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【祝45000PV】転生悪役令嬢イザベラ、婚約破棄も魔法も筋肉で粉砕します!  作者: 月待ルフラン【第1回Nola原作大賞早期受賞】
第一章:悪役令嬢イザベラ、ざまぁ婚約破棄を筋力で踏み潰しますわ!
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第三十七話:国境を越えた友情

どれくらいの時間、そうしていたのでしょうか。わたくしは自室のベッドの上で、ただ膝を抱えておりました。扉を叩く音も、心配する侍女の声も、今のわたくしの耳には届きません。ただ、脳裏に焼き付いた、仲間を傷つけた自分の力の残像に苛まれるだけ。


その時、静かに、ドアが開く音がしました。

鍵はかけたはずですのに。驚いて顔を上げると、そこに立っていたのは、わたくしが今、最も会いたくない人物でした。


「リョーコ…殿…」


左腕に、痛々しい包帯を巻いたリョーコ殿が、静かに部屋へと入ってきました。


わたくしは、思わず顔を背けました。合わせる顔がありません。わたくしのせいで、彼女に、その腕に、消えないかもしれない傷を…。


「ごめんなさい…ごめんなさい…」


謝罪の言葉だけが、か細く口から漏れ出します。

ですが、リョーコ殿は何も言いませんでした。彼女は、ただ静かな足取りでベッドのそばまで来ると、わたくしの前に、そっと腰を下ろしました。


気まずい沈黙が流れます。わたくしが俯いたままでいると、リョーコ殿は、まず、自分の包帯が巻かれた腕を、右手でぽん、と軽く叩きました。そして、わたくしに向かって、ゆっくりと首を横に振ってみせました。


(…気にするな、と?)


次に、彼女は右手の拳を、ぐっと力強く握りしめてみせました。それが、わたくしの、そして彼女自身の「力」を象徴しているのが分かりました。

そして、その拳を見つめたまま、もう一度、静かに首を横に振ります。


(力は…)


彼女は、その言葉の続きを、ジェスチャーで紡ぎ始めました。


「力は、悪くない」とでも言うように。


そして、彼女の右手の指が、まっすぐに、わたくしの胸の中心――心臓のある場所を指し示しました。


(イザベラの…)


最後に、彼女は、その指で、何かを「決める」かのように、空中に、こく、と力強い軌跡を描きました。


(…心が、決める)


言葉は、一言もありませんでした。

ですが、彼女の真剣な眼差しと、一つ一つの丁寧な仕草が、その意味を、わたくしの心に直接、叩き込んできました。


――力は、悪くない。イザベラの、心が、決める。


父上の教えとも違う、もっと単純で、もっと根源的な言葉。

問題は、力の有無や大小ではない。それをどう使い、どう制御するのか。その持ち主である、わたくしの「心」が全てを決めるのだと。


彼女は、わたくしを責めてなどいなかった。それどころか、このどうしようもない恐怖の中から、わたくしを引っ張り上げようとしてくれている。


「…………」


わたくしは、何も言えませんでした。ただ、彼女の静かな瞳を見つめ返すだけ。

リョーコ殿は、わたくしがその意味を理解したことを悟ったのか、最後に一度だけ、小さく頷いてみせると、静かに立ち上がり、部屋を出ていきました。


一人残された部屋で、わたくしは、彼女が残していった温かい沈黙に、包まれていました。

恐怖が消えたわけではありません。ですが、分厚い暗雲に覆われていた心に、ほんの少しだけ、光が差し込んだような気がしたのです。

ご覧いただきありがとうございました。感想や評価、ブックマークで応援いただけますと幸いです。また、世界観を共有する作品もあるので、そちらもご覧いただけるとお楽しみいただけるかと存じます。HTMLリンクも貼ってあります。

次回は基本的に20時過ぎ、または不定期で公開予定です。

活動報告やX(旧Twitter)でも制作裏話を更新しています。(Xアカウント:@tukimatirefrain)

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