部員とマネージャー (運動部員 と マネージャー)
このシリーズで既出の「身長差 (運動部員 と マネージャー)」(https://book1.adouzi.eu.org/n8605hd/59/)に加筆修正したものです。一部同じ内容を含みます。
*** 部活の休憩中 ***
木陰に座って休んでいたら、背中に軽い重みが加わった。以前にも何度か経験があるので、相手は振り向かずともわかる。
「マネージャーだろ」
「あたり」
ふふふと笑う柔らかい体に、動揺しないよう息を吐き出す。
「知ってる? 恋人との身長差って、これくらいがちょうどいいらしいよ」
「ふうん。なんで?」
「キスしやすいからだって」
吐き出していた息が気管に入り、盛大に咳き込んだ。
*** 教室移動の途中 ***
「やあ、マネージャー」
「あれえ、偶然だね。移動教室?」
「そう、生物で特別教室棟に。……なに? そんなニヤニヤして、なにかおかしい?」
「ううん。毎日部活で一緒だけど、それ以外の時間に会うの、なんだか嬉しいなと思って」
「え、そう? 俺に会えて嬉しいの?」
「うん、嬉しい」
「そ、そうなのか。そうか…………。じゃあ、授業が終わったら、また声かけてもいい?」
「うん、待ってるね!」
*** 朝 ***
「あ、おはよー」
「おはよ」
「同じ電車だったんだねえ」
「みたいだな。俺、二両目だった」
「あー、私は五両目。うちの駅の改札に一番近いんだよね」
「ふうん。俺は別にこだわりないけど。じゃ、明日は五両目に乗ろうかな」
「ほんと? じゃあ駅に着いたとき、電車から手を振るね」
「いやあ、それは恥ずかしいからやめて」
「えー?」
*** 昼休み ***
「お、マネージャーも食堂?」
「うん。雨降ってるから、お弁当を食堂で食べようと思って」
「そっか。あっちの窓際のあたりで、席を確保しておいて」
「はーい。ちなみに私、唐揚げが食べたい気分」
「はいはい。じゃあ、チキン定食にしとくわ」
「やった。代わりにキンピラあげるね」
「唐揚げとキンピラって、等価交換かな?」
「私の手作りだよ?」
「む。ならば良し」
*** 部活終わり ***
帰り道、マネージャーの隣を歩く。
「なあ。昼休み、中庭で告白された?」
「えっ? あ、あー……見てたの?」
「ごめん。たまたま通りかかった。…………返事した?」
「んー、気になる?」
「………………べつに」
「ほんとに?」
「…………」
「あのね、断ったの。よく知らないひとだったし」
「ふうん」
「ねえ、ほっとした?」
「…………」
「…………」
「手、つないで帰ろ」
「うん」
差し出された柔らかい手を、きゅっと握った。
周囲からしたら付き合ってるようにしか見えないけれど、付き合ってないです。




