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【祝45000PV】転生悪役令嬢イザベラ、婚約破棄も魔法も筋肉で粉砕します!  作者: 月待ルフラン【第1回Nola原作大賞早期受賞】
第一章:悪役令嬢イザベラ、ざまぁ婚約破棄を筋力で踏み潰しますわ!
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第三十六話:強さへの恐怖

自室に戻ったわたくしは、鍵をかけ、ベッドに倒れ込むようにして蹲りました。

頭の中で、先ほどの光景が何度も何度も、繰り返し再生されます。


リョーコ殿の、赤く爛れた腕。

ダフネの、引きつった悲鳴。

エリアーナの、怯えきった瞳。


そして、わたくしの手から滑り落ちた、大戦斧の乾いた音。


「…………ぁ」


声にならない声が、喉から漏れました。

違う。違う。わたくしは、仲間を、守りたかっただけなのに。

ヒロインを死なせてゲームオーバーになる破滅フラグを回避するため、そして、わたくしを信じてくれる仲間たちを、ただ守りたかっただけなのに。


わたくしが信じてきた、絶対の力。

迷ったら殴れ、というツェルバルク家の家訓。

筋肉は裏切らないという、揺るぎない信念。


その全てが、音を立てて崩れていくのを感じました。


わたくしは、自分の両手を見つめました。この手は、仲間を守るための手ではなかったのですか。この腕は、勝利を掴むための腕ではなかったのですか。

それなのに、この手は仲間を傷つけ、この腕は恐怖を生み出した。


わたくしの力が、暴走した。

二度も。

一度目は、ベンチを蒸発させただけですんだ。

でも、二度目は――仲間を、傷つけた。


もし、あの時、リョーコ殿が庇っていなければ、熱波を浴びていたのはダフネだった。もし、魔法の威力がもう少しだけ強かったら、リョーコ殿の腕は、ただの火傷では済まなかったかもしれない。


ぞわり、と。

背筋を、今まで感じたことのない種類の悪寒が駆け上りました。


それは、敵と対峙した時の武者震いとは全く違う、冷たくて、重い、純粋な「恐怖」でした。


わたくしは、初めて、自分の力が「怖い」と感じたのです。


制御できないこの力は、もはやわたくしの誇りではない。それは、いつ、誰を傷つけるか分からない、ただの暴力の塊。わたくしの中に潜む、獰猛な猛獣。


部屋の隅に立てかけてある、父上から贈られた大戦斧が目に入りました。あれは、わたくしの誇りの象徴だったはず。でも、今のわたくしには、ただの凶器にしか見えません。


「もう…いや…」


わたくしは、戦いたくない。

もう、この力を使いたくない。


破滅フラグ?ゲームオーバー?

そんなもの、どうでもいい。

わたくしが力を振るうことで、また誰かを傷つけてしまうくらいなら、もう、何もしない方がいい。


わたくしはベッドの上で、ただ小さく、小さく体を丸めました。

ツェルバルク家のイザベラとして、悪役令嬢として、破滅に抗うことを決めたあの日から、初めて。


わたくしは、戦うことを、放棄しようとしていました。

ご覧いただきありがとうございました。感想や評価、ブックマークで応援いただけますと幸いです。また、世界観を共有する作品もあるので、そちらもご覧いただけるとお楽しみいただけるかと存じます。HTMLリンクも貼ってあります。

次回は基本的に20時過ぎ、または不定期で公開予定です。

活動報告やX(旧Twitter)でも制作裏話を更新しています。(Xアカウント:@tukimatirefrain)

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