7話 実は1P増えているんです
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・名前:鳴神水面 ・年齢:17 ▼
・性別:男 ▼ ・種族 ▼
・造形 ▼
・クラス ▼
・主能力 ▼
・耐性 ▼
・魔法 ▼ ・適正属性:
・アイテム ▼
・ギフト ▼
・スキル▼
・転移場所 ▼
・パーティー ▼
残り時間 ●●分
獲得ボーナスポイント ▼ 11194P
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「ポイントが増えてる……」
「増えているのじゃなくて、表示させなかっただけだけどね。ボーナスポイントの数値はこちらで大幅に弄れないので苦肉の策よ」
**の部分はそんな意味があったのか。
確かに言われてみないとわからない。
「なんでそんなことを?」
「この異世界転移をめちゃくちゃにされたくないからよ。元々、キャラメイク二回とその間に交流時間を作るって決まってたの。そのスケジュールを遂行するために、イレギュラー的存在には極力大人しくしてほしかったの」
「すいません」
大騒ぎしちゃった記憶があるのでつい謝ってしまった。
それにしても他に方法がありそうだけど、それを聞くのはやぶ蛇になりそうだ。
僕の危機察知センサーが鳴っているので黙っておく。
うん、聞いても意味もないしね。
こぼれたミルクを嘆いても無駄なのである。
「パーティーの項目もチカチカ光ってますが、これは?」
聞きながら――
パーティーの欄が点滅をしているのでタップしてみる。
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●パーティー
転移を共にする人物を選べる。
双方向の同意が必要で、一人につき10P消費する。
●九冬雨月からパーティー申請があります。
受諾しますか?(必要ポイント10)
→はい
いいえ
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「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
諦めないって言葉を思い出す。
本当に諦めてなかったのね。
いいえを選んで、申請を拒否する。
「ボーナスポイントって神様が決めたのですか?」
「何事もなかったかのように話を進めるのね」
ここでパーティー申請をオッケーする方が問題だと思う。
なんでここまでなつかれたのかわからないけど。
「まぁ、いいけど。さっきも言ったけど、これは私の一存でやっていることじゃないのよ。だから融通のきかない部分もあるの。ポイントのバランスとかもAIとか他所が勝手に決めてるし。あ、ボーナスポイントのところ、配分も書いてあるから見てみましょうよ」
女神様に言われるがまま、ボーナスポイントの部分をタップしてみる。
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●残りボーナスポイント▼ 11194p
●獲得ボーナスポイント
・初期ポイント――90P
・男性――0P
・学業が優秀――20P
・校則遵守――3P
・倫理観の欠如―― -2P
・善性――2P
・ぼっち――1P
・おとなしい性格――1P
・親からの評価――3P
・クラスからの評価――2P
・他者からの恨み―― -1P
・信心深い――1P
・
・
・
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「AIにもぼっち判定されるって心にくるんですけど」
「もっと他の部分についてコメントしなさいよ」
「少ないですが、友達ぐらいいますので、この判定に異議を唱えます。壊れているんじゃないですか、このシステム」
「貴方のおとなしい性格っていうのは確かに間違っているわね。壊れているじゃないかと私も思う。この項目を信じた私が馬鹿だった」
「僕、性格については言及した覚えがないのですが」
「よく見たら、校則遵守にルビついてるわね」
「本当だ。まだやぶってない……なんですか、これ?」
「システムからもコイツ破りそうだ。警戒対象だと思われてるじゃない? なんでこんなルビでるのか私もわからないけど」
「やっぱり壊れてますよ、このシステム!」
他者からの恨み-1P。
ショックなんですが。
そんな恨まれる覚えもないのでよくわからない。この判定本当にあってるのかな。
「学業が優秀ってだけで20P貰えるのですね。結構破格のような」
「学生限定のボーナスよ。学生の仕事は学業が仕事みたいなものでしょ? なら評価されないといけないわ。運動が得意ならそれに応じてポイントが貰えるし。文武両道とかもあるわよ」
「なるほど。もし、友達が多かったら?」
「社交性があるって判断されて、ポイントが貰えるはずよ」
「もしや、1Pってお情けなんですかね?」
「多分そうなんじゃないの? 社交性じゃなくぼっちって表記されてるのが謎ね。社交性とかならポイントもうちょっと高かったと思うし」
「泣いていいですか?」
泣きそうだ。
結構項目が多く、細かくポイントが貰えるみたいだ。
「0Pとかポイント貰えないのも表示されてますね」
「そこはシステムの仕様だわ。飛ばす異世界や元の異世界の方によっては男女差が歪なところもあるし、第三の性があるかもしれないからね。システム開発者もこの評価システムを別の異世界転移の時にあわよくば使おうという意図が見えるわ」
「そんな異世界転移流行ってるんですか」
「まぁ……当事者に内情喋るのもどうかなと思うので言わないけど……聞きたい?」
「いえ。怖いのでやめときます」
「賢明だわ」
地球でも行方不明者が多いけど、その中には異世界に飛ばされる人も実は多かったのかもしれない。僕達も最終的には行方不明になるみたいだし。
ずずっと、ボーナスポイントの欄を下にスライドさせていく。
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●獲得ボーナスポイント
・
・
・
・異世界の勇者――2800P
・魔王を倒した者――5200P
・感謝される者――500P
・神をともとする者――900P
・ズッ友《New!》――1P
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「貰えるポイントの桁が違う……」
「バランスを考えて、貰えるポイントは減衰するように設定されているはずなのにね。本当に貴方、何をしたのよ」
「魔王の無敵結界を解除するアイテムを使って、逃げました。戦闘はほとんど参加してません! トドメは刺しましたが、正直棚ぼたでした!」
胡乱げな目で見られるけど、本当だ。
そもそも運動能力でポイントを貰えなかった。戦闘に向かないというシステムのお墨付きだ。
「神をともとする者……」
思わず横の女神様を見てしまう。
「へへっ、照れますね。友達と思ってくれるなんて、恐れ多いというか」
気安く喋ってるようで、これでも一線を引いて会話している。
呆れたり、怒られたりばかりだけど、流石は女神様。母性本能というか慈愛、寛大さに満ちている。
視界の端に他の神様が映った。
そちらを見ると、一柱は先ほどと変わらずたおやかな微笑でこちらを見ていた。
小さく手を振ると、キツネ耳を生やしている女神様はほんの少しだけど笑みを強め、その手が微妙に動いた。僕じゃないと見逃してしまうほどの小さな動き。
手を振り返してまでは至らなかったが、反応があったことに嬉しさがこみ上げる。
「改めて考えると変ね。バグ? いやでも、ありえないとはいえないけど、存在自体がバグみたいなものだからシステムもそれに付き合って変になっていると説明できなくもないのかな」
横にいる女神様はブツブツと呟き、自分の世界に入っていた。
「あの―神様?」
「あ、ごめんね。ちょっと考え事をしてたわ。私達にもわからないことがあるのでコメントできない部分もあるの。貴方の体、ブラックボックスみたいなところもあるし」
安心できないことを言われた。
なに、そのブラックボックスって。
「ズッ友?」
項目の一番下。
そこにはそう書かれていた。
改めて思い出すと、ポイントが1増えている気がする。桁数が増大したインパクトが強すぎて気がつかなった。
「ナニコレ?」
「神様がそれ言っちゃうのですか?」
「言いたくなるでしょ。我慢してたけど限界よ。貴方だけじゃなく、このシステム創ったやつもおかしいんじゃないの? ところどころ変なのよ! バグ取りも不完全なのかしら。外注ってこれだから困るのよ。今度苦情言っとくわ。納期が短いって言っても契約したんだから有効でしょ。こちらに非はないわ!」
ズッ友自体を怒っているのではなく、我慢の臨界点を超えちゃったから怒っているみたいだ。
マシンガンのように不満の言葉が止まらない。
しかし、ちょこちょこ俗っぽいことを言わないでほしいなぁと。
神聖さがもう感じられないのですが。言ってることブラックだし。
「この空間での出来事も加味されているってことでしょうけど。リアルタイムで評価されているって私も知らなかったわ。なんでズッ友でポイント貰えるのかも知らないけど。むしろセクハラで減点しなさいよと言いたいわ」
それを言われるとぐうの音もでないです。




