しあわせになってくれ (無自覚なふたりに巻き込まれる、不憫な彼)
両思いだけど完全に無自覚な大学のゼミ仲間ふたりに巻き込まれる、不憫(笑)な主人公。
小ネタ三個で続きものみたいになったので、全部載せておきます。
授業終わりの教室で、前の席に座るゼミ仲間を眺める。
「駅前で、白菜が百九十八円だったぞ」
「え、本当? 買いに行かなきゃだ」
「俺が買ったのまだ余ってるから、分けてやるよ。帰りに家に寄ってけ」
「やった、ありがと」
「いいよ。このまえのキャベツのお礼」
「あれは安かったよねー。九十八円!」
「お前がそれで作ってくれたロールキャベツ、美味かったな」
買った野菜を分け合って、お互いの家でごはんを食べて、美味しいねと笑い合う。このふたりは、これでお互いを友人だと思っている。
*****
お互いに無自覚なゼミ仲間たちが、一緒に暮らし始めた。すわ同棲かと思えば、ただの同居だと笑ったふたり。
そのときから、こうなることは分かっていた。
「同居したら家賃も安くなるし、ごはんもシェアできるしで、楽しいと思ったの。いや、もちろんすごく楽しいんだけどね。でも、その、……なんか、ソファで並んで座ったときに肩が触れたりすると、すごく意識しちゃったり。ふとしたとき、彼がものすごく優しい目でこっちを見てて、恥ずかしくてたまらなくなったり。こんなの、心臓がもたないよ。ねえ、どうすればいいと思うっ?」
「……………………」
こじれる前にさっさとくっついてくれ。
*****
大学で同期のゼミ仲間は十人だったが、ほとんどのやつらとは、卒業後は自然と疎遠になった。
その中で、四年経った今でも連絡を取り合っている目の前の友人は、貴重な存在ではある。
「……最初はさ、ほんと、ただの同居のつもりだったんだ。家賃が安くなるし、ごはんもシェアできる。あいつのごはん、美味いし」
「どこかで誰かから聞いたような話だなあ」
「でもそのうち、三本九十八円の茄子をゲットしたときの笑顔とか、おつとめ品のトマト大袋を全部使い切ったときの得意げな顔とか、あー、かわいいなあって思い始めて。さりげなく距離を詰めてみたら、なんか可愛い反応するし。これは脈ありだなと思って、猛アピールしてさ、そのうちいろいろスキンシップを許してくれるようになったんだ。それで俺、もう完全に付き合ってるつもりだったし、同棲してるわけだし、」
「いよいよと押し倒したら、体だけの関係はもう耐えられないって泣かれたんだな…………」
「まさか! あれだけ大事にしてたのに、俺の気持ちが伝わってないとか思わないだろ! じゃあなんだ? 俺は今まで、恋人でもない女性にキスしたり触ったりするゲス野郎だと思われてたのか!?」
彼は十分に想いを伝えたつもりだったが、彼女としては「好き」のひとこともないのに伝わるわけがない、と主張しているらしい。
「お前、好きって言ってなかったの?」
「言ったつもりだった」
「でも彼女は言われてない、と」
「…………。なあ、どうすればいい!?」
大学時代から思っている。頼むから巻き込まないでほしい。だが、卒業後も関係を続けてきたくらいだ、ふたりは自分にとって良い友人なのだ。やはり幸せになってほしいと思う。
小さく息を吐き、ひとまず彼女からも話を聞こうかとスマホを取り出した。
巻き込まれる度に「勘弁してくれ~!」と思いながら、なんだかんだ友人としてふたりのことが好きな主人公でした。




