第十二話:いざ、王都へ
出立の朝は、突き抜けるような、冬の蒼穹が広がっておりました。
白氷城の城門前には、わたくしと共に王都へ帰還する、我がツェルバルク家の兵士たちが、完璧な陣形を組んで、整列しております。
その光景は、まさに、圧巻の一言でしたわ。
彼らは、もはや、わたくしがこの城に来た時のような、ただの兵士ではございません。
厳しい鍛錬によって、無駄な脂肪は全て削ぎ落とされ、その代わりに、鋼のような筋肉が、鎧の下で、はち切れんばかりに、躍動している。あまりの筋肉の成長に、鎧が悲鳴を上げ、上半身の鎧を外して、その、見事な肉体美を、冬の冷気に晒している者さえおります。
わたくしが、城門に姿を現すと、その、筋肉の信徒たちが、一斉に、右腕を天に突き上げ、高らかに、叫びました。
「ハイル・マッスル!」
その、地鳴りのような雄叫びは、白氷城の尖塔を震わせ、静かに積もっていた雪を、はらはらと、舞い落とさせます。
城門の脇では、セレスティーナ様と、その家臣の方々が、わたくしたちを、見送ってくれておりました。
まあ、ご覧なさいな。
宰相らしき老人は、あんぐりと口を開け、その場に立ち尽くしている。騎士団長と思しき壮年の男性は、自軍の兵士と、わたくしの兵士とを、何度も、信じられないといった顔で、見比べている。
そして、セレスティーナ様。
彼女は、ただ、静かに、わたくしを、そして、わたくしが育て上げた、この、鋼の軍団を、見つめておりました。その、美しい月白色の瞳に浮かぶのは、感動か、畏敬か、あるいは、その両方か。
『ふふん。名残惜しいのも、分かりますわ。ですが、わたくしには、次のステージが待っているのです』
わたくしは、心の中で、そう、彼女に語りかけました。
その隣で、リリアが、わたくしが贈ったトレーニングメニューの羊皮紙を、まるで、聖典のように、胸に抱きしめている。ええ、ええ。あなたも、立派な戦士になるのですよ。
わたくしは、愛馬である、葦毛の軍馬、バルクホルン号に、ひらりと、跨りました。
そして、全軍に、高らかに、宣言いたします。
「聞け、我が筋肉の使徒たちよ!」
「我らの次なる舞台は、王都! 新たなクエストと、新たな筋肉が、わたくしたちを、待っていますわ!」
兵士たちが、うおおお、と、歓喜の咆哮で、応える。
「いざ、出陣ですわ!」
わたくしは、手綱を握りしめ、王都へと続く道を、見据えました。
こうして、わたくしの、白氷城での特別監視クエストは、完璧な形で、幕を閉じたのでございます。
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