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悪評高き騎士、異国の王女と共に未来を切り開く  作者: 小笠原ゆか


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変わり果てた祖国 (フリーダ視点)

数日後、一行は鬼燈国を出発し、長い旅路を経て、ヴェリアスタ王国に入った。


「我が祖国は、一年でどのように変わっているかしらね」


フリーダが馬車の窓から景色を眺めながらそう呟くと、ジンフイ王子も外の風景に目を向けた。


フリーダの脳裏には、サディアス王子やユリア王妃のことが浮かんでいた。彼らの状況は、鬼燈国が潜ませている密偵からの報告で逐一知らされていた。


ヴェリアスタ王国は、アイヴァンとフリーダが去ってからの一年あまりの間に大きな変化を遂げていた。


サディアス王子はアイヴァンの功績を掠め取っていたことが公になり、最終的には謹慎という形で罪を償わせることになった。宮廷での権力を失った彼は、自らの過ちを認めることなく、苛立ちを周囲にぶつける日々を送っているらしい。


サディアス王子の側近たちも、アイヴァンに仕事を押し付けていたことの責任を問われた。彼らは官職を解かれ、宮廷から追放された。


運良く地方で職にありつけた者もいたが、大半は家から追われ、行方知れずになっている。消息が確認できる者たちは、かつての贅沢な生活から一転して厳しい環境で暮らしており、失意の中で過ごしているという。


ユリア王妃もまた、息子サディアス王子の行いを黙認していたことが明るみに出て、その責任を問われることになった。彼女の立場は一気に悪化し、宮廷内では針の筵のような日々を送ることとなった。


更に複数の貴族との不義密通が発覚し、王妃自身が元凶となったスキャンダルが広まった。これにより、彼女は幽閉されることになった。相手の貴族たちも厳しい処罰を受け、一部は隠居に追い込まれた。これらの貴族たちは、最終的には毒杯を飲むことになるだろうと言われている。


ユリア王妃自身も、息子の行いと自身の不祥事の責任を取らされる形で、同様の運命を辿ることが予想されている。




王宮に入ると、フリーダとジンフイ王子はすぐに国王に謁見することになった。

国王は玉座の前に立ち、彼らを待ち構えていた。


「よく戻って来てくれた、フリーダ嬢。この国にはそなたの助けが必要だ」


国王はフリーダを温かく迎え入れた。


フリーダはサディアス王子やユリア王妃の行いを嫌悪していたが、この国王に対しては複雑な思いを抱いていた。彼は凡庸で騙されやすいが、その善性や温かさ故に完全に嫌うことは出来ない人物であった。しかし、だからこそ彼のせいで人知れぬところで生まれた悲劇もあっただろう。


だが、今は全てを飲み込んで、フリーダは微笑みながら応じる。


「お久しぶりです、陛下。再び御役に立てることを光栄に思います」


次に国王はジンフイ王子に目を向け、初めて会うかのように丁寧に挨拶した。


「我が国を立て直すために来てくれた、本当に感謝している。ジンフイ王子殿下。ようこそヴェリアスタへ」

「お招きいただき光栄です、陛下」


ジンフイ王子も人好きのする笑みを見せて一礼する。

彼が以前の親善訪問でリンレイ王女に扮していたことに、誰も気づいていないようだった。


ふと、フリーダはサディアス王子のことを思い出し、問いかけた。


「陛下、サディアス王子は御病気と伺いました。御加減はいかがでしょうか?」


その問いに国王の表情が一瞬険しくなり、少し間を置いて口を開いた。


「……サディアスは宮で療養している。今は症状は落ち着いているものの、面会は難しいだろう」

「そうですか……」

「療養が必要なため、王子の復帰の目処は立っていない。また、サディアスとそなたの婚約も白紙に戻る可能性が高い」


フリーダはその言葉を聞き、内心で喜びを感じたが、その感情を表に出さないように苦心した。悲しげな表情を演じつつ、深く一礼する。


「殿下の早い御快復を願っております」


国王は彼女の凛とした振る舞いに満足し、頷いた。フリーダは唾棄すべき男から解放される喜びを噛み締めながらも、冷静な表情を保ち続けた。

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