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第18話 水着でポーズ!

 先ほどよりも強く押される。

 すると痛みがお尻を中心に走った。


「っ!」

「だ、大丈夫ですか?」


 私の痛みを感じ取ったシノはすぐに手を離す。


「大丈夫よ」


 痛かったけども泣いて喚くほどの痛さではなかった。


「ふう、よかったです。じゃあ、薬を塗りますね」


 シノは薬の入った容器を取り出し、指で容器から粘度の高い液体を掬う。そして、それを直接私のお尻へと塗り始める。

 最初は指の腹で広げていたけども、最終的には手のひらを使って全体的に塗っていた。

 シノの手が私のお尻の上で踊る。

 時折痛みが走るが、ここは我慢。

 しばらくするとシノの手が離れた。


「はい、終わりです! 痛みは続きますけども、早く治ります」

「ありがとう」


 治療は終わったが、まだ私が普通の服を着られるというわけではない。次はスクール水着を着なければならない。正直、このスクール水着――スク水を切るのは恥ずかしい。

 だって、着なくても分かる露出度の高い服だもの。

 泳ぐときに着る服だと理解していてもやっぱり抵抗感はある。


「じゃあ、着せますね」


 シノにスク水を着せられる。

 水着を初めて着たけども、やっぱり普通の服とは違う。体にぴったりにくっついてるって感じだ。


「どうですか? きついというのはないはずですが」

「きつくはないわ。ただ、肌にぴったりと張り付くような感じが慣れないわ」


 動きにくいというわけではないが、慣れるのに時間が必要だ。


「ああ、よかったです。ぶかぶかだったら色々と危ないですからね」


 その言葉に私は顔を赤くする。

 まあ、私も大人であったので、このスク水の下のことを考えればその言葉の意味もすぐに理解できた。

 それを考えるとこの服、というか、水着を着るのは余計に恥ずかしくなる。


「じゃあ、さっそくポーズをお願いしますね!」


 私の恥ずかしさを知らず、シノは無邪気にポーズを要求する。

 うぐぐっ、恥ずかしいが、ポーズを取らないわけにはいかない。


「水着なんで、ちょっとセクシーに行きましょうか!」

「せ、せくしー?」

「はい! あっ、エッチなものじゃありませんから、ご安心ください」

「当たり前よ。そんなことを頼んだら今後のシノとの付き合い方を考えるところだわ」

「あはは、そのようなことはお願いしませんよ」

「それでどんなポーズなの?」

「まずはこっちにお尻を向けてください!」


 そう言われたので、言われたとおりにする。


「いいですね~」

「これだけ?」

「いえ。まだです。じゃあ、次に上半身を倒して、お尻を突き出すようにしてください」


 言われた通りやるのだが、これの恰好結構恥ずかしい。


「……何だか恥ずかしいわ」

「我慢です。決して破廉恥なことはしません。はい、手を腰に当ててください。両手です」


 むう、我慢の一言で終わった。


「あっ、そうです。その位置です」


 拘りがあるシノは何度か私に指示をする。


「で、最後です。顔をこっちに向けてください」

「それだけ?」

「はい!」


 そして、シノの望んだポーズを取った。

 やっぱりお尻を突き出すようにして、シノに向けているというのが一番恥ずかしい。


「うん! やっぱり露出度の高い服でこういうポーズは良いですね~。他の服とは違いますよ」

「これも私には分からないわね。お尻を突き出すだけでいいと思うのだけども」

「ダメですよ。確かに興奮するだけならそれでいいんですけど、私はそうじゃありませんから。きちんとポーズしたのが見たいんです。お嬢様の魅力が最大限に引き上げられるんですよ! ですので、ポーズを取ったほうがいいんです」

「…………」


 まあ、破廉恥な目的じゃないようだからいいんだけど。


「やっぱりこうして見ると、いい脚してますね!」

「着替えでもお風呂でも見てるじゃない。今更よ」


 特にお風呂なんかは下着も履いてないので、一番よくシノが見てる。


「全然違いますよ。お風呂では脚以外にもお嬢様の素晴らしい体が強調されますが、こちらは脚のみです。つまり、見ている私はお嬢様の脚だけを堪能できるというわけです。これは大きな違いですよ! あと、お尻もですね。こちらはついでですが、下着とは違って水着ですので、やわらかいお尻への食い込みも素晴らしいんですよ」

「そ、そう」


 やっぱり私には分からない。


「お嬢様が大きくなった時が楽しみですね~」

「まさかまたやるつもりなの?」

「はい! というか、毎年やりたいですね。お嬢様の魅力もどんどん上がっていきますし、成長記録になりますよ」


 どうやらシノは私に大きくなってからどころか、毎年やるつもりらしい。

 毎年、と言った時は嫌、という気持ちが大きかったけども、成長記録と言われるとやってもいいかなと思ってしまう。

 だって、成長記録だもの。それは後からどうこうできるものではない。一生に一度の記録だ。シノの言葉を逃せば絶対に後悔するだろう。


「どうですか?」

「……しょうがないわね。やるわ」


 成長記録なんて取ったことがない私にとっては非常に魅力的なものだった。

 なので、見た目嫌々だけども、内心はノリノリ。


「やった! では、来年からもやりましょうね!」

「変なのはダメよ」

「もちろんです! お嬢様の魅力を引き出すものだけです!」


 まあ、今回選んだものを見れば、変なものは選ばないだろう。……今着てる恥ずかしい物もあるけど。

 これに関しては悪いことをしているという感じがするので、未来でこのようなことをしてなかった私にとって、実は興味津々だったりする。なのでこれはセーフ。


「同じ服でも成長したらまるっきり変わりますからね~。その変化が毎年見れるなんて最高ですよね」

「ちゃんと仕事しなさいよ。サボったらやらないわ」

「もちろんちゃんとやりますよ! お嬢様のお世話は私の生きがいですからね!」


 その言葉はうれしいのだけども、シノの人生を背負っているような気がするので、ちょっと止めてほしい。


「で、次のポーズなんですが、こちらの小道具を使ってください」


 用意されたのは輪になっている透明のもの。上部には花柄が。

 このタイミングで渡されたので、きっと水着関係のものだというのは容易に想像できた。

 ただ、どのような用途で使うのかは全く分からない。


「これは?」

「これは浮き輪ですね。プールなどの深い水場で溺れないようにするための道具です。中は見ての通り空気のみなので簡単に浮きます。ですので、泳げない人でも水場で遊ぶことができるんです」

「まあ! そのような道具があるのね!」


 多分使う機会はないだろうが、この『浮き輪』があれば私も水場遊ぶことができるということだ。

 もちろん泳げたらいいのだろうけども、泳げるようになるのはきっと婚約破棄後、自由になってからだろう。


「可愛い柄もたくさんあって、自分好みの浮き輪を使えますよ! 今回は私が選ばせてもらいました」

「他にもあるのね」

「はい。色だけのもありますし、他の花柄もあります」


 浮き輪を選ぶだけでも楽しそうだ。


「それでこれをどうすればいいの?」


 どのような効果があるのかは分かったが、どのように使うかはまだ分からない。

 浮かぶためなら四角いほうがいいのに。わざわざ円にする必要はない。

 なので、あの穴は何かに使うはずなのだけども……。


「これはですね、ここの穴に体を入れて使うんです」

「体を入れる?」

「はい! 実際にやってみましょう!」


 簡単なシノの説明を聞いて、使ってみる。

 使うというか、装備し終わると浮き輪は私の胴体に。

 そう、あの穴は体を通して、胴体、つまり腰部分の高さまで持ってくることで、上半身を水に付けずに済むという道具だ。


「こうして持ってみるとかなり大きいわね」


 子ども用のため、シノが持っていた時は小さく感じたけども、こうして近くで見ると私にとってはかなり大きい。


「一応、小さいのも大きいのもあるのですが、そちらは浮き輪本来とは違った用途で使いますので」

「どんなものがあるの?」

「四角い大きなものがありますね。そちらはベッドのように寝転ぶことができます」

「そっちのほうが面白そうだわ」

「まあ、そうですが、今回はポーズを取ってもらうだけなので……」

「それもそうね」


 ついこの浮き輪がシノのお願いに応えるものだと忘れていた。


「それでどんなポーズなのかしら?」

「浮き輪の両端を持って、やや前かがみになってください」

「こう?」

「そうです。そこから、はい! 笑顔!」

「え、笑顔?」

「そうです、笑顔です! あっ、微笑む、じゃありませんよ? にぱ~って感じです」

「に、にぱ~?」


 よく分からないので、いつもので。

 にこり。


「う~ん、可愛いんですけども、ちょっと違いますね。にこり、じゃなくて、にぱ~です」


 どうやらお嬢様系の笑顔じゃダメなようだ。

 多分方向性が違うのだろう。

 なので、先日の街で見た子だちを参考にしよう。

 えっと、確か……。

 に、にぱ~。


「!! そ、そうです! その笑顔です!!」


 貴族の淑女の笑顔ではなく、庶民の無邪気な笑顔が欲しかったみたい。

 何だかこういう笑顔は随分とやっていなかったからとっても違和感がある。

 え? どういうことかって? 私も最初から貴族らしい笑顔をしていたわけではないということ。私が本当に子どもだったとき、つまり、今みたいに過去に戻っていない五歳の子どもだったときは貴族らしい笑顔をしいていなかった。教育を受けていくうちに次第に貴族らしい笑顔ができるようになっていた。


「いいですよ! 最高の笑顔です!」


 シノがハアハア言いながら喜んでいるようなので、どうやら正解のようだ。


「うんうん! 私の想像通り、いえ、それ以上ですね!」

「よかったわ」


 これでがっかりです、などと言われたらカンカンに怒っていたところだ。


「あ~、これで今日は最後ですか~」


 ポーズを終えるとシノがそう呟く。

 一応、この水着で今日は最後。明日も、明後日も、さらにそこからもあるので、私にとっては残念ではない。むしろ、早く終わってくれと言いたい。

 もちろん、楽しくないわけではないのだけども、この膨大な量の服を目の前にして、楽しいというのを維持するのはできない。


「もっとたくさんやりたいんですけども……」

「さすがの私もこれ以上やるのは嫌よ。今日は我慢しなさいよ」

「は~い」

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