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お互いさま (美術部員の先輩 と 他部の後輩)
下校する時に通り抜ける中庭で、たまに見かける美術部員の先輩。
何度か通り過ぎるうちになんとなく挨拶する仲になった。
最近の先輩は中庭がお気に入りなのか、毎日そこでスケッチしていて、私の帰る時間に先輩のスケッチがちょうど終わるらしく、駅まで一緒に帰ることもよくある。
今日は部活を休んで早めの下校なので、先輩とは時間が合わない。
残念だなと思いながら中庭を通ると、スケッチブックに向かっていた先輩が顔を上げた。
「あれ、今日は早くない?」
「今日は家の用事があって」
「ふうん。じゃあ、俺も帰る」
言いながら、明らかに描きかけのスケッチブックを先輩は片付け始めた。
「え、まだ時間ありますよ?」
「でもお前は帰るんだろ。俺、いつもお前を待ってるんだし」
「は?」
調子はずれの声を上げた私に、先輩は心外そうに眉をひそめた。
「……気づいてなかったの?」
「え、だって。そんなの、ひとことも」
「……言わなくても気づけよ」
少し頬を染めた先輩が、ぞんざいに私の手を取って、そのまま歩き出した。
「……それは、ちょっと無茶だと思います」
「…………」
「先輩だって、私が言わない気持ち、気づいてないくせに」
「は?」
かなり以前に書いたお話。
ピュアっピュアな高校生が書きたかった(*^^*)




