第十三話:王都凱旋と、議会の召喚状
白氷城を発ってから、幾日もの道程。
わたくしたち、ツェルバルク家の筋肉軍団が、ついに、王都の城門をくぐった時、出迎えたのは、民衆の、どよめきと、そして、畏怖に満ちた、静寂でした。
行き交う人々は、皆、足を止め、わたくしたちの、その、あまりに常軌を逸した行軍を、あんぐりと口を開けて、見つめております。
まあ、無理もありませんわ。わたくしの後ろに続く兵士たちは、もはや、ただの人間ではございません。一人一人が、歩く、彫刻。生ける、鋼。その、圧倒的な肉体美が、王都の軟弱な人々の度肝を抜いてしまったのでしょう。
ですが、その静寂は、長くは続きませんでした。
一人の、幼い少年が、わたくしたちの軍団を指差し、叫んだのです。
「す、すごい…! あの人たち、おっきい!」
その、純粋な、驚嘆の声が、引き金でした。
畏怖は、やがて、好奇心へと変わり、そして、熱狂へと、昇華されていきました。
「おい、見ろよ! あれが、北の国境を守る、ツェルバルクの兵士たちだ!」
「なんて、たくましいんだ…! 我が領の軍も、あれくらい、鍛え上げるべきだ!」
「イザベラ様だ! あの、御前試合で、ライネスティア家の騎士を、赤子のように捻り潰した、あの!」
民衆の熱狂は、波のように、王都の大通りを、駆け巡ります。
わたくしは、誇らしい気持ちで、その、賞賛の声を、一身に浴びておりました。
『ふふん。ええ、ええ。もっと、褒め称えなさいな。この、完璧な肉体を持つ、わたくしたちを!』
わたくしたちが、熱狂の中心を、パレードのように進んでおりますと。
その、群衆を、押し分けるようにして、一団の、荘重な鎧に身を包んだ、王宮の騎士たちが、現れました。
そして、その中心にいる、隊長らしき男が、わたくしの前に、恭しく、しかし、どこか、冷たい態度で、進み出たのです。
彼は、わたくしの前で、馬を止めると、一枚の、豪奢な封蝋が押された、羊皮紙を、掲げました。
「イザベラ・フォン・ツェルバルク嬢」
その、硬質な声が、周囲の熱狂を、切り裂きます。
「ライネスティア家、及び、ヴァルシェード家の名において、貴殿を、告発する」
「罪状は、許可なき軍事行動、及び、国家転覆を企てた、反逆罪に相当する」
「三日後、貴族議会において、弾劾裁判を行う。これは、その、召喚状である」
その言葉は、まるで、冷水を浴びせかけるように、民衆の熱狂を、一瞬で、凍りつかせました。
わたくしは、ただ、にこやかに、その、召喚状を、受け取りました。
(まあ!王都に、戻ってきて、早々、新たな、イベントの、始まりですのね!)
この、悪役令嬢イザベラ・フォン・ツェルバルクを、裁こうなどとは。
面白い。実に、面白いではありませんの。
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