2話 設定的なもの
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●はじめに
・名前: 鳴神水面・年齢:17 ▼
・性別:男 ▼ ・種族 ▼
・造形 ▼
・クラス ▼
・主能力 ▼
・耐性 ▼
・魔法 ▼ ・適正属性:
・アイテム ▼
・ギフト ▼
・転移場所 ▼
・パーティー ▼
残り時間 1時間30分少々
獲得ボーナスポイント ▼ ※※193P
残りボーナスポイント ※※193P
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とりあえず、はじめにの部分をタップすると、新しいウィンドウが出現し、説明文らしき文章が出てきた。
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●はじめに
《異世界転移(転生)》
ここに集められた者達は異世界に行く。地球には戻れず、異世界にて一生を過ごす。
ここに集められた際地球では、人形が貴方達に成り代わり、他者に違和感を与えないように生活する。その後、世間に影響を与えないように、事故死や行方不明などによって姿を消す。
《異世界》
地球とは別の世界。文化、風習など違う点が多い、最も違う点はダンジョンがあること。
人々はダンジョンを攻略することで、恵みを得るが、同時に怪我や命を失う恐れもある。ダンジョンは神の恵みだけではなく。試練という側面も持つ。
《女神の祝福》
ダンジョンには魔物がおり、行く手を阻む。
深部へ行くほど、魔物は強力になりダンジョンの構造も複雑になる。
それに対抗する力として、神から与えられる祝福。
ダンジョンに潜ったり、魔物を倒すことによって、魔素を得て、自己の器を強化していく。器の増大の瞬間、体に光を纏う。それが女神の祝福と呼ばれるもの。
女神の祝福によって、自己の器を強化し、さらにダンジョンの深部へ潜ることを可能にしていくのである。
《キャラクターメイキング》
地球とは違う異世界に行く者達へ贈る神の慈悲。
今まで生きていた行いによってポイントが配布され、そのポイントを使い自分の外見や能力を獲得する。適正によって各自、消費ポイントが違い、獲得できる能力も差がある。
*自暴自棄、絶対ダメ!
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「ふむ……」
説明をまるっきり聞いてなかったので、ちょっと助かったなと思ったり。
最後の注意文だけ、親しみがあるというか、毛色があるというか、どっかのポスターの注意文のような文章で脱力してしまう。
顔を上げて、女神様の方向を向くとプイと顔を逸らされた。
とりあえず、異世界に飛ばされることがわかった。
いや、もうわかってたけど。再度、現実だと突きつけられた。
今度は帰ることもできないことも。
一度異世界から戻ってこれた経験から、今度もワンチャンいけるかなと希望を抱いてたけど、無理なようだ。地球ではもう僕の代わりに、人形という存在が僕に成り代わって生活している。すごい技術といえばいいのか、拉致という強引な手段使ったのに、世間には配慮しているんだなという驚きが。
ダンジョンに潜らないといけない。そこには魔物がいる。
今度の異世界はそんな感じかぁと。魔王を倒したといっても、僕に戦闘力というものはない。アイテムを使う係だったし、戦闘は護衛の皆様の仕事だった。
だけど、今度は違う。
僕が魔物と戦わないといけない。
力がいる。そのためのキャラクターメイキングであり、そのために今の時間があるということ。
理解したけど、制限時間があり、説明を聞いてなかった僕はみんなより遅れを取っている。
ポイントが各自違うとのことだけど、異世界に一度行った経験もあるから他の人よりポイントが多いと思いたい。
思いたいけど、193Pってそんな大きい数字に思えないんだよなぁ……。他が100Pで二倍近いのかもしれないけど、隔絶したポイント差ってわけでもないし。いや、二倍でも十分大きいのだけどね。
とりあえず、遅れを取り戻すためにもざっと項目を見てみよう。
ウィンドウの▼のところを触ると、下に新たな文章が表示されたり、新たなウィンドウが表示されりするみたいだ。
年齢の部分の▼を触ると、僕の年齢の数字が表示されており、その数字を変更できた。
年齢の数字を一つ変えると、ポイントの数字も1消費される。
年齢変更のポイント消費が多いのか少ないのかはまだわからないけれど、場合によっては年齢を少し上げる必要があるのかもしれない。
前回の異世界に飛ばされたときは若いってたけで舐められた苦い経験がある。とりあえず年齢は今のままで置いておく。
次に性別のところを触ると、女性に変更できるようだ。
とりあず、変更できそうなのはわかったので、そのまま男性のままにしておく。
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●造形
自身の姿を思いのままに変更する機能。
*この時間で変更した造形設定と種族は初回キャラメイキング後もお試しとして適用される。また最終キャラメイキング時もこの設定が適用されたままになる。
種族によって顔の造形が自動で補正されるため、先に種族を決めてから造形に着手することが推奨される。
・背の高さ ▼
・スケール調整 ▼
・顔の詳細 ▼
・肌の色 ▼
・瞳の色 ▼
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「わっ……!」
思わず声がでた。
造形のウィンドウの右側には僕そっくりのアバターがあった。
背の高さはそのままだろうから、スケール調整をタップすると、下に色々な項目が表示された。
そこには頭部、胸部、腹部、腕部とあり、数値がそれぞれ書いてあった。とりあえず腕部の数字を増やしてみると、アバターの僕の腕が膨らんでいく。腕だけでかいので違和感がすごい。とりあえず他のもいじってみると、数字を増やすと体積が増え、数字を減らすと痩せていくみたいだ。増えた体積は脂肪なのか筋肉なのかよくわからないけど、筋骨隆々というわけでもないので今の筋肉量で体積を増やしているのかなと。身長を伸ばしていくと、それに応じてポイントが消費されていく。そのまま身長や体重の項目を弄ってみてわかったけど、これは変化量に応じてポイントが消費される仕組みのようだ。
つまり、身長を一センチ伸ばすために1ポイントが消費されるのではなく、五センチまでは1ポイント。身長を三センチ伸ばして体重を軽くするといったこともできる。
顔の詳細を見てみると、目の大きさから角度、顎の長さから突き出し率まで細かな部分まで細かな変更可能だった。まるで整形。自分の意志で自分の思う通りの顔になれるというわけだ。拘る人は拘るだろうなと思うのと、造形の欄の説明にあった変更した造形設定は次のキャラメイキング時にも適用されるというのは、まるでそれを促すようなものに感じられた。
ただ、僕たちに配慮しただけかもしれないけれど。
残り時間を見てみると、25分を切っていた。
時間は有限。まだ見ていない項目も多く、ここで時間を使っていてはいけないと理性が囁くので、後ろ髪を引かれながら次の項目へ。
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●種族
様々な種族がいるなか、有力な種族への変更が可能。
・人族《10P獲得》
他の種族に比べ特徴が薄い。
能力値も種としてはこれといった特徴はないが、個体差によって能力差が激しい。
女神の祝福を一番受けやすい。
・エルフ 《10P》
耳が尖っているのが特徴。長命種。
肌が褐色のものはダークエルフと呼ばれる。
INTが高いものや運動能力に秀でたものがいたりと人間種と同じように個体差が強い。
・ビースト 《10P》
動物の力を与えられた種族。耳とは別に複耳があり、種族によりビースト内でも様々な複耳の形を持つ。
AGIやSTRが高いものが多い。
・ドワーフ 《10P》
女性は背が少し低く胸が大きく、男性は高身長で筋肉質が特徴。長命種。
STRが高いものが多い。
・ドラグニル(竜人族)《20P》
竜の血が混じった種族。角があるのが特徴。
あらゆる能力値が高い。
・有翼人 《20P》
背中に魔力の羽を生やすことができる種族。その羽は有翼人の象徴であり、絶対的なものであると有翼人は考えている。それ故に、羽が生えていない種族を見下しており、他種族からは嫌われている。
能力値は総合的に高く、特にRSTが高いものが多い。
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種族の項目。
そこにはゲームや漫画で馴染みの種族が書かれていた。
能力値的にはドラグニルや有翼人がいい。長命種ならエルフかな。ドワーフは背の低さがネック。ヒゲも似合う人はいいと思うけど、自分には似合わなそう。造形で似合うようにすれば強引にドワーフを選ぶことができるけど、そこまでしてなりたいかと言われると微妙なのでやっぱりなしになる。
人間にすると逆にポイントを獲得できる。優遇されているのか不憫だからなのかよくわからないけど。
この項目も右側に自分のアバターが表示されていて、自分の姿がすぐ確認できる仕様だ。
エルフは思った通り耳が長くなる。黒目黒髪の日本人的な顔立ちのエルフは少し違和感を覚えるが、エルフにしたかったら造形で色とかなんとかしたらいいということだろう。個人的には黒髪黒目のエルフも全然ありなんだけどね。少しびっくりしただけで。うん。男より女性の方が似合いそう。
ドワーフが僕の知っているドワーフの種族と違う。
鍛冶とか得意で背が低いイメージだけど、この場合逆に男は背が高くなっている。筋骨隆々なのは筋力高そうなドワーフのイメージと相反してないから問題ないけど。背の部分が逆になっている。女性は少し背が低いとあるけど……。
ドラグニルは角がネックかなと。頭に直角に生えているのではなく頭に寄り添うように曲がって生えているけど、寝るとき枕とか破かないか心配だ。
有翼人は背中が露出していて、そこから白い翼が生えている。これが魔力の羽らしい。
余談だけど、ウィンドウの下の方に各種族の平均的な髪色や瞳の色の説明まで載ってたりする。造形で、変に逸脱したくなければこれを参考にしろということだろう。
能力値の補正で考えたら、ドラグニルや有翼人。次いでエルフかなと。
でも人間種でも全然ありなので、そこまで頭を悩ます必要はない気がする。
次にクラスの欄を見てみる。
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●クラス
対応するくらすによって能力の補正を受け、そのクラスに対応するスキルを覚える。女神の祝福時、パラメータ上昇に補正も受ける。クラスに属したから魔法を唱えられるわけではないので注意。
・アタッカー 《12P》
パーティーのダメージソースとなって前線を支える存在。パーティーの大黒柱。
STRに大きな補正を得る。女神の祝福時、攻撃系のスキルを得る場合がある。
・ディフェンダー 《15P》
モンスターから後衛を守り、前線を支えるパーティーの縁の下の力持ち。
生命力やVITに大きな補正を得る。女神の祝福時、装備重量軽減のスキルを得る場合がある。
・ヒーラー 《10P》
怪我や生命力を癒やしたり、毒などの状態異常を回復する術が使える。パーティーの生命線的存在。
MNDに大きな補正を得る。
・ソーサラー 《15P》
様々な属性の魔法を使い、状況を打破する。パーティーの切り札的存在。
INTに大きな補正を得る。
・シーカー 《0P》
敵の索敵を行う。パーティーを支える縁の下の力持ち。位置・移動に関する呪文を修得し
AGIに大きな補正を得る。
・ワイルド 《5P》
他の五つのクラスに該当しないものが属するクラスを一纏めに呼んでいる。
その種類は幅広く、ダンジョン攻略における選択肢を広げる役割を持つ。
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各クラスの横にある数字が必要ポイントみたいだ。数字に幅がある。
必要ポイントが一番低いのははシーカー。次にワイルドと呼ばれる謎なクラス。そしてヒーラー、アタッカーが続く。一番要求ポイントが高いのはディフェンダーとソーサラーだ。
この数字の差は適正なのかもしれない。
前の異世界で勇者と言われても、戦闘には参加せずに邪魔にならない場所に隠れているだけだった。体格的にも筋力がつきにくく、ひょろっとしている。前の異世界でも咄嗟の時に動けるよう訓練されたが、筋は悪くないが才能がないという評価をくだされた。凡人認定だね。
だが褒めれれることもあった。
咄嗟の体の動かし方や気配の消し方。緩急の付け方とかはいいと言われた。
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●主能力
元々持っている己の能力に加算される力。数値が1ごとに必要ポイントが3Pずつ必要となる。5が最大強化値。《3、6、9、12、15》
・生命力 ▼
攻撃を受けた際に自身を守る壁。獣やモンスターは鱗や毛皮で体を攻撃から守る盾とするが人間種は生命力を使って攻撃を柔らげる。
・魔力 ▼
魔法や神秘を引き出すための触媒。ここでは、その量を表す。
・STR ▼
攻撃に関する適性。
・VIT(DEF?)
活力に関する適性。
・DEX
生命力の硬さに関する適正。
・AGI ▼
敏捷性に関する適正。
・INT ▼
魔法攻撃に関する適性。
・RST ▼
魔法防御に関する適性。
・MND ▼
回復魔法に関する適性。
・CRT ▼
生命力に干渉する適正。
・視力 ▼
・聴力 ▼
・触覚 ▼
・嗅覚 ▼
・味覚 ▼
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これもゲームのパラメータかなと思う。五感も強化できるのは新鮮みがあるけど。
視力を高くできれば、コンタクトレンズや眼鏡も必要にならないのは異世界では有用だし。眼鏡が異世界にあるのかわからないけど、戦闘中に眼鏡を落としたらと考えると裸眼の視力が高いほうが有用だ。
あとは嗅覚と味覚。
嗅覚は異常を察知するのに便利かもしれないけど、生活するうえで異臭を敏感に察知するのは嫌だなと。味覚とか、敏感じゃなくても、コンビニでも飲食店でもなんでも美味しく感じられた方が幸せかもしれないし。なので、あえて鈍らせるのもありかもしれない。
パラメータの方を見てみる。自分の元となる数値が表示されていないからなんとも言えないけど、生き残るには生命力が一番大事だと思う。でも、生命力では魔法は防げないのかな。RSTが魔法抵抗力っぽいし。いやでも、DEXが生命力の硬さってあるな。生命力を鱗と例えているので、DEXはその鱗の硬さみたいなものかな。生命力が大きくない、つまり鱗が分厚くなくても硬ければ本体にはダメージが入らないみたいな?
防具とかいらない世界なのかな。
考えてもよくわからないので、ここもそうなんだ程度に見ておく。
さて、次の項目へと。
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●耐性
自身や生命力の壁に耐性をつける。
・状態異常耐性 《25P》
・毒耐性 《10P》
・麻痺耐性 《10P》
・睡眠耐性 《10P》
・打撃耐性 《10P》
・斬撃耐性 《10P》
・刺突耐性 《10P》
・出血耐性 《10P》
・火属性耐性 《10P》
・水属性耐性 《10P》
・風属性耐性 《10P》
・土属性耐性 《10P》
・精神異常耐性 《25P》
・威圧耐性 《10P》
・混乱耐性 《10P》
・沈黙耐性 《10P》
・呪い耐性 《10P》
・空腹耐性 《10P》
・病気耐性 《10P》
・魔力欠乏耐性 《10P》
・老化耐性 《10P》
・疲労減少 《10P》
・自然治癒力増加 《10P》
・魔力自然回復力増加 《10P》
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どうやら一律消費ポイントは10のようだ。大体の効果は文字を見ればわかるけれど、一部は分からなかったので注釈を見てみる。
とりあえず他の効果との違いがよくわからいから、状態異常耐性をタップ。
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・状態異常耐性
毒や麻痺といった状態異常から耐性を持つ。個別の耐性より効果は落ちる。
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ふむ。念のため毒耐性を見てみると、毒に対する耐性を得るという簡素な言葉だった。
効果は落ちるけど複数の耐性を得れる状態異常耐性の方がお得な気がするけど、耐性は消費ポイントが多いのがネックだなぁ。
次は下の段を見てみる。
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・老化耐性
老化速度が減少する。長生種にはこの耐性効果が非常に減少する。
・疲労減少
疲労が減少し、より長く活動できるようになる。
・自然治癒力増加
自然治癒力が増加し、怪我や病気の治癒速度が上昇し生命力も回復しやすくなる。
・魔力自然回復力増加
魔力の回復速度が速くなる。
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注目するのは老化耐性。これはすごい。老化が遅くなる。どこまで効果があるかはわからないけど、字面だけ見るとパワーがあるなぁ、これ。
ダンジョン攻略の面から見ると、疲労減少や自然治癒力増加、魔力自然回復力増加が有用そうだけど。
考えてもわからないので、次の項目を見てみる。
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●属性
・火属性 《10P》
火の属性の適正を持つ。魔法などの効果が上昇する。
・水属性 《10P》
水の属性の適正を持つ。魔法などの効果が上昇する。
・風属性 《10P》
風の属性の適正を持つ。魔法などの効果が上昇する。
・土属性 《10P》
風の属性の適正を持つ。魔法などの効果が上昇する。
・闇属性 《20P》
闇の属性の適正を持つ。魔法などの効果が上昇する。
・光属性 《20P》
光の属性の適正を持つ。魔法などの効果が上昇する。
・回復魔法 《20P》
回復魔法の適正を持つ。
・精霊術 《20P》
精霊術の適性を持つ。
・精霊の加護 《25P》
精霊の力を得やすくなる。精霊術の行使に効果を及ぼす。
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うん、まぁ……。
コメントに困る項目だ。
前の異世界では魔法を使えるイコール全属性の魔法が使えるということで、その中で得意不得意があり適正というものが存在していた。
それと同じなのかなとも思うし、創作物とかでは属性に偏りがあり、人によって使える属性に限りがあるという場合もあった。
今度飛ばされるのはどっちなのかという疑問がある。
ちょっと思っていたけど、これ説明が足りないない? 説明が不十分というか大事なことが欠けている。判断材料がないから、何が正解なのかわからない。
そこで、女神様が言っていた言葉を思い出す。
異世界に飛ばされる僕らに力を与えると同時に試練だと。だとすると、説明が足りないのは仕様なのかなと思う。じゃあ、なんでそんな意図があるのかという新しい疑問が出てくるけど、それは考えてもわからないし、重要ではないから置いておこう。
大事なのはこの説明に不十分であること。
判断材料がたらないということは、正解を導くことができなくなり、一種のギャンブルになるということ。
じゃあ、ギャンブルなら考えることを放棄していいのかというと、違う。
自分が決めなくちゃいけいのだから責任は自分に巡ってくる。自分が異世界で何をしたいのか。後悔をしないために決断をしなくてはいけない。
脳がカチリと音を立てた気がした。
ぼやっとしていた景色が、輪郭をはっきりと映し出すように、世界が違って見える。
自分が何をしたいのか。望む未来は何なのか。
ゴール地点が見えていなかった。行き先もわからないのに進めば迷子になるしかない。
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●アイテム
・迷える子羊のためのオススメアイテム詰め合わせセット 《10P》
【・コインポーチ(金貨、銀貨、銅貨、石貨をランダムに封入)・バックパック・ポーション(小)・食料3日分(パン・水筒)・探索者装備セット(シャツ、外套、ズボン、胸当て、ブーツ、下着×3、靴下、手袋、ベルトポーチ、ショートソード)、ナイフ、火種、毛布、ランタン、食器セット・麻袋】
・お金があれば安心するセット 《10P》
コインポーチ(大金貨、金貨・銀貨、銅貨、石貨がランダムに封入)
*金貨一枚以上最低保証。
・個別アイテム
金貨、銀貨、銅貨、石貨……etc
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若干ここもテイスト違うくない?
だけど、重要そうな気がする。
お金があれば安心するセットの下には、様々なアイテムが個々に表示されており、好きなものと個別取得できるみたいだ。
お金からポーション類、武器や防具、高ポイントなのに名前からどんなアイテムかよくわからないものまで沢山ある。オススメアイテム詰め合わせはショートソードとナイフしか武器がないので後衛用の武器はないのかなと思ったけど、個別に取得できるなら問題ないなと。
あと、なんのアイテムかわからないものも注釈がでず説明がないので、これも一種のギャンブルだ。高いポイントなので希少なものや価値の高いアイテムなんだろうけど、それをいかすことができるかと言われたら難しいと思う。
例えば、ダイヤとかの貴金属がでても売らないといけない。もし日本で数億円のダイヤを手に入れても、売るときにはどこで手に入れたか聞かれ、説明できないとなると盗品と思われるだろう。異世界ならなおさら。安く買い叩かれて、帰り道に追い剥ぎいあうかもしれない。
一通り、ざっと流し読みしたあと自分の姿を見てみる。
Tシャツというより貫頭衣といったほうが適切なものを着ている。足は素足だ。オススメアイテム詰め合わせの交換を促されているような気がする。
ただ、これは試練というより善意な気がするし、きっとそうなんだろうと思う。お金についてはランダムなのでちょっと怖いけれど、個別で交換するより消費ポイントが少ないのでお得だ。
できれば詰め合わせセットは交換したいけど、転移場所によるかなと。
街中に転移されたら、最悪お金さえあればなんとかなるかもしれないし、逆にどこかわからない森の中に転移されたらサバイバル生活の開始だ。詰め合わせセットはマストになって、さらに食料や水を取得しないといけない。
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●ギフト
クラスやジョブによるものではなく、その人自身に与えられた力。
神から与えられたといわれるもので恩恵と呼ぶものもいる。
個々人や種族によってギフトは違い、また先天的なものや後から突然発生する後天的なものもある。
*最初のキャラメイキングでは見ることができない。
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さようですか。
今の時点で見れないので、なんとも言えないけどこんな転生に選ばれるならみんな運の悪さとか悪運を持っているのではないだろうか。
次の転移場所の項目を開いてみる。
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●転移場所
基本的にランダムな場所に転移されるが、条件付けをすることで危険度を下げることができる。重要なのは生き残ることなのでは。
・大都市の中に転移 《10P》
危険が少ない人間種によって開拓された場所。人が少ない公園に転移される。
ダンジョンの種類が多く、初心者からプロまでオススメの場所。
・小都市の中に転移 《5P》
危険が少ない人間種によって開拓された場所。人が少ない公園に転移される。
ダンジョンの種類が少なく、場合によってはダンジョンがない可能性もある。
・村の中に転移 《0P》
危険がすくない人間種によって開拓された場所。人気がすくない場所に転移される。
ダンジョンの種類が少なく、人も少ない。特定の目的がなければ非推奨。
・ダンジョンの【低・中・高】階層に転移 《0P、5P、10P獲得》
ダンジョンにすぐ挑みたい方にどうぞ。モンスターが近場にいない場所へ転移されるが、危険なのは変わりがない。高難易度にしたい人向け。
・条件付け転移 《条件次第》
ユーザーが記入した条件に合致した場所へ転移される。ポイント消費は記入した条件によって決まる。消費ポイントは他に比べ大きいので注意。
【記入スペース】
・ランダム転移 《10P獲得》
どこに転移するかランダムで決められてしまう。海上、高山、土の中や壁の中など、一般常識的に転移されたら即死してしまう場所は除外される。
だがそれでも危険なのは変わらず、よほどの運の良さがないと生き残れない。
・家を保持【大・中・小】 《20P、15P、10P》
転移された都市や村に自分の家を持つことができる。
初年度は税金無料で、周囲の人も貴方が家の所有者であることを疑問に持たず、友好的な態度で接する。
・部屋を保持【大・中・小】 《17P、12P、8P》
転移された都市や村に自分の部屋を持つことができる。家は一軒家で、部屋は長屋の一部屋と考えても問題はない。宿屋も対象に入る。
長屋の住民は貴方に好意的感情を持つ。
初年度は税金無料で、周囲の人も貴方が部屋の所有者であることを疑問に持たない。
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この項目を見て思ったのは、すぐ死ぬことはなさそうだなということだった。
ランダム転移やダンジョンの中とかは別として、街の中に転移され周りに人が少ない場所に飛ばされるのだから。人が少ないというのが特にいい。
僕の初めての異世界転移は周りに武器を持った人に囲まれたもの。もうこれ殺されるのじゃないかなと思ったから。
家や村はどうなんだろう。自分のパーソナルスペースが持てるのは魅力だけど、その場所に縛られるという意味では不利な気がする。
もし、その都市が住みにくかったら? もし、自宅周辺の治安が悪かったら?
現代社会でも住む場所は吟味を重ねるのに、初めて行く異世界でそんなギャンブルをする必要があるのだろうかと思う。
ただ、自宅周辺住民の好感度が高いのはメリットだ。誰を信用していいかわからない異世界で信用できる人は金銭では買えない価値がある。
一長一短だけど、現時点では優先度はそこまで高くない。大都市か小都市でいいかなと。
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●パーティー
転移を共にする人物を選べる。
双方向の同意が必要で、一人につき相互に10P消費する。
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ソロなら0Pで二人なら10Pで三人なら20Pということかな。
消費ポイントは大きいけど、誰かと一緒というのは魅力的なのかもしれない。
問題は誰と組めるかだけど。
これで一通り見終わったかな。




