深淵卿の夏休み編 プロローグ
いわゆる高級住宅街の郊外に、緑が豊かでなだらかな丘がある。
敷地面積にして、およそ東京ドーム四個弱。その全てが高い壁で囲まれ、監視カメラや巡回警備が常に侵入者に目を光らせている。
初めてここを訪れた某卿が、とある巨人漫画の人類を守護する壁を思い出し、思わず「ウォー○マリアかよ……」とツッコミを入れたほど厳重な警備態勢が敷かれたその場所にあるのは、小・中・高一貫の超マンモス校だ。日本で三本の指に入ると称される格式高い名門中の名門校である。
言わずもがな、生徒の多くは名家や富裕層、著名人や要人の令息・令嬢だ。
そんな学園には、夏期休暇に入ってしばし経った今日この日、しかし、少なくない生徒の姿があった。海外から各分野の著名人を招いての複数の講演があったためだ。
もちろん、初等部も例外ではない。
昼を挟んで最後の講演が終わった現在、生徒達は各々次の予定に向かったり談笑したり、思い思いに過ごしている。
「ふんふんふ~ん♪」
そんな小学生達の中に、藤原陽晴の姿もあった。
なんだかご機嫌だ。いつもはお淑やかで物静かな雰囲気なのに、大変珍しいことに鼻歌を奏でている。
よほど講演が面白かったのか。
感想会をしたそうにチラ見しているクラスメイト達の様子に気が付く様子もなく、手早く帰り支度をしているところを見るに、おそらく違うだろう。
(ふふふっ、ようやくこの日が来ました。妖精界への旅行……楽しみですっ)
そう、それがご機嫌な理由だ。
クラウディアやヴァネッサの仕事の都合により朝一から出発とはいかず、ならばと陽晴も本日の講演には出席したのだ。
講演が興味深かったからというより、どちらかと言えば社交のためという意味合いの方が強かったが。
母親である千景などは気にしなくていいと言ってくれたのだが、縁や関係性を重んじる母の主義信条を尊敬している陽晴としては、藤原家の一人娘として出来れば欠席したくない機会だったわけだ。
ともあれ、ラナやエミリー、それに朱は既に遠藤家で待機しているはずで、この後、陽晴も直ぐに合流する予定である。
そうすれば、記念日やら正月やらを待つ子供の如く、ここ数日は眠れぬほど楽しみにしていた旅行の始まりだ。
(何より……あの人との初めての旅行、ですしっ)
二人っきりではないし、緊急事態でもない限りそんな慎みに欠ける真似はとてもできないけれど。
それでも想い人と共に過ごせる初めての夏休みだ。
(うぅ、どうしましょう。想像したらドキドキしてきましたっ。今回の旅行で、思いきって兼ねてよりのお願いを伝えると決めていましたのに……)
今からこんな有様で、果たしてちゃんと伝えられるだろうか? と胸元にそっと手を添える陽晴。
なぜか、周囲から息を呑む声がいくつも。
名だたる家の子女が集まるこの名門校においても、陽晴は目立つ存在だ。
家柄と、それに相応しい美貌と気品が故に……というだけでなく、その身に宿す神秘と生来の芯の強さ、聡明さが少年少女等の意識を惹きつけて止まないのである。
特に〝龍の事件〟以降はそれに拍車がかかった。幼き身には不相応なほどの覚悟と信念、そして意志の強さが加わったからだ。
以前とは明らかに違う。いっきに大人びたというか、人として大きく成長した雰囲気を感じるというか。
性別も学年すらも問わず一目も二目も置かれ、あるいは尊敬や憧れの感情を向けられる。それが今の陽晴なわけだが……
それ以上に、だ。
「ふ、ふつくしい……」
「陽晴様のお相手、本当にどのような方なのかしら?」
「あのお顔を見れば一目瞭然よ。絶対に素敵な方だわ!」
「確かお相手は大学生だとか……」
「英国の大学で医学を学んでいると聞きましたわ。つまり……年の差遠距離恋愛ッ」
「ロマンティックねっ。ああ、あの中々会えない愛しい方を想う切ない表情……見ているだけで胸が苦しくなりますね!」
そう、時折見せる陽晴の表情が、何よりも彼女の魅力を引き上げていた。
ただ恋に恋する乙女な雰囲気ではなく。
誰かの大きな背を必死に追いかけているような、並び立たんと一生懸命に己を磨いているような、そんな一途な雰囲気が何よりも周囲を惹きつけているのである。
「っ、それでは皆様、ごきげんよう。良い夏休みをお過ごしください」
流石にキャッキャッと盛り上がるクラスの女の子達には気が付いたようで、陽晴の頬は赤く染まった。
パチンッと勢いよくカバンの留め具をつけて、恥ずかしさを誤魔化すようにそそくさと教室を出る。
(うぅ、お母様ったら! 正式にお付き合いしているわけでもありませんのに、社交の場で〝娘には心に決めた方がいる〟なんておっしゃるから!)
まだ幼き身なれど、陽晴には間断なく縁談が来る。いわゆる、許嫁の座を狙う家は多いのだ。
何せ陽晴は藤原グループの一人娘。陽晴を手に入れることは、莫大な権益を手に入れるも同然であるからして。
それらの申し込みを、千景は無下にしてこなかった。
彼女の主義信条故に。何より、娘のために。
未来のことは誰にも分からない。何が陽晴にとって最良の縁になるかも。相手にしろ陽晴にしろ、どんな心を育むかも。
重要なのは可能性をたくさん作ること。選択肢を増やすこと。
だから、パーティーの類いには顔を出すようにしているし、自らパーティーを開催する際には彼等を拒否せず招いてきた。そして、縁談を持ちかけられれば「本人達の気持ち次第ですわね~」と少なくとも拒絶はしてこなかったのだ。
そう、去年までは。
今年の四月頃だったろうか。子供達の進級祝いを兼ねたとあるパーティーが開かれたのだが、その場で千景は暗に宣言したのだ。
今後、娘への縁談は全てお断りさせていただく、と。
しかも、聞けば一般家庭の大学生だというではないか。千景がグループの利益より娘の心情を重んじているのは周知のことだが、それにしても予想外がすぎる。
(新学期早々、質問攻めでしたし……)
それで、なんだか同級生の女の子達との距離感がグッと縮まったような気がするのは、まぁ、悪い気はしないのだけど……恥ずかしいものは恥ずかしい。
だって、問われれば、
(少し……劇的に話しすぎたでしょうか? ですが、遠藤様がわたくしのヒーローなのは事実ですし……裏の世界の話はできませんから、少し、ほんのちょぉ~っとだけ創作が入ってしまったかもしれませんが……)
どうしたって、つい熱く語ってしまうから。
(まぁ、その、わたくしのためを想っていろいろ動いてくださっているお母様には感謝していますけれど……少なくとも、拗ねてばかりのお父様よりは)
遠藤家への配慮もあって、陽晴の相手がどこの誰か明言こそしなかったが、伝手も財力もある名家や富豪の調査能力を舐めてはいけない。
家族ぐるみの付き合いも増やしたいと願っていたので、隠しきることはなおさら無理がある。
なので当然、遠藤家にいらぬちょっかいがかからぬよう千景は藤原グループの総力を以て対応してくれている。
そうまでして、千景が宣言したのは全て娘のためだ。
本人達の気持ち次第――それは陽晴と浩介の間にも言えること。
将来のことは分からない。これも同じく。
だから、千景は「娘が心に決めた方」とは言っても「許嫁ができた」とも「婚約者だ」とも言っていない。言い換えれば「娘に片思いの相手ができた」と言っただけなのだ。
浩介の気持ちを無視し、外堀を埋めて選択肢を与えないなんて不義理な真似は絶対にしてはならないと考えているから。
だがしかし。そうすると、だ。
陽晴の片思いにすぎないと理解すれば各家もワンチャンスを狙って再び動き出すだろう。加えて言えば、裏の世界においても、最強の陰陽師の血を取り込まんと各国から縁談が殺到している状況だ。
家を通した縁談くらい千景が全て対応してあげられる。だが、学園を始め個人的に接触してくる者達のアプローチはどうしようもない。
縁と関係性を重んじる千景の主義信条を敬愛する陽晴は、真面目すぎるくらい真面目な娘は、きっと家同士の関係やビジネス上の付き合いに配慮して、上手く断るのに苦労するだろう。
場合によっては、想い人が見ている前で。たとえ、そんなこと気にしなくていいのだと言っても。
となれば、だ。多少の援護射撃はしてあげたいというのが母親心というもの。
それこそ、パーティーの場で宣言した最大の理由だ。
――これで、気兼ねなく〝お断り〟できるでしょう?
ニヤッと笑う母の姿が思い起こされ、
(そう、ですね。最強の武器をいただいた気持ちです)
校舎の階段を下りながら、思わずくすりっと笑う陽晴。
ただの片思いの相手と、藤原家が認める片思いの相手ではまったく意味が異なる。少なくとも、藤原家へ縁談を打診するような家々に対しては。
「頑張りますね、お母様……」
藤原家の一人娘。裏の世界では最強の陰陽師。しかし、そんなステータスが一切通じない初恋相手。それどころか最愛の女性が既にいて、しかも、陽晴の目から見ても魅力的だと思う女性がたくさん。
おまけに、自分には年齢差という圧倒的に不利な要素まで。彼が自分を恋愛対象として見ていないことも重々承知。
だが、それでも引く気はない。そんなに軽い気持ちではないのだ。
グッと握り拳を握って決意も新たにする陽晴。
そうして、駐車場に通じる出入り口から校舎を出て――この学園には小・中・高それぞれに送り迎え用の駐車場とロータリーがある――迎えの車の傍に立っている人物を見て目を丸くし、かと思えば直ぐにパァッと表情を輝かせた、その直後だった。
「陽晴さん。少しお時間をいただけませんか?」
小学生にしては随分と丁寧な言葉遣いが背後から響いた。
もっとも、この学校においては小学生であろうと物腰の丁寧な言動を取る生徒は少なくない。かくいう陽晴もその一人なので変わった子だとは思わない。
が、最近よく聞くその声に、陽晴は思わず溜息を吐きかけた。
周囲の女の子達が陽晴の背後の人物を見て色めき立っているのが分かる。
それらを華麗にスルーして、名家のご令嬢らしい素敵な笑顔を貼り付けて振り返る陽晴。
「上栄城様、何かご用ですか?」
「……」
名門校らしい上品なワンピースタイプの制服の裾に合わせて、濡れ羽色の長い髪も夢のようにふわりと翻る。
それに惚けた様子を見せた声の主は、眼鏡をかけた少年だった。日本人なら誰もが知る大企業の令息だ。名を上栄城栄人。
四年生の陽晴に対し、彼は六年生なので去年までは学園で接する機会も特になく、ただ彼の父親と陽晴の父である大晴が十数年来の競馬仲間であることからパーティーなどではよく顔を合わせていた子だ。
「上栄城様?」
「っ、失礼。陽晴さんのあまりの美しさに言葉を失っていました」
歯の浮くようなセリフを口にする栄人少年だが、真っ赤な顔を見れば、それがキザな性格から出たものではなく本心だというのは丸わかりだ。
実は栄人少年もまた、〝龍の事件〟を経て魅力爆増中の陽晴に心を奪われた少年の一人である。新年を祝うパーティでのことだった。
前から面識はあったのに、なぜ急に意識してしまうようになったのか。自分でも困惑するその理由が、陽晴に想い人ができたが故と知るのは僅か三ヶ月後。
あまりにも短い初恋だった……
なんて潔く身を引ければ良かったのだが、案の定である。家の力を使って調査した結果、「ただの片思い? それなら……いける!! 陽晴さんを振り向かせることができる!」と思ってしまったのだ。
栄人少年の言動に、周囲から更に黄色い声が上がっている。彼は大変人気があるのだ。家柄は最上、容姿端麗、勉学にもスポーツにも優れ、多くの生徒が憧れる生徒会のメンバーでもある。
それは女の子達も沸き立つというもの。が、当然の如く、
「ありがとうございます。それでご用件は?」
陽晴ちゃんの完璧お嬢様スマイルはまったく揺るがない。
逆に動揺する栄人君。
なぜか周囲から「おぉ~」という感嘆混じりの声や、「藤原さん、流石だっ」みたいな声が漏れ出る。一部の女子からは「そうですよね! 藤原様は女性にしか興味がないのですものね! うふふっ」なんて声も。
完璧なお嬢様スマイルが、ちょっと引き攣っちゃう陽晴ちゃん。女の子にしか興味がないと思われているから……ではない。脳裏に過るのは影の薄すぎる想い人……
なお、陽晴はまだ知らない。大事件を経て現在進行形で増している魅力が故に、最近、ファンクラブが創設されたことを。
そして、自由奔放に姿を見せちゃう伝説の鬼神にして陽晴の前鬼たる――緋月とのやり取りを幾度か目撃された結果、
「学園では決してお見せにならない態度っ。もしや、あの方が藤原様の想い人!?」
「未だ公にしていないことからすればあり得る!」
「謎は全て解けたわ! 陽晴様は女性が好きぃ!」
「これはワンチャンありますわ!」
と、一部では信じられ盛り上がっていることを。
そう遠くない未来で、某ベテランお姉様に、義妹を名乗る子達と、義姉を名乗る先輩方が急に増えたのですが、わたくしいったいどうしたら……と真剣に相談することになることも。
まだ知らない。
閑話休題。
「ああ、はい、失礼。よろしければ、一緒にお茶でもいかがですか? ゆっくりとお話したいことがあるのです」
「お誘いありがとうございます。ですが申し訳ありません。予定がございまして……」
「そ、そうですか、残念です。それはそれとして、夏休みのご予定は? 実は当家にて――」
「明日からしばし日本を離れる予定です。ずっと楽しみにしていたのですよ」
にっこりにこにこ。夏休みを共に過ごしたいという栄人少年の内心を、この聡い少女が読み取れないわけもないが、ない故に一分の隙も見せはしない。
そして、隙を見せないだけでなく、しっかり止めも刺す。
「お慕いしている方と過ごせるものですから」
「!!?」
グハッというダメージボイスが幻聴できた。少なくとも周囲の生徒達には。
いつの間にか、お迎えにきた保護者や運転手さん達もさりげな~く注目しているのだが、彼等も「あらまぁ」みたいな同情半分・微笑ましさ半分といった表情だ。
普通なら裸足で逃げ出したくなる状況だが、栄人少年は漢だった。眼鏡をクイッ。
「まさに、その方に関してお尋ねしたいのです。大学生というのは本当なのですか? 少々年齢が離れすぎてはいないでしょうか? それに、聞けばご両親は市役所勤めだとか? 家柄から考えても、陽晴さんにはもっと相応しい相手が――」
ちょっとばかし選民思想がなくもない栄人少年。どれだけ紳士的な態度を心がけようと、そこはやはり小学生なので、感情や思想が先走って言葉選びを間違えることは普通にある。
そう、たとえそれが陽晴からすれば致命的な間違いだったとしても。
「……」
「相手が……あの、その……」
笑顔だ。陽晴ちゃんは笑顔だ。だが、なぜだろう。その笑顔を見ているだけで震えが止まらない!! 周囲の生徒達、運転手さん達まで「あれ、腕に鳥肌が……なぜ?」と不思議そうにしている。
そんな中、丁寧な、けれど抑揚が皆無の声音で陽晴は言った。
「これで二度目です。次はありません。――お覚悟を」
「あ、はいっ。ごめんなさいっ」
大人に叱られたみたいに素直に謝る栄人少年。反射的な行動だった。本能が命じたのだ。逆らうな!! と。
ちゃんと謝れたので――謝らせたとも言えるかもしれないが、ともかく謝罪は受けたので、いつもの柔らかな雰囲気に戻る陽晴。
「上栄城様。既に何度も申しておりますが……わたくしにはお慕いしている殿方がいますので、こうしたお誘いは今後、ご遠慮願いたく思います」
丁寧に頭を下げ、しかし、きっぱりと意志を伝える陽晴。
そんな姿にこそ惚れてしまった栄人少年であるから、やっぱり簡単には引き下がれない。
来年からは中学生だ。同じ学園とはいえ、広大な敷地の中で校舎が違えば容易に会いに来ることはできなくなる。二学年の差は大きい。
まして、陽晴は今年に入って学園公認の休みを取ることが多くなった。家の仕事関係という話なので、今後も続くだろう。とすれば、ますます会える機会は減る。
だからこそ、この夏休みに少しでも距離を縮めたい!
恋する少年は、一礼してその場を去ろうとしている目の前の少女を、どうにか引き留めようと口を開きかけるが、その機先を制するように別の声がかかった。
「お待ちになって、陽晴さん。少しお時間はあるかしら? いいえ、このわたくしが誘っているのですもの。時間ならありますわね?」
ほとんど踵を返しかけていた陽晴の口元がむにょっとなった。引き攣りそうになったのを必死に堪えた感じだ。
「姫小路様、ごきげんよう。そして、申し訳ございません。本日は本当に時間が取れなくて……」
困り眉になりながら、新たな登場人物に――栄人少年が絡んでくる頻度に比例にして絡んでくるようになったご令嬢に目を向ける。
見事な黒髪縦ロールだった。吊り目がちで、いかにも意志が強そうな面差しだ。
姫小路利華。栄人少年と同じ生徒会メンバーの六年生だ。一方的ではあるが、藤原家をライバル視している旧家のお嬢様である。
「なんですって?」
キッと釣り上がる目尻。まだ十二歳なのに凄い迫力である。
「利華さん、悪いけど陽晴さんは今、僕と話しているんだ。後にしてくれないか?」
「あら、栄人さん。今、きっぱりお断りされたところじゃありませんの。しつこい男は、それこそ嫌われますわよ?」
「なっ、別にしつこくなんて……利華さんこそ、隙あらば陽晴さんに絡んでいるそうじゃないか。今もそんなに睨んで……後輩を怖がらせるなんて感心しないよ」
「まぁ! この子がこの程度で怯むとでも? 栄人さん、すっかり目が曇っていらっしゃるのね? せめて眼鏡をお拭きしましょうか?」
「や、やめくれ! 眼鏡に触ろうとするんじゃない! 君という人はどうしてそう昔から意地悪なんだ!」
「なんですって! 意地が悪いなんて酷い言い草ですわ! 撤回を求めます!!」
陽晴は思った。もう帰っていいですか……と。
珍しくも陽晴が仲裁なんて考えもしないのは、この二人の口論が毎度のことだからだ。
なので、陽晴そっちのけで喧嘩を続ける二人を見て、一拍。
よし、帰ろう! と今度こそ踵を返す。そぉ~っと距離を取る……
「お待ちなさいっ、陽晴さん!!」
ギュインッと顔を向けてくる利華お嬢様。自慢のロール髪まで遠心力でギュインッと陽晴に先端を向けてくる。届かないのは分かっていても、つい反射的に身を逸らしちゃう。
「わたくし、貴女を疑っていますの。本当に想い人はいるのかと。いたとして、本当に貴女が話すほどに素敵な方なのかと」
「もちろん、嘘など申しておりませんよ?」
「でしたらぜひ、会わせてくださいまし!」
とても小学生とは思えない口論の後の、中々に小学生らしい無茶振りである。
当然、陽晴はとても困った様子だ。が、おや? 困り顔ではあるが……どうしたことだろう。何やらそれ以上に、背後を気にしている様子。
「以前から何度もお願いしていますでしょう? だというのに貴女ったら頑なに隠そうとして……」
「いえ、隠すも何も既に二回――」
「貴女が曖昧にするから惑う者も、いらぬ噂も立つのです! このお馬鹿さんに分からせるためにも、わたくし達の前に連れてくるのです!!」
「誰がお馬鹿さんですか。利華さん、流石に無茶を言いすぎです。陽晴さん、どうか気にしないでくださいね?」
ビシッと指を差してくる利華お嬢様と、気遣いを見せる栄人少年。
そんな二人を前に、陽晴は溜息を一つ。悲しい事実を告げた。
「会いたいも何も…………今、目の前にいるではありませんか」
「「………………へぇ?」」
予想外の返答に思わず間抜けな声を漏らす二人。
肩越しに振り返り斜め上を仰ぎ見る陽晴の視線に釣られて、同じく視線を向ける。
あれ? なんだろう? 何かぼやぁと黒い影が……
目を細めて更に注視する。急にはっきり見え始めた。黒いスーツ姿の男が。まるで、虚空から滲み出てきたかのように。
「あ、どうも。遠藤浩介です。二人共、二ヶ月ぶりかな?」
ほがらかに、でも何かを察してちょっと涙目になりながらも片手を上げて挨拶したのは、もちろん我等が遠藤浩介こと深淵卿――じゃなくて深淵卿こと遠藤浩介だった。
ぽかんっと口を開けた二人は(周囲の人達も今、陽晴の直ぐ後ろに立っている人物に気が付いたようで同じく惚けている。陽晴の困っている様子に気が付いて、普通に歩み寄ってきただけなのに……)、一拍おいて叫んだ。
「「誰ぇ!?」」
「うん、知ってた。前回も忘れられてたもん。でも、二回も挨拶してなお記憶に残らないって……へへっ」
「あぁっ、遠藤様! 泣かないで! ほら、前回も前々回も朱さん達がいらっしゃったから少しだけ印象が薄かっただけでっ」
「……なんかごめんね。毎回、フォローさせて」
ほろりっと零れ落ちた涙。必死にフォローする陽晴だが、それが逆に悲しい……
「まぁ、あるあるだから気にしないで。自己紹介を二、三度したくらいじゃあ初対面なのは普通だよ……」
「何を言っているのか分からないはずなのに、何を言っているの分かってしまうのが辛いです……」
一応、複数人がいる場で挨拶した者の一人だった場合という条件はある。
事実、過去二回、栄人少年と利華お嬢様の二人と挨拶を交わした時は、いつもの運転手さんに同行した形で、しかも任務の関係で朱や柳、それに緋月もいた。
とはいえ、しっかり自己紹介したのだ。栄人少年も「こいつがライバル……」と敵愾心を燃やしていたはずなのだ。
なのに、また初対面の反応とか……
これも深淵卿モード深度Ⅵの弊害、否、後遺症なのだろうか。お薬漬け生活からはすっかり卒業できたし、心の中のアビィがひょっこり顔を出すこともなくなったのだが……
俺、俺の中の深淵卿が怖いよ……と厨二チックなショックと恐怖を覚えても、まぁ、無理はない。
「いえ、待ってください! ……ぼんやり思い出してきた」
「ほんとぉ?」
「ああ、わたくしもですわ! 確かに紹介されました! どうして今まで忘れていたの!? こわいっ」
「だよね! 俺もこわい!」
「僕達の記憶に何をした!!」
「怪しい……怪しいですわ! およそまともな人間とは思えませんわ!!」
「やめてよね。君達が本気になったら俺の涙腺が勝てるわけないだろ?」
小学生に泣かされる大学生の姿が、そこにはあった。
陽晴ちゃん、両手で顔を覆う。恥ずかしいのではなく、ただ悲しくて。あと、ある意味大正解しちゃってる利華お嬢様に、思わず噴き出しそうになって。
「そ、それより、迎えに来ていただきありがとうございます、遠藤様! さぁ、他の方々もお待ちでしょうし、早く行きましょう!」
「お、おぅ? いや、俺としてはここでダメ押しの挨拶をしてしっかり覚えてもらいたい――」
「無茶なことおっしゃらないで!」
「無茶なこと!?」
車の方へグイグイッと手を引いていく陽晴に、浩介は戸惑いつつも逆らわずついていく。
それを見て、栄人少年と利華お嬢様が「「あっ」」と声を揃えて追いかけようとするが、
「上栄城様! もう少し身近な方のことを考えてみてはどうでしょう! きっと、貴方様の幸せの花は、直ぐ近くに咲いていますよ!」
「えっ?」
「そして姫小路様は、もう少し素直におなりください! 貴女は、誰にも負けないくらい可愛くて素敵な方なのですから!」
「なっ!?」
肩越しに振り返った陽晴のセリフに、つい足が止まってしまって。
二人が車に乗り込み、さっさと走り去っていく姿を見送ることしかできず。
結局、それがこの夏、陽晴と浩介に会えた最後になったのだった。
「えっと、よかったの?」
藤原家の黒塗りセダンを運転しながら(免許はしっかり取ってある)、助手席をチラッと見やる浩介。
「はい、問題ありません。といいますか、わたくしも馬に蹴られたくはありませんので」
「え? 馬? ……あ、そういうこと?」
「……既に二回、あの二人のやりとりを見ていて、今、気が付いたのですか?」
陽晴がなんとも言えない苦笑を浮かべている。
「いや、でも、ほら、栄人君は……」
「一時の気の迷いです」
「おぉ、ばっさりいくぅ」
「事実ですもの。気が付きませんでしたか? あの人、姫小路様にだけは丁寧語じゃなくなるのですよ?」
「……あ、そう言えば?」
「はい。姫小路様も上栄城様以外にはあれほどきつい態度は取られないのです。そもそも、学園に入る前からの仲だそうですし」
「ははぁ~、幼馴染みってことか。栄人君がちょい鈍感で、利華ちゃんは素直になれないだけと」
「ですね。むしろ、上手く立ち回らないと、わたくしが二人の仲を引き裂く悪役になりかねません。そう、真実お義姉様がオススメしてくださった漫画で言うところの悪役令嬢です」
浩介の妹は、既に確信しているらしい。陽晴ちゃんは義妹になると。今からそう呼ばせているくらいに。ならばもちろん、あの生粋のオタク少女がオタクの沼に引き込もうとしないわけがなく。
「……あいつ、変な本とか教えてないだろうな」
ぼそっと呟いてしまう。ことサブカルチャーの分野に関して、兄は妹をまったく信用していない。今はオタク捜査官であるヴァネッサという共謀相手がいるのでなおさら。
「ちなみに、二人の相性を占ってみたのですが……もはや運命の相手と言えるほど相性抜群でした」
「最強陰陽師の占いかぁ」
ほな間違いないかぁと納得する浩介に、陽晴はチラッと視線を向けた。かと思えば、お行儀良く膝上に置いていた手をモジモジ。
「それに」
「うん?」
「たとえ上栄城様に何を言われようと、いえ、他の誰に何を言われようと、わたくしの心は決まっていますので……」
「……」
「間違っても、〝同年代の男の子の方が相応しいかも〟なんて思わないでくださいね? 〝心変わりするなら、それでもいい〟とも。わたくしの涙腺に何をしてくれるのだと、大泣きしてしまいますからね?」
「……うっす。了解です」
なんだろう。無性に気恥ずかしい。恋愛対象には未だ入らないのは確かだが、その気持ち自体は、否が応でもしっかり受け止めねばならないと感じる。感じさせられる。
ちょっと気圧される感覚すらもあって、思わず言葉遣いを改めてしまうほど。
陽晴もまた、浩介の様子から心変わりの可能性を疑われてはいないと安堵を得たのだろう。ほっと吐息を漏らす。
そうすると、陽晴も気恥ずかしさが勝ってきたのか。余計に赤面して、誤魔化すように話題を変えた。
「それはそうと、遠藤様。運転手もつけず直接お迎えに来てくださるなんて……それもスーツ姿で。何かありましたか?」
「ああ、大晴さんの手伝いをね。陰陽寮の仕事で」
平然とした様子だが、陽晴の直感はそれを演技と看破した。
「……お父様に何か言われましたか? いえ、言われましたね?」
「べ、別に? まぁ、ほんのちょっと注意事項を叩き込まれた――じゃなくて、くれぐれも陽晴ちゃんを頼むみたいな感じのお話をね?」
仕事があったのは事実だが、それを片手間にこなしながら真顔で延々と〝旅行中の娘との適切な接し方〟を説かれていたのも事実だ(旅行が決まってから既に十五度目)。
むしろ、仕事への呼出しがついでで、本命はそっちだろう。
「お父様ったら……やっぱり自分も連れて行けなどと言われませんでしたか?」
「……」
沈黙は何よりの肯定だった。
「それで、お母様にバレて連れ戻されたのですね。ついでに、わたくしのお迎えも頼まれたと」
「エスパーかよ」
陰陽師だ。ただ賢くて直感力に優れた最強の。うん、伊達ではない。
「別に千景さん達も一緒で良かったんだけど……」
「ふふ、気を遣ってくれたのでしょう。わたくしだけ両親同伴ということに。もちろん、親は親同士で親睦を深めたいというのも本当でしょうけれど」
「だなぁ。母さんも父さんもめっちゃ楽しみにしてたけど……セレブの旅行に腰抜かさないかな?」
浩介が数日後の両親の姿を想像して苦笑する。
実は浩介達が妖精界への旅行に行っている間、藤原家の両親と遠藤家の両親も一緒に旅行に行く予定なのだ。
妖精界に興味がなかったわけではないが、驚天動地の異世界が両家一緒の最初の旅行というのも落ち着かない。まずはお互いのこと、両家のことをゆっくり知り合いたい。という思いがあったようだ。
もちろん、それは浩介に対する絶大な信頼があってのことだろう。
その点、千景だけでなく大晴も同じ気持ちなのだが……
そこはまぁ、娘を持つ父親としてはどうしても……ということだろう。
「お義兄様は……やはり?」
「ああ、うん。行かないって」
浩介の実兄――宗介。実は今回の旅行、妹の真実と居候中のアジズ君も一緒に行くのだが、当然、宗介も仲間外れにするつもりはなかった。
だが、旅行計画を聞いた宗介お兄さんは、案の定、「なんで弟のハーレム旅行に同行しなきゃいけないの? お兄ちゃんの心を、そんなに殺したいの?」と抑揚のない声で断ったのである。
妖精界とやらには興味があるので、後日、兄弟だけで、そう、男同士だけで行こうな! と確約はさせて。
「少し申し訳ない気持ちになりますね……」
「まったく欠片も気にしなくていいよ!」
「そ、そうですか……」
あまりにあっけらかんと言う浩介に、ちょっと引き攣ってしまう陽晴。一見すると兄弟仲が悪いのかとも思うが……まぁ、それならそもそも兄弟水入らずの旅行を提案したりはしないだろう。と納得しておく。
その後も何気ない話をしている間に時間はあっという間に過ぎていき、二人は藤原家のマンションに到着した。
車を地下駐車場に駐めて、その場で遠藤家に通じる《ゲートキー》を開く。
千景も大晴も今は留守だし、陽晴も出発の挨拶は今朝のうちに済ませてある。着替えや旅行用の荷物は既に遠藤家にあるから部屋に入る必要はないのだ。
そうして、遠藤家のリビングに転移すると……
「あら、こうくん! それに陽晴ちゃん! お帰りなさい! ちょうど良いタイミングだったわね!」
ぴょんっとリビングのソファーから重力を感じさせない身軽さで跳ねたウサギお姉さんが目の前に立つ。
浩介の頬にごく自然とお帰りのキスをし、陽晴をギュッと抱き締める。
半袖シャツにジーンズというシンプルな出で立ちなのだが、シャツの胸元がV字な上に大きく開いているので、陽晴の小顔がすっぽり埋もれてしまった。挨拶も返せずモガモガしている。
そしてそのまま、「陽晴ちゃんを着替えさせてくるわねぇ~」とリビングを出て行ってしまった。
ラナも、よほど旅行が楽しみだったのか。テンションがいつも以上に高い。
「二人共、予定より少し早いな。仕事は無事に?」
ソファーに座っていたクラウディアとヴァネッサに、ネクタイを外しながら笑顔を向ける浩介。
如何にも避暑地のお嬢様といったワンピース姿のクラウディアと、たぶん何かのアニメのコスプレだろう。和洋折衷の手作り感がある衣装を着たヴァネッサがにこやかに頷く。
「はい、問題なく。これで気兼ねなく旅行に行けるのですよ♪」
「ええ、大丈夫ですよ。妖精界の実情を探ってこいと、局長が念押しにあれこれ指示してきたのですが……面倒だったのでスタングレネード投げつけて逃げてきましたから!」
「全然大丈夫じゃなかった……」
ちなみに、クラウディアはなぜかエミリーに足の治療を受けていた。回復薬を患部にぬりぬりされている。たぶん、また人体ピタゴラスイッチしたのだろう。普通に問題ありだ。
「あれ? 真実とアジズ、それに朱さんは?」
「三人共、二階よ。ああ、足音がするから降りてきそうね」
上はシャツにファション用のネクタイ、下はミニスカートと黒のパンスト姿のエミリーが、回復薬を片付けながら天井を見やる。
どうやら出発ギリギリまで、アジズ君は妹の趣味に付き合わされているらしい。
「朱さんまで真実に付き合って? 珍しい……」
「いえ、シウさんは……コウスケの部屋よ」
「え? 俺の?」
「うん、何か弱みはないか朝からずっと漁ってるわ」
「止めてよぉ!!」
なんで放置するの!? エミリーの裏切り者! と言外に非難する浩介。エミリーちゃんはそっと視線を逸らした。実は共犯だから……とは言えない。
マナミが! だってマナミが好きにして良いって言ったから! 出来心で! と心の中で言ってそう。
と、そこで浩介の気配を察したのかダダダッと素早い足音が。リビングに入ってきたのは案の定、朱だった。
長い黒髪をアップにまとめ、ワイドパンツにノースリーブのシャツを着ている。スーツや戦闘服以外は滅多に見ないので、旅行衣装は中々に新鮮だ。
「なんだジロジロ見て。きしょく悪い」
「第一声が鋭利なナイフなのやめてくれません?ってか、俺の部屋に変なことしてない? 盗聴器とか……」
「馬鹿な。そんなことするわけ――」
廊下から足音。真実とアジズも降りてきたらしい。で、その第一声は、
「こう兄、おかえり~」
「お帰りなさい、浩介さん。部屋に盗聴器が仕掛けられていたので外しておきました」
ごく普通のお帰りと、犯罪に対する証言だった。アジズ君、ジトッとした目を朱に向けている。真実の相手をしつつも、壁越しに朱の動きにも注意していたらしい。グッジョブ。
浩介は真顔で朱さんを見た。朱さんは無言で目を逸らした。
「アジズ、よくやってくれた。やっぱりお前は頼りになるやつだよ」
「そんな……恐縮です」
「旅行も参加してくれてありがとな。肩身が狭いわけじゃないけど、男同士の付き合いってのもやっぱ嬉しいし」
「浩介さん……はいっ。俺も浩介さんと旅行ができて嬉しいです!」
最近、随分と素直に年相応の笑顔が出るようになってきたアジズ君。心から嬉しそうなそれに、姉としてクラウディアもニッコニコだ。
だから、真実とヴァネッサが「ほぅ、男同士のお突き合いが嬉しい、と」「デュフッ。捗りますね、真実氏」と小声を交わしながらニチャ~ッとした笑みを浮かべていても、もちろん全力でスルーする。
そうこうしているうちに、陽晴も着替えを終えたようだ。
「どうどう、こうくん! 可愛いでしょう?」
「おぉ~、似合う似合う」
「! あ、ありがとうございます、ふふっ」
こちらも少々珍しい姿だった。黒を基調としたフリル付きのノースリーブシャツにショートパンツである。
「ミュウちゃんの戦闘服が格好良くて……少し真似てみました♪」
「ああ、なるほど」
そういうことらしい。
「場合によっては、妖魔達を分からせる必要もあるでしょうし」
「あ、ああ、なるほど」
本当に戦闘を想定しているらしい。たくましい。
「ほら、こうくんも早く着替えてきて。緋月が向こうで待ってるんだから。鬼嫁が怒っちゃうわよ? 遅いって」
基本的に情動任せ、本能に素直な妖精界の住人である。なので、浩介が世界を越えても分身体を維持できる〝特別仕様のフェアリーリング〟をハジメがあらかじめ設置してくれているのだが、その設置場所に、念のために緋月が待機してくれているのだ。
「確かに。直ぐ着替えてくるよ」
そう言って二階に駆け上がる浩介。十秒で戻って来た。早い。
ラナを意識しているのか。上に半袖のカッターシャツを重ねているが、ジーンズに白のシャツ姿だ。軽いペアルックに、ラナのウサミミがふにゃっとなる。
「ええっと、忘れ物はないよな。うん、だいたい宝物庫に入ってるし大丈夫か」
と最終確認だけ一応して、「それじゃあ行くぞ?」と〝フェアリーキー〟を起動させる。
ラナ達の表情がわくわくと輝く。
そうして、光の膜を「せ~の!」と一斉に飛び込むようにして抜けて……
「よぉ~、よく来たなぁ。歓迎するぜぇ、アビスゲートさんよぉ」
浩介達は硬直した。
緋月が、豪奢な椅子に座って神輿のように担がれているのは、まぁいい。だが、どうしたことだろう。
ずら~~~~~~~~~~~~~~~~っと。
まるで、アイドルの握手会の如く、何体もの鬼が長蛇の列を成しているのは。
その列の先が緋月ではなくゲートの前――つまり浩介の前であり、彼のギラギラした視線も浩介だけを捉えているのは。
「さぁ、酒呑童子に相応しい男は誰か。白黒はっきりつけようじゃねぇか! なぁ、お前等よぉおおおおおおっ」
――ウォオオオオオオオオオオオオッ
と一斉に上がる鬼気と妖気に塗れた雄叫び。なんかすんごい盛り上がってる。
「ひ、緋月さん?」
ギギギッとぎこちなく緋月を見やった浩介に、緋月さんはとても楽しそうな、同時に期待するような眼差しで、
「愛しの君。どうぞ存分に、分からせてやっておくんなまし♪」
なんとも可愛らしくおねだりしたのだった。
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念のため時系列の補足。今話はハジメsideでいうと星霊界の最終日辺りです。時間軸の乱れがあるので、あくまで大体のところはという感じですが。なのでショゴショゴしてくるのはもう少し先です。すみませんが、話が繋がるまで今しばらくお待ち頂ければと。よろしくお願いいたします!
※ネタ紹介
・ウォールマリア
『進撃の巨人』より。
・やめてよね。本気で~
『機動戦士ガンダムSEED』より。今ジークアクスやってますね。一気見が好きなので完結まで我慢中。楽しみです。




