先輩だもの (会社の先輩 と 新婚さんな後輩)
新婚さんな後輩に声をかけたばかりに、痴話げんか(?)に巻き込まれそうな先輩の話。
金曜の終業間際。
今週も頑張ったなあと首を回せば、隣席の後輩が浮かない顔で帰り支度をしているのが目に入った。後輩はこの春に結婚したばかりで、何をやっても楽しい時期のはず。
少し気になって声をかけると、暗い声が返ってきた。
「先輩……。あの、俺、週明けに出張入ってて」
「ああ。鹿児島の方に二泊三日だっけ」
「それを妻に伝えたら、なんとなく嬉しそうな顔されました」
「気のせいじゃない? もしくは、お土産が楽しみとか」
「あと、昨日も。妻が風呂上りに鼻歌で、亭主元気で留守がいい~って楽しそうにハミングしてて」
「いや、それは無意識ってやつじゃ?」
「…………無意識ってことは、本音が出たってことじゃないですか!? 俺、俺、留守にしたら喜ばれるほど邪魔くさいんでしょうか!? 新婚だからって、調子に乗ってベタベタしすぎたんでしょうか!? 行って来ますのチューとか、憧れだったんですけど駄目でした!? 先輩、俺、出張から帰ったら家に居場所あるんでしょうか!? ねえ、先輩……!!」
うっかり声をかけたばかりに、なんだか面倒くさいことを聞いてしまった。新婚の問題なんて、関わってもいいことなどないのは分かりきっている。
それでも自分は先輩なので、飲みに行くかと、かわいい後輩の肩を叩いてやった。
たぶん、誤解からの痴話げんか未満。犬も食わないやつだと思います。




