第十四話:筋肉による自己弁護
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三日後。貴族議会が開かれる、厳粛なる大広間は、重苦しい緊張感に、満ちておりました。
大理石の柱が立ち並ぶ、その、荘厳な空間。正面の玉座には、国王陛下が、どこか、退屈そうなご様子で、腰を下ろしておられる。
そして、その下には、我が国の行く末を左右する、大貴族たちが、ずらりと、顔を揃えておりました。
わたくしと、胃痛をこらえるように顔を歪めた父上、そして、今にも憤死しそうな兄様は、被告席に。
対する検事役の席には、今回の弾劾裁判を主導する、ライネスティア家の当主と、ヴァルシェード家の当主が、勝利を確信したかのような、嫌らしい笑みを浮かべて、座っておりました。
「――以上が、イザベラ・フォン・ツェルバルク嬢にかけられたる、罪状である」
ライネスティア家の当主が、ねっとりとした声で、告発状を読み上げる。
曰く、国王陛下の許可なく、軍を率いて、他国の領土に、侵入したこと。
曰く、その、常軌を逸した行動が、隣国との、友好関係を、著しく、損なわせたこと。
曰く、それらの行動は、国家に対する、明白な、反逆罪に、値する、と。
(まあ、面白い。実に、面白い茶番ですこと)
わたくしは、内心で、くすりと、笑いました。
この、筋肉のかけらもない、ひょろりとした男たちが、この、わたくしを、裁こうなどとは。
やがて、形式的な、証人尋問が、終わり。
ついに、議長が、わたくしに、弁論の機会を与えました。
「被告、イザベラ・フォン・ツェルバルク。前に」
わたくしは、静かに、立ち上がると、ゆっくりと、広間の、中央へと、進み出ました。
全ての視線が、わたくし、一人に、注がれる。父上と兄様の、祈るような、視線。敵対派閥の、嘲るような、視線。そして、国王陛下の、初めて、興味を引かれた、というような、視線。
わたくしは、その、全ての視線を、一身に浴びながら、高らかに、宣言いたしました。
「弁論は、不要ですわ」
その、一言に、議会が、ざわめく。
わたくしは、構わず、言葉を、続けました。その声は、静かでしたが、大広間の、隅々にまで、響き渡ります。
「言葉による、問答など、筋肉に対する、冒涜に、他なりませんことよ!」
わたくしは、そこで、一度、言葉を切ると、検事役の席の、背後に控える、一人の、大男を、指差しました。
ライネスティア家が誇る、騎士団長。その、鍛え上げられた肉体は、確かに、見事なものでしたわ。
「我がツェルバルク家の正義は、この、わたくしの肉体が、証明いたしますわ!」
わたくしは、そう言うと、自らの、しなやかな腕を、掲げてみせました。
「よって、ここに、要求いたします! わたくしと、そこの、ライネスティア家騎士団長殿との、『腕相撲』による、神明裁判を!」
その、あまりに、突拍子もない提案に。
今度こそ、大広間は、蜂の巣を、つついたような、大騒ぎとなりました。
怒号を上げる、ライネスティア家の当主。顔面蒼白で、倒れそうになっている、父上。そして、頭を抱え、天を仰ぐ、兄様。
ですが、わたくしは、ただ、まっすぐに、玉座に座る、国王陛下を、見つめておりました。
その、退屈そうな瞳の奥に、確かに、面白がるような、光が、灯ったのを、わたくしは、見逃しは、しませんでしたわ。
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