蝶を助けた (人間 と 助けられた蝶)
庭仕事をしていたとき、すぐそばの茂みでモンシロチョウがクモの巣にかかっているのに気づいた。よく見れば、羽化からあまり時間が経っていないらしく、羽は開いているが少しよれよれだった。
自然のことに手を出すのはよくないと思いながら、生まれて間もない蝶が哀れで、ねばつく網からそっと外してやった。
人間の手を恐れて身を隠すクモには、獲物を奪ってごめんと謝っておいた。
――と、いうようなことがあった翌日。目を覚ますと、見知らぬ場所でたくさんの蝶たちに囲まれていた。ここはどこだ。
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羽化直後の無防備な状態を襲われたところを、人間に助けられた。
蝶の女王にそのことを話してお礼がしたいと願うと快く許してくれた。女王の寛大さに感謝し、さっそく人間をこちらへ招いた。
仲間たちの歓迎を受けた人間は、その素晴らしさに言葉も出ないようだった。
そこで私もふよふよと眼前に進み出て、自慢の羽を震わせて舞った。差し出された指先へ誘われるように止まり、口吻でちょんと触れてみれば、くすぐったいよと人間が笑った。
そうして戯れているうちに、だんだんと人間と離れがたい気持ちが湧いてきた。
そのせいだろう、自分でも気づかぬうちに特別な鱗粉を振りかけてしまっていたようだ。おかげで人間と私たち蝶の間に強い縁が結ばれていた。
これはさすがに不味いかなと女王を窺うが鷹揚に頷かれたので、安心して人間をここに留めておくことに決めた。
はじめは、仲間たちで歓待してそれで終わりの予定だった。
でも触れ合ううちに欲しくなった。
女王様の許可があれば人間の同意なんて要らない。




