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疑似合コン

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田中と朝のSHが始まるまでの間に田中と話し合った結果、津麦ちゃんにピアノを教えるのは3回、放課後に数時間。


田中の妹である津麦ちゃんは冬瑚の友達、いや、親友であるし、俺個人かなり田中には世話になっているのでこういう形で役に立てるなら嬉しい。


「それにさ。冬瑚が家に友達を呼んだこと今まで一度もないんだよ。遠慮してるのかはわからないけど、これは冬瑚のためでもあるから」

「そういうシスコン発言を堂々とされると断る気がなくなるな。ま、そういうことなら津麦のこと頼むわ」

「俺のことをよくシスコン扱いしてくるけど、田中も大概だろ」


朝からずっと沈んだ顔をして津麦ちゃんのことを考えていたり、引っかき傷を作られながらも怒った素振りを見せないあたり。


「やめろ。しばちゃんと一緒にすんな」


そんな、真顔で否定せんでも。あくまでもシスコンを否定する田中の肩をぽんと叩いて、アドバイスを送る。


「シスコンは誉め言葉だぞ」

「おーけー。よくわかった。俺としばちゃんの間には決定的な認識の相違がある」


この後すぐに吉村先生が教室に入って来たため田中は席に戻っていった。吉村先生が今朝、寝惚けて足をぶつけたとかなんとか言ってた気がするがぼーっとしていたため右耳から左耳にそのまま流れていった。


「チー、、。、、ちゃん。チーちゃん」

「ん?どした?」


まだ吉村先生が話している途中だったが、隣の席のエレナからこそこそと話しかけられる。


「チーちゃん、妹いたのね」

「超可愛い妹がいる」


目に入れても痛くないくらいに可愛い妹が。


「ふ~ん。それより」

「おい。それよりってなんだよ。もっと興味持て!なんなら写真見るか?猫耳つけてるめっさかわゆい写真が」

「気持ち悪いわ~」


おや?田中にもさっき似たような表情を向けられたぞ?ちょっとへこむんだが。


「ねぇコレ。これなに?」


落ち込む俺のことなど無視してエレナは手に持つ少女漫画のとある1ページを見せてきた。


そのページには見開きで男子3人、女子3人がテーブルを挟んで向かい合って座っている。そしてページの上には「ついに、ついに、合コンに―!!」の文字がデカデカと並んでいた。


「合コン、だな」

「合コンってなに?」

「合同コンパの略」

「合同コンパってなに?」


なに?なに?って言葉だけ見ると子供のようで可愛らしいかもしれないが、エレナの表情は狩人のそれだ。


「だ、男女の出会いの場?」

「出会い、ね。そう。ふふっ良いこと思いついた」


語尾に♪でも付きそうなほどにルンルンな調子で笑むエレナを見て鳥肌が立つのだった。






順調に授業は進んでいき、迎えた昼休み。


「男子3人集めて」


と俺に言うとエレナはそのまま席を立った。え、まさか本気?本気で合コンやろうとしてる?うそだろ。


「なになに?しばちゃんどした?」

「まず一人」


ガシッと田中の腕を掴む。


「え。なにこれ。どーいうことだよ?」


田中を連行したまま駄弁っていた男子生徒二人の前に行く。


「鈴木、井村、今いいか?」

「いいけど。二人で仲良くおてて繋いでどうした」


田中の腕を掴んでやってきた俺たちを見て井村が目を丸くする。井村の言葉に田中がむすっとした表情で答える。


「これが仲良く繋いでるように見えるのか。連行されてんだよ」

「行き先は?」

「あ~、じご、社交の場?」

「おい、いま地獄って言おうとしなかったか?」


うっかり本音がポロリと。


今にも逃げ出しそうな井村と鈴木の退路を塞いでいると、後ろから声をかけられた。


「チーちゃん。揃ったわね」

「生贄3人そろえたぞ」

「「「生贄!?」」」


俺の物騒な言葉に完全に巻き込まれた男子3人が悲鳴を上げたが、もう遅い。一緒に地獄で踊ろうぜ。


「あれ。女子はエレナと香織だけ?」

「一人目に声をかけたところで私の勇気は底をついたの」


さいですか。


「だからチーちゃんはこっちね」


うん??流れがおかしいな。なぜだか女子側に引き込まれているぞ?





「それでは合コンを開催しま~す」

「い、いぇぇい」

「ぱふぱふ~」


机を6つ突き合わせて始まったのは疑似合コン。あくまで疑似である。なにせこの場には彼女持ちが二人いるのだから。ちなみにもう一人は井村だ。たしか他校に彼女がいるんだったか。


「じゃあまずは自己紹介からね。私はエレナ・トルストイ。特技は大食いですわ!」


あちゃ~。お嬢様口調で何言ってんだこいつ。合コンの意味わかってんのか。


「えっと。花村香織です。趣味はお菓子作り、かな」


そうそうこういうのが合コンの自己紹介ですよ、見習ってくださいねエレナさん。という気持ちを込めてエレナを見たら、すっごい綺麗な笑顔を向けられた。・・・・・・・・・怖い。


女子二人の自己紹介が終わり、3人目の()()の紹介の番がやってきた。


「御子柴夏子(なつこ)、身長175センチ。独身。彼氏募集中でっす!」

「夏子でかい」

「夏子声低い」

「夏子の圧すごい」


掴みは上々のようだ。これはもう一人勝ちかな。アーッハハハ!!こんなん普通の精神状態でやってられるかぁ!





人生初の合コンは、女子側でした。



~執筆中BGM紹介~

とっとこハム太郎より「ハム太郎とっとこうた」歌手:ハムちゃんず様 作詞・作曲:河井リツ子様


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― 新着の感想 ―
[一言] 夏子さん、そこはかつら被ってメイド服で出ないと。 幼女と密室で二人きりになろうと目論む男子高校生ですか。これは確実に通報案件ですね。 通報したスコットランドヤードの刑事さんは「うちのカミさ…
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