臙脂のネクタイ (同居人の彼 と 仕事を終えて寝落ちした彼女)
10月1日は「ネクタイの日」だったそうです。
タイトなスケジュールで投げ込まれた仕事をなんとか仕上げ、メールの送信ボタンを押した。ひと息つこうと立ち上がり、ふらふらとリビングへ向かう。気力が続いたのはそこまでで、ソファに座ったところで意識が飛んだ。
物音に、浅い眠りを漂っていた意識が少しだけ浮上する。
気を遣った静かな足音が近づいてきて、ソファの前で止まった。夢うつつの中でまだ目は開かないが、様子をうかがわれているのだろうと分かった。
「寝てるの?」
聞こえたのは、同居人の彼の声。
だがゆらゆらと気持ちのいい状態を手放しがたく、ごめんと思いながらも返事をせずにいた。
すると、床の方で衣擦れの音。膝をついてこちらをのぞき込んでいるらしい。
彼には、仕事の締め切りが今日であることは伝えてあったし、昨夜の作業も深夜までかかったことも知られている。無理に起こしてきたりはしないと思うが。
そこでさらに身を乗り出したらしく、近づく気配。彼の体についた外の匂いがふわりと鼻をかすめた。胸の上に置いていた手に触れるのは、彼の胸元から垂れたネクタイ。
「お疲れさま」
そっと労りの言葉が落とされ、それから頬に柔らかな感触。
それが疲れた身には心地よく、ようやく目を開いた。
まず目をやった先、ネクタイは、やはり臙脂色だった。
いつかのバレンタインに彼へプレゼントしたものだ。それでさらに気分が上がった。
「あれ? 起きて……っんむ」
離れていこうとする気配を逃さないよう、臙脂色のネクタイを掴んで引き寄せ、先ほど頬に触れたであろう柔らかな場所へと吸いついた。
ネクタイ、好きなアイテムです……(^^)




