第三十五話:陰謀の全貌
ドルム・ガンド連合王国との筋肉によって固く結ばれた同盟を再締結したわたくしは、すぐさま王都の兄ヴォルフ様へと魔導通信を送りました。
もちろんその内容は極めて簡潔ですわ。
『鉱脈発見せり。ヴァルシェード家の息のかかった商会が黒幕なり。詳細はよしなに計らえ』
ついでにエルフの森で敵が用いていた奇妙な幻惑魔法が、北嶺の魔女領の妖霊術に似ていたという情報も付け加えておきました。ええ、ええ。現場の人間がやるべきことは、ただ情報を集めそれを後方の優秀な頭脳へと送ること。そうすれば自ずと道は開けるのですから。
そしてわたくしのその完璧な信頼に、王都の仲間たちは見事に応えてくれましたわ。
その報せを受け取った王都の兄様はすぐさま行動を開始いたしました。
彼が緊急の作戦会議に招集したのは二人。
一人はこの国の正義と秩序をその一身に体現するエドワード王子殿下。
そしてもう一人は、貴族社会の表も裏もその独自の令嬢ネットワークで静かに、しかし確実に把握しつつある、この物語のもう一人の主役エリアーナでした。
王城の一室に三人は集った。
兄ヴォルフがわたくしからの断片的な情報を地図の上に並べていく。
「イザベラからの報告だ。ティタニア樹界盟約でエルフたちの判断を狂わせたのは、北嶺の魔女が使うという妖霊術に酷似した幻惑魔法。そしてドルム・ガンドの経済を麻痺させていたのは、ヴァルシェード家と繋がる商会による魔法触媒の独占」
エドワード殿下が腕を組み唸ります。
「北の魔女と南西の海の商人か…。あまりに接点がないな…」
ですがその時、エリアーナがおずおずと、しかし確信に満ちた声で口を開きました。
「…いいえ殿下。一つだけございます」
彼女は自らのフィットネス・コネクションを駆使して調べ上げた衝撃の事実を告げたのです。
「その商会…そしてわたくしたちが以前突き止めた寄生魔獣を密輸した組織。そのどちらの資金源も辿っていくと、一つの秘密結社へと行き着くのです。…失われた禁忌の魔法の復活を企む『律章復興派』へと」
その名を聞いた瞬間、兄ヴォルフ様の顔色が変わりました。
「律章復興派…!あの異端者どもか!奴らがこれほど大掛かりな陰謀を…?」
全ての点が線で繋がりました。
エルフの森で掴んだ「魔女との繋がり」。
ドワーフの国で得た「律章復興派との経済的繋がり」。
そしてそのどちらにも影を落とすヴァルシェード家の存在。
三人はついにその恐るべき陰謀の全貌にたどり着いたのです。
これはただの嫌がらせではない。
エルフの森を病ませることで世界の霊脈を乱し、王国全土に不安をもたらす。
ドワーフの国を経済的に締め上げることで王国の軍事力の根幹を揺るがす。
全てはこのアルビオン連合王国の旧体制そのものを、内側から崩壊させるための壮大な計画。
そしてその全ての糸を裏で引いているただ一人の黒幕。
ヴァルシェード家の富と力を背景に、律章復興派や北の魔女すらも手駒として利用する野心家の名が、三人の脳裏に浮かび上がっておりました。
彼の目的はただ一つ。
血筋や伝統といった古きくだらない価値観を破壊し、ただ「富」だけが全てを支配する新しい世界を創造すること。
ええ、ええ。
わたくしが最前線で筋肉の対話に励んでいる間に。
王都ではついに、このメインクエストのラスボスの名前が特定されたのでございます!
実に素晴らしい連携プレーですわね!
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次回は基本的に20時過ぎ、または不定期で公開予定です。
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