばこんなことが前にも…。
「前にも似たようなことがあったっスね」
同じことを彩歌さんも考えていたらしい。こうやって思い出が重なることが増えて、一時的にでも頭痛を忘れるくらいに嬉しくなる。
「うん。前は制服を着たときに彩歌さんがネクタイを締められなくて、俺が後ろから付けた」
「そうそう!あれから私、ネクタイを巻く練習をしてるっス!」
「それは、俺のため?」
「~~~っ!」
彩歌さんがプチパニックを起こしている隙にささっとプレゼントを付ける。
「智夏クンのため、に決まってるっス…」
不意打ちとはまさにこのこと。自分からけしかけたにも関わらず、最後にしてやられてしまった。本当に、この人は…。
「彩歌さんのおかげで熱が上がっちゃいました」
「私のせい、じゃなくて?」
「おかげです」
ゆっくりと彩歌さんが俺に向き直る。振り向きざまに、首下できらりと光が反射した。
「ネックレス…」
両手でそっと首下で光るそれを掬い上げ、まじまじと見つめる彩歌さん。
「本当はもっと目につく場所に付けるものを送りたかったんだけど…。付き合ってることは秘密だから、服の下に隠せるネックレスを、その…選ばせていただきました」
彩歌さんがあまりにもネックレスを見つめるので、自分が見られているわけでもないのに気恥ずかしくなって最後は敬語になってしまった。
「毎日、付けるね」
「それは嬉しい、んですけどっ!無理のない範囲で大丈夫ですよ」
だってそのネックレス、ハートだし……
「ううん。毎日付けるっス。だって私は智夏クンの彼女だもん」
ネクタイの話のときは恥ずかしがっているのに、こういうときだけは目を逸らさずに言い放つんだもんなぁ。
正面に座る彩歌さんの腕を引き寄せて、正面からぎゅっと抱きしめる。俺の膝の間に座った彼女の首筋に顔をうずめながら話すと、彼女はくすぐったそうにしたが、そのまま抱きしめ返してくれた。
「ネックレスなんて、独占欲まる出しで嫌われるかと思った」
「嫌うわけないっス」
「さっき、俺の彼女だって言ってくれて嬉しかった」
「そりゃあ彼女ですから」
「………頭いたい」
「つらいね。食欲ある?」
「…ある」
彩歌さんの作ってくれた卵がゆのおかげか、翌日にはすっかり熱は下がって元気になっていた。
後日、風邪を引いた原因を話したところ、
「お風呂上がりに髪を乾かさずに夜通し曲を作ってたら風邪ひいた~!?そりゃ風邪もひくよ!もっと自分を大切にしなさい!」
と、彩歌さんからしこたま怒られた。
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智夏が風邪で寝込んでいる頃、アニメ制作会社『ドリームボックス』のロビーに、女性が二人押しかけていた。
「、願い、、す!」
「少し、、で、、ので!」
こんなにロビーで騒ぐ人を見るのは夏くんのお母さんが押しかけてきたとき以来かな?裏からこっそり覗いていると、背中にずっしりと重さを感じた。
「ナギちゃん、重い~」
「香苗〜!重いとか言うな!体重はデリケートな問題なんだぞ?」
「乗ってきたのはナギちゃんでしょー?」
後ろから体重をかけてきたのはドリボの社長、滝本渚その人だった。
「この騒ぎはなに?」
「あーあれはな、まぁ「息子さんをください」ってやつだな」
「……察した」
「おぅおぅ顔が怖いぞ、お母さん」
ナギちゃんの声をいったん無視して、ロビーに響く声に耳を澄ませる。
「どうかお願いします!」
「御子柴さんに仕事を依頼させてください!」
「アポなしで来るのはマナー違反だってわかってます。でも!」
「あたし達にはもうこうするしか…!」
あれ?なんか思ってたのと違うじゃん…。
「ちょっとナギちゃん?」
「うん?別に間違ってはいないだろう?私達の息子への依頼なのだから」
確かにそうだけど!なんかもっとこう、どす黒い思惑を抱えてやって来た人たちなのかと思ったじゃん!
「紛らわしい言い方は止めてよね」
「すまんな、これは性分だ」
「まったく」
親友の悪癖にため息を吐きながら必死に夏くんを呼ぶ2人の元へ歩みを進めるのだった。
~執筆中BGM紹介~
ガッチャマンクラウズより「Gatchadance」作曲:岩崎琢様
読者様からのおススメ曲でした!
岩崎琢様といえば、「魔法科」「るろ剣」「文スト」などなど。神!




