意外と向いてる (飲食店の新人 と 先輩)
小ネタ二個で話が続いたので、まとめて載せておきます。
チンピラがうろつくようなこの界隈。
飲食店といえど、やって来るのは気性の荒い客ばかり。
そんな店に新しく入ったのは、ぽやぽやと笑う優男だった。
「はじめまして、先輩。これからどうぞよろしく。仲良くしてくれると嬉しいな」
「……いや、無理でしょ。どう考えても、うちのお客さんに太刀打ちできないって」
「うん? でも僕、君よりも年上だよ」
小首を傾げる姿もなんだかあどけない。
「年齢なんて関係ないの。あなたみたいなの、格好の獲物だよ?」
「ふふ、心配してくれるの? やさしいんだね。嬉しいな」
話の通じない感じが、意外とうちの店に向いているのかも、という気はした。
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チンピラのうろつくような界隈にある飲食店。
そこへやって来た新人は、ぽやぽやと笑う優男で。
大丈夫なのかと不安になったが、彼は普段の雰囲気は和やかなのに実はとても手の早い人物だった。
「またお客さんを叩き出したのね」
「え? 勝手に出て行ったんだよ?」
先ほど、マナーの悪い客が店の床に煙草をポイ捨てしようとしたところ、いつの間にか近づいていた彼が寸前でキャッチした。それから、彼が笑顔のままに煙草を客の額に押しつけたものだから、相手は悲鳴を上げて店を出て行ったのだ。
「さすがに、火のついた煙草を押しつけるのはやりすぎ」
「火を消さないと、危ないと思って」
そう言う彼はいつものぽやぽやした笑顔を浮かべていて、その本心が見えない。
「それ、本気か冗談か分からないの、わざとやってる?」
「本気? 君に対してはいつも本気だけど」
「話が通じない…………」
「ふふ、大丈夫。先輩が心配してくれているのは、ちゃんと通じてるよ」
「いやあ、そうじゃなくてさ」
「僕、そういう風に心配されたことがないから、すごく嬉しいんだ。ここで働けて、幸せだなあ」
やっぱり話は通じないが、本人は幸せらしいし、うちの店には向いているのかもしれない。
話が通じないうちに、いつの間にか付き合う流れになってそう。




