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ありふれた職業で世界最強  作者: 厨二好き/白米良
ありふれた番外編 世界のアビスゲート卿から
200/550

ちょっ、誤解! 誤解ですからっ

 オレンジ色の、レトロというより単に古びた蛍光灯が照らす室内。木製の薄そうな壁に、色あせた合成革のソファー、ベッドだけはやたらと大きいが、同色のシーツやカーテンは、どことなくくたびれている感じがする。


「流石、格安ホテル。映画なんかで、逃亡者が逃げ込みそうな雰囲気だなぁ」


 ギシギシと床を鳴らし、苦笑いしながらベッドにボスンッと身を投げた浩介が、そんなフラグっぽいことを独り言ちる。古臭いベッドは、乱暴に扱うなと抗議するかのように、スプリングをギシリギシリと響かせた。


 飛行機の都合上一泊する必要があったために、こうしてホテルの一室を借りた浩介。何故、ハジメから学生の身分ではそうそう手にすることのできない相当な金額の依頼料を貰っておいて、わざわざこのような古びたホテルを選んだのかというと、単なる浩介の貧乏性故である。


 いくらお金があるからといって、特に必要もないのに高級ホテルに泊まっても、部屋の煌びやかさと相まって、浩介的に確実に落ち着かない。カプセルホテルって……なんか妙に落ち着かない? とは、かつて家族旅行に行った際、浩介が親に言った言葉だ。


 その時の浩介の両親は、流石に息子の人として何だか小さすぎる感覚に、せめてビジネスホテルとか、民宿くらいは求めてほしいと、ちょっとしんみりとしたものだ。


「でもまぁ、ちょっと奮発して上階を借りただけのことはあるな。いい景色じゃん」


 浩介がこのホテルを選んだ理由は、古いわりに十五階建てという高さがあったからだ。上階になるほど、ちょっぴり値段が上がっていくのだが、さんざん悩んだ挙句、「じゅ、十階くらい、せっかくだしいいよな……」と夜景を楽しみにして借りたのである。クラスメイトや家族が知ったら、きっと生暖かい眼差しを向けることだろう。


 くたびれたカーテンを開ければ、そこには町の明かりが地上の散る星の如く、キラキラと煌めいている。予想と期待に違わず、なかなか満足のいく夜景だ。


「……今度は、きっとラナと見よう、うん」


 再び独り言ちる浩介。脳内では、愛しい年上のウサミミな恋人とのロマンチックなあれこれが駆け巡っている。……きっと、重吾や健太郎が傍にいたなら、夜景うんぬんの前に、せめてもう少しホテルのグレードを上げろよ、とツッコミを入れたことだろう。


 しばらく夜景を楽しみつつ、脳内でラナとの逢瀬を妄想し、スマートフォンを取り出して前回ゲートが開かれたときに撮影したラナとのツーショットを見てニヨニヨし、ということを繰り返すこと数時間。


 そろそろシャワーでも浴びて就寝しようかと、浩介はバスルームへと向かった。


 バスルームもまた古い作りで、壁に直接取り付けられたシャワーノズルと、その下に幾つかのハンドルがある。取り敢えず服を着たまま、古いシャワーの調子を確かめるべく、キコキコと音を奏でさせながらハンドルを回せば、じょわっと水が噴き出した。「甘いっ、お約束のように頭から被ると思ったか!」と、一人虚しいことをやりながら、最適な温度になるようハンドルをキコキコしながら調整していく。


 手で温度を確かめつつ、こんなもんかなぁと、浩介が呟いたその時――


 上階からどったんばったんと激しい振動が伝わってきた。困ったことに天井からパラパラと埃が舞い落ちてくる。


「けほっ。なんだよ、こんなボロいホテルで騒ぐなよな。……天井まで、薄くないよな?」


 壁の薄さは確認済み。まさか、天井まで建築基準関係の法に真っ向から喧嘩を売ってやしないだろうかと、元気に埃を振りまく天井を見上げながら、浩介は僅かに不安そうな表情になった。


 まさか、上階の人達が激しく愛し合っていて、そのあまりの激しさに天井が抜けて落ちて、浩介とご対面――なんてことになるんじゃあ……と、浩介は、これまた知り合いに聞かれたら赤面ものの妄想をしつつ、何故か胸中に湧き上がる嫌な予感と、頭に降りかかった埃を払うべく、犬のようにぶるぶると頭を振る。


 刹那、パンッパンッパンッと、聞き慣れた炸裂音が浩介の鼓膜を叩いた。


「え、えぇ? ちょっ、いまの銃声か? 愛し合うにしては、激しすぎだろ!?」


 ギョッとしたように再び天井を見上げた浩介。その間も、銃声は絶え間なく続いている。どう考えても、上階の客が、何者かと激しい銃撃戦を繰り広げている。しかも、パパパパパッという連続した炸裂音まで響いていることからすれば、どちらかは、あるいは双方が、マシンガン的な装備までぶっ込んできているらしい。


「ひ、昼間にカーチェイスを見たばかりだぞ? 外国、どんだけ物騒なんだよぉ。それとも日本が平穏すぎるだけなのか!?」


 天井を貫いて弾丸が降ってきてはかなわないと、浩介は身を小さくしながらバスルームから出ていく。そして、念のため、自分の部屋がある階は大丈夫なのか様子を見るべく、廊下側の扉をそっと開いた。僅かに顔を覗かせて廊下の左右に視線を走らせるが、取り敢えず、廊下には誰もいないようだ。


 浩介は、「こんな銃撃戦をするような奴がいるホテルに、これ以上いられるか!」と、変なフラグを立てつつ逃げ出す決意をする。


 が、その前に、窓の方がカッと強烈すぎる閃光で満たされた。どうやら、上階の客がフラッシュバンの類でも使ったらしい。その直後、


「グラント博士っ、掴まって! 飛びます!」

「ほ、本当にやるの!? や、待って、待ってってばぁあああああ~~~」


 そんな大声と悲鳴が窓の方から小さく響いてきたかと思えば、直後、浩介の部屋の窓にパンッパンッパンッと幾つもの穴が開いて蜘蛛の巣状にひび割れ、かと思った次の瞬間には、ガシャァアアンッという粉砕音と共に窓ガラスが内側へと吹き飛んできた。


――ブラックスーツ姿の女性と、その女性に抱えられた金髪サイドテールの女の子と共に。


「怪我はありませんか、グラント博士?」

「うぅ、大丈夫よ、ヴァネッサ。でも、寿命は縮んだわ」


 ブラックスーツを着た背の高い女性――国家保安局のエージェントであるヴァネッサ=パラディが、金髪サイドテールの白衣を着た女の子――エミリー=グラントを助け起こした。


 エミリーが蒼褪めた顔をしながら頭をふるふると振るのを横目に、ヴァネッサは手に持ったオートマチック銃のマガジンを手早く交換しつつ、出入口へと視線を向ける。


「急ぎましょう、グラント博士。直ぐに包囲されますよ」

「ええ、分かってる。それにしても、下の部屋に誰もいなくて(・・・・・・)良かったわね」

「はい。彼等のやり方を考えると、一般人を巻き込むことも辞さないでしょうから……」


 二人は上の階からベッドのシーツを即席のロープ代わりにして階下に飛び降りるという割と無茶な方法で降りてきたのだが、その階下の部屋に誰もいなかった(・・・・・・・)ことにホッと胸を撫で下ろした。


 昼間のカーチェイスでも、そしてそれ以前の襲撃でも、エミリー達の追手は徐々に手段を選ばなくなってきている。もし、公共の場所ではない、古びたホテルの一室などという目立たない場所に一般人がいれば、連中は確実に気にせず排除したことだろう。


(……いや、まぁ、毎度のことなんで、別にいいんだけど。おもいっきり視界に入ってるからな? 別に隠形なんてしてないからな?)


 突然の事態に、部屋の扉を半開きにしながら硬直していた影の薄いどこかの誰かさんが頬を引き攣らせて愚痴を零す。そして、いっそ、この厄介事の匂いをプンプンとさせている二人の女性が気がついていないのをいいことに、さくっと逃亡を図るべきかと思った。


 しかし、浩介の荷物――大した物は入っていないとは言え、財布やパスポートは置いていけない。


 それに、


(……あの二人、昼間のカーチェイスさんじゃねぇの?)


 そう、浩介は覚えていた。華麗なる空中サンドイッチキャッチとジンジャーエールキャッチを目撃して、カーチェイスの真っ只中にもかかわらずポカ~ンと間抜け面を晒していた二人のことを。


 厄介事の匂いはプンプンするし、一人は明らかに堅気の人間ではないし、もう一人は、浩介と同い年くらいなのに何故かくたびれた白衣を着ているが、それでも、浩介は何となく必死な様子の二人を気にしてしまっていた。


 それは、あるいは銃撃戦なんてアクション映画バリバリのとんでも事態に直面していながら、二人が無関係の人間を巻き込まなかったことに安堵している姿を見たからというのもあるかもしれない。


(だが、俺は流されない。まるで何かの強制力でも働いているみたいな偶然でも、偶然は偶然だ。なんか良い人っぽい二人だし、美人だけど、美人だけど! ラナという恋人のいるリア充な俺は靡かない! 明後日からは塾の夏期講習もあるんだ。というわけで、俺は家に帰るぞ!)


 そんなことを心の中で宣言しながら、抜き足、差し足、そろ~りそろ~りと歩きながら部屋の中に戻る浩介。別に、トータスにいたころのハジメのように、関係のないものは切り捨てる非情の価値観を持っているわけではない。


 ただ、地球における浩介は、単独で何百年という歴史を持つ秘密結社の本部を壊滅させられる超常レベルの猛者だ。その力を以ってすれば大抵のことができてしまう。そして、世界には、そこかしこに困っている人、助けを求めている人がいるわけで、浩介のようにあちこち飛び回っていれば、否応なく、〝頻繁に〟というほど目に付いてしまう。


 その全てに、〝困っているから〟という理由だけで、感情だけで動いてしまえば、もう収拾がつかない。自分の夢を追いかけるなんて二の次、三の次になってしまう。


 何より、浩介はハジメのようにほとんど万能というほどの力を持っているわけでもない。加えて、「自分に万能を」と、ハジメにアーティファクトを要求するような、他力本願の価値観も持ち合わせてはいない。


 見て見ぬふりをして後味の悪い想いをすることも、忸怩たる想いを抱くことも今まで何度かあったが、それでも、何を優先するべきか、どこで線引きをするか……浩介は、異世界での日々と、自分達を導いた魔王の在り方と、そしてラナやハウリアの家族と過ごした時間の中で、その重要性を心に刻んでいるのだ。


 そうして、浩介がエミリーやヴァネッサとは関わらないと決めて、ちょうど警戒しながら出入口の方――つまり、浩介の方へやってきたエミリーとヴァネッサとすれ違う、というそのとき、まるで浩介のその決断を嘲笑うかのような事態が巻き起こる。


「ヴァネッサぁああああっ!!!」

「ッ!?」


 ヴァネッサに放たれる怒声。その出所は、たった今、ヴァネッサとエミリーが飛び込んできた風通しのいい窓だ。見れば、ヴァネッサと同じようにロープ代わりのシーツを片手に巻き付けたまま、遠心力を利用して部屋の中に飛び込もうとする男の姿があった。


 ヴァネッサが反射的に銃口を向け、男を撃とうとする。が、男のもう片方の手に握られた拳銃の銃口が、自分ではなくエミリーの方へ向いているのを見て、咄嗟に横っ飛びしながらエミリーを押し倒した。


 男は、そんなヴァネッサの反応にニヤッと笑うと、結局引き金を引くことなくそのまま身軽に部屋の中へ飛び込み、前転の要領で受け身を取りながら流れるような挙動で、銃口をピタリと、顔を上げた直後のヴァネッサへと突きつける。


「……チッ。この状況でも、お前の方が速いなんてな。相変わらず、技術だけは(・・・)一流だ」


 舌打ちと共に、男がチラリと視線を自分の胸元へ落とす。そこには、ヴァネッサの銃が静かに添えられていた。


「〝だけ〟とは随分な言い様ですね、キンバリー。あなたとは違って、仲間を裏切らない誠実さも、私は持ち合わせているつもりですよ?」

「ハッ。そういうのはな、〝誠実〟というんじゃない。〝甘い〟というんだよ。俺が嬢ちゃんを撃てないと分かっていて、それでも庇っちまった今みたいに、な」


 今にも唾を吐きそうな口調で、ヴァネッサをそう扱き下ろすキンバリーと呼ばれた男。ブラウンの短髪に、スーツ越しでも分かる引き締まった体。猛禽類のような瞳と、皮肉げに吊り上がった口元。客観的に見れば、俳優でも通じそうな、ワイルド系の整った容姿。


 その口ぶりから、ヴァネッサとキンバリーが互いに知り合い、否、同僚であることが分かる。同時に、エミリーとヴァネッサの追手であるらしいキンバリーが、ヴァネッサを裏切ったという不穏な背景も見えてくる。


(ちょっとぉ! 次から次へと、なんなんだよぉ! 映画かっ、ここは全米が興奮したアクション映画の中かっ! 銃を突きつけ合いながら、軽口を叩き合うとか狙ってんのかよ! ちょっとカッコイイじゃねぇか!)


 互いに銃口を突きつけ合いながら、ゆっくりと立ち上がったヴァネッサとキンバリー。そのちょうど中間辺りで、口には出さないが激しくツッコミを入れる影の薄い人。普通に二人の視界の中には入っているはずなのだが……


「もう諦めろ、ヴァネッサ。博士を渡せ。お前も俺と来い。一生遊んで暮らしても、まだお釣りがくるような大金が手に入るんだぞ? こんなところで鉛玉ぶち込まれるより、ずっといいだろう?」

「そんな理由で、チームの皆を殺したのですか? たかだか金程度の理由で? 私が、そんな低俗な理由如きで靡くわけがないでしょう。私は、私の任務を果たします。博士に手は出させない」


 キンバリーが苛立ったように再び舌打ちをした。ヴァネッサの後ろでは、緊張に顔を強張らせていたエミリーが、泣きそうな表情でヴァネッサに視線を向ける。


「うはっ、この人かっけぇなぁ……。これが映画の撮影なら、間違いなく主人公だよ、うん」


 どこかの誰かが思わずといった様子で感想を漏らす。


 キンバリーが、エミリーにチラリと視線を向けながら嘲るような口調で言葉を続けた。


「任務、ね。ハッ、そんなものが、まだ有効だと本気で思ってるのか?」

「……どういう意味です?」

「さぁ? どういう意味だろうな? 本部に戻ってみれば分かるんじゃないか?」

「まさか……」


 一連の状況でも表情の乏しかったヴァネッサが、ここにきて僅かに目を見開いた。キンバリーの言葉から、あるいは既に、孤立無援状態に陥っている可能性が出てきたのだ。今の状況を打開するだけでも絶望的だというのに、後ろ盾を失っては本当にチェック(王手)をかけられたも同然になってしまう。


 キンバリーの言葉は真実か? 誰が味方で、誰が敵か? 信頼できるのは誰か? 


 ヴァネッサが乏しい表情に反して、内面では凄まじく思考を巡らせていると、タイムリミットだとでもいうように、廊下からドタドタと足音が響いて来た。キンバリーが足止めしている間に、階段を使って他の追手達がやってきたのだ。


「っ」

「もう終わりだ、ヴァネッサ。分かってるぞ? 普段のお前なら、こんな無駄話に付き合わず、速攻で俺を制圧しようとする。そうしないのは、どっか怪我してんだろう? 研究所での奇襲――対処しきれたわけじゃなかったようだな。昼間の運転でも、らしくないミスを連発してたしな?」


 キンバリーがヴァネッサの全身に素早く視線を巡らし、「脇腹か?」と嗤いながら言う。ヴァネッサは何の反応もしなかったが、代わりにエミリーが悲痛そうな表情で、それが真実であると暴露してしまった。


「あぁ、それで昼間、事故ってたのか。単に運転が下手な人ってわけじゃなかったんだなぁ」


 緊迫する状況のなか、いそいそ、こそこそと荷物を纏める影の薄い誰かさんが、小さくそんなことを呟く。流石に、誰か気がついて……


「それでも引き金を引かないのは、その手負いの私にすら必ず勝てるとは思えないから、ですか?」

「……慎重だと言ってほしいね。もうすぐチェックメイトをかけられるのに、わざわざ危険を冒す必要はない」

「いいえ、あなたのそれは〝慎重〟というのではなく、〝臆病〟というのです」


 先程の意趣返しか。見事な言葉のカウンターを喰らったキンバリーは、鼻白んだように目を細めた。「なかなか秀逸な返しだな。いいぞ、もっとやれ! 凹まされろ、イケメン!」と小さな声でヴァネッサを応援する言葉とキンバリーを呪う言葉が響いたが、普通に右耳から左耳へ素通りしたようだ。


 その直後、ドタドタと武装した男が六人ほど、部屋の中に雪崩れ込んできた。ヴァネッサが眉をしかめ、エミリーが蒼白になりながらヴァネッサに寄り添い、キンバリーが愉悦たっぷりの表情となり、影の薄い少年はいつの間にか荷物を担いだ状態で扉の近くからバツの悪そうな表情で振り返っている。


「さて、これで無意味な逃亡劇も終幕だ。悪いが、もう俺につくかどうかは聞いてやらない。お前はここで殺すし、嬢ちゃんは連れていく。最後のチャンスをふいにしたな。馬鹿な奴だ」

「ヴァネッサぁ!」

「ッ、博士っ」


 キンバリーが目で合図を送ると、革ジャンを着た体格のいい男がエミリーの腕を掴んでヴァネッサから引き離す。歯噛みするヴァネッサは、覚悟を決めたように一度深呼吸すると、


「グラント博士、申し訳ない。私はあなたを守り切れなかったようです。ですが、手札が尽きたわけじゃない。どうか、諦めないで下さい」


 そう言って、淡く微笑みながらキンバリーから完全に視線を外し、無防備にもエミリーへと振り返った。さりげなくポケットから何かを滑り出しながら――


「お前と、いったい何度チームを組んだと思ってる?」

「ッ、ぐっ」


 刹那、一発の銃声と同時に、キンバリーの蹴りがヴァネッサの脇腹へと突き刺さった。銃声はヴァネッサのもの。エミリーに注意を逸らしたと見せかけて、キンバリーに発砲しつつ、最後のフラッシュバンを使おうとしたのだ。


 だが、それを読んでいたらしいキンバリーが、突きつけていた銃でヴァネッサの銃を跳ね上げ、同時に負傷している脇腹へ強烈な蹴りを放った。


 激痛に膝を突いたヴァネッサの脇腹が赤い染みで滲んでいく。傍にはコロンと、ピンを抜けなかった小型のフラッシュバンが転がる。脂汗を流しながら、それでも銃口をキンバリーに向けようとして、再びその腕を蹴りつけられて銃を手放してしまった。


 そして、キンバリーの銃口が、今度こそチェックメイトを示すように、ヴァネッサの額にゴリッと押し付けられる。


「油断も隙もねぇ。そういうところは、敬意を表するぜ」

「……」


 もはや、何の感情も宿っていない眼差しでヴァネッサを見下ろすキンバリー。エミリーが羽交い絞めにされながら必死に制止の声を上げるが、キンバリーは見向きもしない。見向きもせず、チェックメイトをかけられていながら、その切れ長の瞳に絶望を映さないヴァネッサと睨み合う。


 そうして、一瞬、不快げに目を細めると、その引き金にかかる指を引き絞った。トリガーの遊びがなくなる。キチリと、内部機構の作動音が鳴る。


「止めてぇ! ヴァネッサ! 逃げてっ!」


 エミリーの絶叫が響き渡る。何があっても、その言葉のままに自分を守ってくれた女性が、目の前で頭を吹き飛ばされようとしている。もう、幾人もの大切な人を亡くしたというのに、運命は、まだ自分の目の前に悲劇を晒そうというのか。ギシリと、エミリーの心が軋む。


「じゃあな、ヴァネッサ」

「地獄に落ちなさい、ブ男」


 裏切り者と、少女の騎士ナイトの、最後の言葉が交わされる。


 誰か、誰でもいい。誰でもいいから、無表情だけど、不愛想だけど、とても気のいい、誠実なこの女性を救ってください。この人が、私を救ってくれたように、彼女に救いをっ!


 エミリーが絶叫した。救いを求めて。世界のどこかにきっとあるはずの、奇跡に届けと。


「誰かっ、助けてーーーーッ!!」

「あぁ、もうっ。そういうこと言うなよぉ!」


 刹那、一発の銃声が轟いた。人の命を容易く散らす小さな死の具現は、しかし、部屋を赤く染め上げはしない。


 パラリと、天井から木屑が落ちた。


「へ?」

「は?」

「な、なんなの……」


 ヴァネッサが怜悧な美人らしくない間の抜けた声を漏らし、キンバリーが現状を理解できていないように呆けた声をあげ、エミリーが思わずと言った様子で疑問を零す。エミリーを拘束していた男も、他の男達も、呆然としたまま、この部屋に突然現れた異常に目を点にする。


「はぁ、やっちまった。でも、ここで応えない男は、ていうか人間は、ダメだよなぁ」

「ッ、お、お前っ。いったい、どこから――」


 キンバリーが一歩後退る。だが、それ以上は下がれなかった。何故なら、その場の誰もが注目する中、突然現れた彼――浩介が、キンバリーの銃を持つ腕を掴んで天井に向けさせていたからだ。


 いったいどこから、というキンバリーの動揺をあらわにした言葉に、浩介は苦笑いする。


「どこからも何も、ここ、俺の部屋だから。最初から、ここにいたから。人の部屋で、勝手にハリウッドとか勘弁してくれます?」

「チッ、隠れてたのかっ」


 キンバリーが浩介の腕を振り払おうとするが、見た目、まだ青年にも達していなさそうな日本人の少年にもかかわらず、鍛えたキンバリーの腕は万力に締め上げられているかのようにぎっちりと拘束され微動だにしない。


 ハッと我に返った他の男達が、慌てて浩介に銃口を向けるが、その時にはするりとキンバリーの後ろに移動して盾にしてしまう。それで、引き金を引くのを躊躇ってしまった。


 その隙に、手首を捻って後手に拘束し直した浩介に、キンバリーが手首の痛みで顔をしかめながら誰何の声をあげる。


「お前っ、何者だ! 今の動き……一般人じゃないな!?」

「いやいや、俺はどこにでもいるありふれた学生で――」


 浩介が、取り敢えずキンバリーを人質に取りつつ、視線でヴァネッサにエミリーを連れて早くとんずらしてくれと促す。


 しかし、当のヴァネッサは、浩介の視線を受けた直後、何故か無表情を崩して安堵を浮かべた。そして、浩介の言葉を遮って、こんなことを言い出した。


「ふっ。どうやら間に合ったようですね、ミスターK」


 まるで、最初から助けが入ることが分かっていたかのような口ぶり。そういえば、先程、手札はまだ尽きていない的なことを口にしていたが、しかし、それが浩介であるはずもない。浩介がここにいるのは偶然であるし、彼女が浩介の存在を、いろんな意味で認知していたはずもないからだ。


 何故か、イニシャルだけは被っているという嫌な偶然があるが……


「え? いやいや、それ絶対に人違い――」

「なにっ!? ミスターK、だと!? お前があの!?」


 再び浩介の言葉が遮られた。何故か、びっくり仰天しているキンバリーによって。


「ちょっと待て! 絶対にお前等勘違いしてるぞ! 確かに、俺のイニシャルはKだけど――」

「やっぱり、ミスターKなのか!? 道理で俺が不意を突かれるわけだ……。こんな気配の殺し方、見たこともない。くそっ、ヴァネッサ。逃亡中に、どこかに連絡を取っているのは掴んでいたが、まさか、こんな助っ人を引き込んでいたとはなっ」


 止まらない勘違い。浩介の言葉は、その存在感と同じようにあっさりスルーされた。「というか、ミスターKって誰だよ!?」と内心で、予想外の展開を見せる現状に絶叫する。


「決して姿は見せないフリーの殺し屋……。報酬次第でどんな殺人も引き受ける。正直、保安局のブラックリストに載っている相手に助力を依頼するなど、最後まで迷いましたよ。ですが、グラント博士を守るため、背に腹は代えられなかったのです。……もっとも、ミスターKが日本人の、こんなに若い少年だったとは思わなかったので驚いてしまいましたが」


 浩介は思った。説明、ありがとう、と。


 どうやら、ミスターKとやらは、政府のブラックリストに記載されている殺し屋さんらしい。


 この状況で、決してエミリーを見放そうとしないヴァネッサが、苦渋の選択とはいえ頼るくらいなのだ。おそらく、報酬次第でどんな殺人もするということの他、依頼人は絶対に裏切らないとか、依頼は必ず完遂するとか、ブラックリスト記載の人物の中でも、比較的、依頼しやすい相手だったのではないだろうか。


「おい、自分達の言葉の違和感に気がついてくれよ。姿を見せないって、普通に見せてんじゃん。こんな若い日本人って、そんな日本の少年が、どこの組織かは知らないけどブラックリストに載るような殺し屋のわけな――」

「あ、思い出した! 彼、昼間にヴァネッサが突っ込んだ喫茶店で、サンドイッチと飲み物を空中キャッチしていた人よ!」

「昼間から、だと? くそ、逃走ルートまで先読みして、俺達を監視していたのか! 追撃しているつもりが、実は俺達の方がそうされていたとはな」


 加速する勘違い。エミリーちゃん、なんてタイミングで絶妙な合いの手を入れるのか。歯噛みするキンバリーに、浩介の頬が盛大に引き攣る。


「あの、お願いなんで俺の話を――」

「キンバリー。ミスターKには、グラント博士の護衛中における襲撃者への殺人をお願いしています。その意味は、分かりますね? ここ二、三年くらいで台頭してきた若い殺し屋とはいえ、彼の技量がとてつもないことは既に証明されている。冷酷非情な彼を前に、賭けに出るのはオススメできませんが?」


 浩介は、冷酷非情な若い殺し屋さん……。浩介の目尻にうっすらと光るものが溜り始めた。キンバリーを拘束している手が内心をあらわすようにぷるぷると震える。


 それを見て、武装した男達が「くっ、やばいぞ。あいつ、殺意の衝動を必死に抑えてやがる」などと戦慄の表情を浮かべて囁き合っている。キンバリーも、伝わる振動に、「くっ、なんてクレイジーな奴だっ」と焦燥を浮かべ始めた。


「ヴァネッサ。お前と俺の何が違う? 目的のために、こんな外道を利用するなんざ、正気じゃない。結局、目的のためなら、なんだってするんだろう?」

「ちょっ、外道ってしつれ――」

「確かに、そうかもしれません。ですが、通すべき筋くらいは弁えているつもりです。もし、彼が本当に意味で外道であり、その殺意がグラント博士や何の関係もない人々へと向くのなら、その時は私が身命を賭して止めてみせます」

「あのさ、ナチュラルに俺を外道外道って連呼するのはやめ――」

「ヴァネッサを、あんたなんかと一緒にしないで! あんたなんて、所詮はお金に目がくらんだだけの浅ましい小悪党じゃない! そこの殺人鬼、さんの方が、まだマシだわ!」

「おいこら、俺がいつまでも涙目だと思うなよ。〝さん〟をつければ、殺人鬼呼ばわりしていいとおも――」

「ふん、金のありがた味ってのを知らない子供らしい言葉だな。だが、忘れるなよ? あの悪魔の薬を生み出したのは、他ならない嬢ちゃんだってことをな。外道というなら、お前さんの方が――」


 どこかの誰かさんを華麗にスルーして、キンバリーの言葉が、見えない刃となってエミリーを傷つけようとする。エミリーの表情が、痛みと罪悪感で歪み、無意識にその手が胸元をギュッと掴んだ……と、そのとき、不意に、キンバリーの言葉が止まり、代わりに「いだぁっ」と悲鳴を上げた。


 それで、ようやく全員が気がつく。キンバリーの背後で涙目になりながら、いつの間にか手に持っていたキラキラと輝く物体を掲げる浩介の姿を。


「あんたらの事情は知らないし? 俺は部外者だし? だから、極力両方とも傷つけないで、二人を逃がそうと思ってたのに? なんか普通に置いてけぼりにされてるし? いや、別にいいんだけどさ。慣れてるし。全然、気にしてないし。平気だし。でも、コミュニケーションって大事だと思うわけで、無視はダメっていうかさ、うん」

「ミ、ミスターK?」

「っ、落ち着いてくれ、ミスターK。別に、あんたを蔑ろにしていたわけじゃ――」


 なんとなくやばそうな雰囲気を感じて、ヴァネッサが言葉を詰まらせ、キンバリーは冷や汗を流しながら言葉を紡ぐ。その視線は、エミリーや武装した男達も同じく、浩介が内心の感情を示すようにぷるぷると震えながら掲げているものに注がれている。


 緊張が走る中、ようやく注目を得た浩介は、ちょっぴり嬉しそうに口元を綻ばせた。それに、キンバリー達も僅かに安堵の表情を見せ――


「というわけで、喰らえっ! 火サスが生み出した狂気の凶器――灰皿アタック!」

「なにがというわけって、まっ、まてっ――ごへぇっ!?」


 キラキラした物体――ボロいホテルのくせに何故か部屋に置いてあったやたらと重いガラス製の灰皿を、浩介は綻んだ表情のままキンバリーの脳天に振り下ろした。


 ゴチンッという痛そうな音が響くと同時に、キンバリーの眼前に星が散る。キンバリーは、そのままくてぇ~と脱力して床へとへたり込んだ。白目を剥いていることから、どうやらみんな大好きな火曜日の凶器はしっかりと役目を果たしたらしい。


 武装した男達の視線が釣られてキンバリーへと向かい、直後、今度こそ盾を失くした闖入者を蜂の巣にしてやると銃口を向け直した。


 が、そんな彼等の目線の高さに、軽やかに舞う小型の物体。


「あんたらっ、逃げるぞぉ!」


 浩介がそう呼びかけた瞬間、宙の物体はカッと爆ぜた。網膜を焼く強烈な閃光が部屋の中を蹂躙する。そう、それは閃光手榴弾の輝き。浩介が、さりげなく拾っておいたそれを、キンバリーを殴打したのと同時に放り投げたのだ。


 武装した男達が悲鳴を上げ「またかっ」と悪態を吐きながら目を庇う中、ゴインッと再び痛そうな音と「ぶべらっ」という短い悲鳴が上がった。浩介が火曜日の凶器で、エミリーの近くにいる男達を殴り飛ばしたのだ。


「ミスターK! グラント博士をっ」

「はいはい、分かってるよ。それと、ミスターKって言うな」

「ふわっ、だ、誰!? ミスターK!?」

「……」


 光が室内を蹂躙する中、二度目は打ち合わせになかったために目をやられてしまったエミリーは、いきなり視界を奪われたことで怯んだようで、しゃがみながら両手で頭をかかえて小さくなっていた。何だか、訳もなくカリスマ性を感じさせる防御姿勢だ。


 そんな彼女を、浩介が悪態を吐きながら肩に担ぐ。本当は、一度目の閃光を凌いだように、自分の掛け声で視力を守った二人が逃げ出した隙に、さっさと行方をくらませようと思っていたのだが、どうやらそう上手くはいかなかったらしい。


 もっとも、ヴァネッサは、視力を奪われた点は変わらないが、室内の全ての人間の位置取りと距離を歩数で正確に記憶していたらしく、視界を潰されながらも迅速に動いている辺り、流石というほかない。


 武装した男達は、見えないながらも咄嗟に声がした方へ銃口を向けるが、エミリーは生きたまま確保しなければ意味がない。故に、引き金を引けず右往左往するしかなかった。キンバリーのようにすぐさま上階から追ってこられなかったことや、簡単に二度も視界を潰されるあたり、彼等だけはエージェントと名乗れるレベルにはないようだ。


「外へ。ワンブロック向こうの通りに、車があります」

「了解。っていうか、よく走れるなぁ。まだ見えてないんじゃないの?」

「あ、あの、ミスターKぇっ。肩にっ、かちゅぐのはっ、やめてぇくれないかしらぁ!? お、おにゃかがっ、へぐっ」

「少しは見えていますし、だいたいの歩数は把握しています。誤った場合は先導をお願いします」

「分かったよ」

「だ、だ、だからっ、おにゃかがっ、へぐぅ。さっき、おトイレにっ、いきそびれてぇっ。まずいからぁ」


 エミリーのお腹がピンチっぽいが、敵と遭遇した場合、ほとんど見えていない上に銃を持っていないヴァネッサをあまり戦力に数えたくない浩介としては、片手を空けておく必要がある。なので、いつずり落ちるか分からないおんぶや、両手が塞がる抱っこなどできないのだ。


 だから、おトイレにいく間際に襲撃にあって、膀胱さんが悲鳴を上げているのだとしても、エミリーの要望を聞いてあげるわけにはいかない。決して、自分の言葉をスルーしたり、絶妙なタイミングで昼間の件を持ち出したエミリーに、ささやかな意趣返しをしているわけではない。ないったらないのだ。


「むっ、やっぱりいたか。くらえっ、必殺、火曜日の突発的一撃ぃ!」


 エミリーちゃんが必死に己の尊厳を守る戦いをしている中、階段に通じる扉からあらわれた武装した男に、浩介は火曜日の凶器を投げつける。まるでブーメランのように見事な回転を見せながら飛翔した火曜――灰皿は、顔を覗かせた直後の男の鼻先へ、見事にクリーンヒットした。


 盛大に鼻血を吹き出しぶっ倒れる男の隣に、ドチャっと落ちる灰皿。既に、幾人もの血を吸って赤く染まっている。そのうち妖刀ならぬ妖皿にならないか心配だ。


 ヴァネッサが、さりげなく倒れていた男の股間を踏みつけて階段へと差し掛かる。一瞬、視力が低下している彼女へ注意を飛ばそうかと思った浩介だが、ヴァネッサは本当に見えていないのか疑わしくなるほどの軽快さで階段を下りていく。


「ミ、ミスターK? なんとなく察したわ。お願いだから降ろし――」

「ミスターKなんていません」

「ダ、ダメ! 階段はダメだからぁ! お願いにゃぁああああああっ」


 浩介は一段飛ばしで階段を駆け降りた。それはもう軽快に、ステップを踏むが如く、颯爽とヴァネッサを追いかけていく。あくまで、ヴァネッサに合わせて降りているだけで、決して他意などない。


 たとえ、「やめれぇっ~」とか、「も、もう許してぇ~」とか、「おにゃか、トントンしちゃらめぇっ~」とか、「でちゃうぅうう、もうでちゃうぅううっ」とか、「ミスターKェ、あとで殺すぅうううう」とか、「あ、やっぱりぃうそですぅ! ごめんなさいぃいいっ」とか聞こえていても、そんなエミリーちゃんの悲痛な声を聞いてちょっとときめいてしまっていても、他意などないったらないのだ!


「グラント博士、少し声量を落としてください。まだ敵がいるかもしれません」

「こ、こにょ状況で、言うことがそれぇ!?」

「大丈夫です。状況が状況ですから……恥ずかしくなんてありませんよ」

「いま、分かった! わたしにぃ、味方はいないのよぉ~~~」


 エミリーちゃんの悲痛な声は止まらない。女の子の尊厳がかかっているのだ。切迫した状況とはいえ、場慣れしていないエミリーにとってはいろんな意味で瀬戸際である。


 流石に、肩に担いだまま本当にやらかされては、浩介もただでは済まないので、そろそろ脇抱えにチェンジしてあげようとする。浩介は、いたってノーマルな人だ。エミリーが美少女とはいえ、彼女の〝ピー〟をかけられて喜ぶような性癖は全く持ち合わせていない。


 しかし、浩介に他意があったか否かにかかわりなく、その決断をするのは少々遅かったようである。


「ん? ちょっと白衣っ娘さん? 離してくれない? 脇に抱えてあげるから」

「む、むり……動いたら……出ちゃう」

「まてまてまて、もう振動なんてないだろう? ちゃんとソフトに階段降りてるんだし」

「むり……ご、ごめんなさい、お父さん、お母さん……エミリーは……悪い子です」


 ぎゅぅううううっと浩介にしがみついたまま、微動だにしないエミリー。浩介からは見えないが、その眼は虚ろで、口元には乾いた笑みが浮かんでいる。


 いきなり両親に懺悔を始めたエミリーに、浩介は「やっべ、やりすぎた!?」と焦りの表情を浮かべた。途中から、振動を伝えないように技能すら行使していたのだが、エミリーは最初から割と限界だったようだ。


「が、がんばれ白衣っ娘! 諦めるなっ、諦めたら、そこで尊厳終了だぞ!」

「……(ぷるぷる)」

「もうしゃべるのも無理か!? ちょっとスーツの人! この子、マジ限界だから! ちょっと止まって! その辺の隅っこで――」

「そんな暇はありません。ミスターK。あなたも男なら、黙って受け止めてあげてください」

「あんた、なに言ってんの!? ええい、白衣っ娘! いま、降ろしてやるから――」

「――ぁ」

「ちょっ――」


 ボロいホテルで起きた深夜の逃走劇。


 見事に逃げ切った浩介達を、意識を取り戻したキンバリー達が追う。


 ……ツンとする水気の跡を辿りながら。




いつも読んで下さり有難うございます。

感想・意見・誤字脱字報告も有難うございます。


さて、前回のヒロイン属性当てクイズ、正解はもう分かりましたね?

正解は、


金髪サイドテール+白衣っ娘+勝気釣り目+お漏らし+カリスマガード(ただし、防御力ゼロ)


でした。どうでしたか? 想像通りだったでしょうか? 

楽しんでもらえたらな嬉しいです。


さて、一応の報告ですが、第3巻が発売となりました。

これも手に取って下さった方々(たぶん、特になろう読者さんの力)のおかげです。

番外編が酷い(笑)と、自他ともに認める内容ですが、楽しんでもらえれば嬉しいです。

これからもよろしくお願いします。


次回も、きっと土曜日の18時に更新します。

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― 新着の感想 ―
ミスターKって誰!遠藤じゃないと思いたい これから明かされるのかなあ
間に合わなかったよ………………………。
[一言] もう浩介の物語だけで別作品になってもいいほどにおもしろい
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