第二十五話:新たなる神託
その夜、王都は、不吉な紫色の光に、静かに支配されておりました。
『環流統制塔』から放たれる禍々しい光は、眠りにつこうとする人々の不安を煽り、王城では、夜を徹して、魔導技師たちが、原因の究明と、対策の協議に追われております。
わたくしは、自室のベッドに腰掛け、窓から差し込む、その、紫色の光を、ただ、静かに見つめておりました。
エドワード殿下は、「君のそばにいさせてほしい」と、懇願しておりましたが、丁重に、お断りいたしましたわ。
なぜなら、わたくしは、分かっていたからです。これから、起こるであろう、ことの、本質を。
(来ますわね…)
あの、脳内に直接響いた、均衡精霊からの警告。あれは、ただの、前触れに過ぎません。
メインシナリオが、次のフェーズへと移行したのならば、必ず、具体的な、クエスト内容が、提示されるはず。
わたくしは、ただ、その瞬間を、覚悟を決めて、待っておりました。
やがて、その時は、訪れました。
突如として、世界から、音が消える。
部屋の景色が、まるで、ノイズの走った映像のように、ぐにゃりと歪む。そして、わたくしの意識は、否応なく、暗く、冷たい、情報の奔流へと、引きずり込まれていったのです。
あの、兄様の死を見せつけられた時のような、おぞましいビジョンでは、ございません。
ですが、これは、まさしく、「強制ダウンロード」。
わたくしの、魂核そのものに、世界の理が、直接、その命令を、刻み込んでくる、神聖にして、不可侵の儀式。
やがて、わたくしの、意識の暗闇の中に、黄金色の、神々しい文字が、浮かび上がりました。
【――均衡精霊より、神託を授与――】
【ランク:ワールドクエスト】
【クエスト名:ティタニア樹界盟約の病を癒し、世界の霊脈を安定させよ!】
霊脈海をまたにかける、その、あまりに、壮大で、そして、あまりに、無茶ぶりなミッション内容。
わたくしは、その、黄金の文字を、ただ、呆然と、見つめておりました。
ですが、その呆然は、すぐに、武者震いへと変わります。
恐怖では、ございません。歓喜ですわ!
(ワールドクエスト…!なんと、胸躍る響きでしょう!)
そうですわ、これこそが、このゲームの、真のメインシナリオ!
ただの、破滅フラグ回避などという、個人的なクエストではない。
この、世界の、存亡そのものを懸けた、英雄だけが、挑戦を許される、最高の、舞台!
わたくしは、ゆっくりと、立ち上がりました。
その瞳には、もはや、一片の迷いもありません。
「よろしいでしょう」
わたくしは、誰に言うでもなく、しかし、この世界の、理そのものに向かって、高らかに、宣言いたしました。
「その、神託、この、イザベラ・フォン・ツェルバルクが、謹んで、お受けいたしますわ!」
部屋を満たしていた、紫色の光が、わたくしの、その、揺るぎない覚悟に、呼応するかのように、一瞬、より、強く、輝いたような気がいたしました。
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