表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【祝45000PV】転生悪役令嬢イザベラ、婚約破棄も魔法も筋肉で粉砕します!  作者: 月待ルフラン【第1回Nola原作大賞早期受賞】
第二章:悪役令嬢イザベラ、メインクエストも筋力で踏み潰しますわ!
77/118

第二十七話:嵐の前の、筋肉賛歌

 玉座の間を、わたくしは、一人、後にしました。

 あの、メイドの、魂の叫び。わたくしの、完璧だったはずのゲーム理論を、根底から揺るがした、予測不能なイベント。

 わたくしの頭の中は、混乱しておりました。


(ありえませんわ。NPCが、クエストの条件を、プレイヤーと交渉するなど。ましてや、その、あまりに生々しい感情データの奔流は、一体…?)


 このゲームは、わたくしの知る、どのゲームよりも、複雑で、そして、厄介なようですわね。

 ですが、約束は、約束。一日だけ、待つと、わたくしは、決めたのです。


 わたくしは、荒れ果てた白氷城の、中庭へと、足を踏み入れました。

 雪が、静かに、舞い落ちている。城の、あちこちからは、先の戦闘で傷ついた兵士たちの、うめき声が、聞こえてくる。誰もが、絶望的な状況に、ただ、打ちひしがれているようでした。


 彼らは、わたくしの姿に気づくと、びくりと、その身をこわばらせる。恐怖と、そして、わずかな、期待。彼らの、その、複雑な視線が、わたくしに、突き刺さりました。

 ですが、わたくしは、彼らに、一瞥もくれることはありませんでした。


 わたくしは、ただ、黙って、中庭の、中心へと進み出る。

 そして、その場に、両手をつくと、ゆっくりと、しかし、寸分の狂いもない、完璧なフォームで、腕立て伏せを、始めたのです。


 一回、二回、三回…。

 雪が、背中に、静かに、降り積もっていく。

 わたくしの、熱い呼気が、絶対零度の空気を、白く、染め上げていく。


 頭の中を、様々な、思考が、巡ります。

 あのメイドの、言葉。暴走する、セレスティーナ様の、苦しげな表情。そして、兄ヴォルフ様の、血に染まる、あの、最悪のビジョン。

 分からないことだらけ。不確定な、要素だらけ。

 ですが、一つだけ。この世界で、たった一つだけ、決して、わたくしを裏切らない、絶対的な、真実がある。


「――結局、最後に信じられるのは、己の筋肉だけですわ!」


 わたくしの口から、熱い、魂の言葉が、漏れ出しました。

 そうだ。迷った時、悩んだ時、わたくしが、立ち返るべき、原点は、常に、ここにある。

 この、鋼鉄の、肉体。この、灼熱の、魂。

 これさえあれば、わたくしは、どんな、理不尽なシナリオも、クソゲーも、ねじ伏せることができる。


 わたくしの、その、あまりに、場違いで、そして、あまりに、力強い姿。

 それを、絶望の淵にいた、白氷城の兵士たちは、ただ、呆然と、見つめておりました。

 自分たちの主君は、暴走し、敵は、すぐそこまで迫っている。援軍は、目の前で、なぜか、腕立て伏せをしている、この、赤い髪の悪魔だけ。

 その、絶望的な状況の中で。

 なぜか、彼らの心に、一つの、奇妙な、感情が、芽生え始めていたのです。


(ああ、このお方は…きっと、大丈夫だ)


 根拠など、ありません。ですが、その、圧倒的な、揺るぎない存在感が、彼らの、凍てついた心に、小さな、しかし、確かな、勇気の火を、灯し始めていたのです。


 わたくしは、ただ、黙々と、己の肉体と、対話する。

 来るべき、決戦の、その、瞬間のために。

 嵐の前の、静かな、筋肉賛歌が、雪降る、白氷城に、響き渡るのでした。

ご覧いただきありがとうございました。感想や評価、ブックマークで応援いただけますと幸いです。また、世界観を共有する作品もあるので、そちらもご覧いただけるとお楽しみいただけるかと存じます。HTMLリンクも貼ってあります。

次回は基本的に20時過ぎ、または不定期で公開予定です。

活動報告やX(旧Twitter)でも制作裏話を更新しています。(Xアカウント:@tukimatirefrain)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ