表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【祝45000PV】転生悪役令嬢イザベラ、婚約破棄も魔法も筋肉で粉砕します!  作者: 月待ルフラン【第1回Nola原作大賞早期受賞】
第二章:悪役令嬢イザベラ、メインクエストも筋力で踏み潰しますわ!
53/118

第三話:王子の筋肉は育ち盛り

「……九十八、九十九、百!結構ですわ!」


 わたくしの、張りのある声が大広間に響き渡ると同時に、エドワード王子は、ぜえぜえと荒い息をつきながら、その場にへたり込みました。その額には玉の汗が光り、完璧に整えられていたはずの金髪は、今は汗で肌に張り付いています。


 ですが、その瞳は、これまでに見たこともないほど、生き生きとした光を宿しておりました。

 わたくしは、満足げに頷くと、近くのテーブルから水の入ったグラスを取り、彼の前に差し出しました。


「お疲れ様でした、殿下。まずは水分補給を。筋肉を酷使した後は、経口補水液が最適ですが、今はないので水で我慢なさい」

「は、はあ…ありがとう…」


 王子は、震える手でグラスを受け取ると、一気にそれを飲み干しました。

 わたくしは、彼の前にしゃがみ込むと、トレーナーとしての厳しい目で、その肉体をチェックし始めます。


「どれ、本日のトレーニングの成果を見せていただきましょう」


 わたくしは、まず、彼の太腿を、指でぐっと押しました。

「ほう…短時間で、ここまで大腿四頭筋に張りが出るとは。素晴らしい素質ですわ」

 次に、力なく投げ出されていた腕を取り、その上腕二頭筋をむんずと掴みます。

「まだまだ脂肪が多いですが、その奥に、確かな芯の力を感じます。これは、良い筋肉に育ちますわよ」


 わたくしの、専門家としての的確な分析に、王子は、疲労困憊のはずなのに、ぱあっと、その顔を輝かせました。それは、これまで彼が令嬢たちに見せてきた、完璧な王子様の笑みとは違う、もっと、純粋な、少年のような笑顔でした。


「本当か、イザベラ嬢!私にも、君のような、強い肉体が…!」

「ええ。正しいトレーニングと、適切な栄養摂取、そして、何よりも、決して諦めない強い意志があれば、可能ですわ。見込みがありますわよ、殿下」


 わたくしのその言葉は、彼にとって、どんな愛の囁きよりも、甘く響いたのかもしれません。

 王子は、汗まみれの顔のまま、うっとりとした表情で、わたくしを見つめていました。


 その頃、大広間の貴族たちは、止まったワルツの音楽も忘れて、ただ、目の前の信じがたい光景について、ひそひそと囁き合っておりました。


「見ましたか、今の…?王子殿下が、あのツェルバルク嬢に、まるで子犬のように…」

「あれが、ツェルバルク家に伝わる、新たな求愛の儀式なのかしら…?」

「まさか…我が国の世継ぎが、筋肉で選ばれる時代が来るとでも…?」



二人の奇妙な関係は、その日の夜会で、最も熱いゴシップとして、瞬く間に王都の社交界を駆け巡ることになったのです。


 わたくしは、そんな周囲の混乱には一切気づかず、立ち上がると、王子に最後の助言を授けました。

「よろしいですか、殿下。筋肉のゴールデンタイムは、トレーニング後30分以内。今すぐ、厨房に命じて、高タンパクな食事を摂取なさい。ささみとブロッコリーが最適解ですわ」


 そう言い残し、わたくしは、満足感に浸りながら、その場を後にしました。

 後に残されたのは、筋肉痛と、今まで感じたことのない恋の予感に打ち震える一人の王子と、そして、価値観が根底から揺さぶられた、大勢の貴族たちだけでした。

ご覧いただきありがとうございました。感想や評価、ブックマークで応援いただけますと幸いです。また、世界観を共有する作品もあるので、そちらもご覧いただけるとお楽しみいただけるかと存じます。HTMLリンクも貼ってあります。

次回は基本的に20時過ぎ、または不定期で公開予定です。

活動報告やX(旧Twitter)でも制作裏話を更新しています。(Xアカウント:@tukimatirefrain)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ