この血は俺のもの (吸血の一族 と 極上の血を持つ人間)
ある日、なんとも魅惑的な香りに出くわした。
視線を向ければ、香りの先にいるのはひとりの人間だった。
あまりの芳醇な香りにたまらず駆け寄ると、人間は血色のよい顔でこちらを見上げてきた。
(美味そうだ…………)
自分は吸血する一族ではあるが、日常的に血を必要とはしない。
例えるなら血は嗜好品であり、その分、質にはこだわる。
自分がこれほどに惹きつけられるとは、目の前にあるのはまさに極上の血であるに違いない。
甘美な香りからその味を想像し、興奮で本性を露わにしてしまいそうになりつつごくりと喉を鳴らした、そのとき。
――ぱちんっ、と小気味よい音が響いた。
見れば、目の前の人間が手首の内側をもう一方の手で叩いていた。
蚊がいたのだと人間が言うように、手をどけるとそこには少し血がにじんでいた。
それを目にして、とうとう抑えがきかなかった。
細い手首を取り、甘やかな香りを放つ赤に吸いつく。
すると想像したとおり、いや、想像以上の甘露が舌に触れた。甘く、まろやかで、どこか刺激的な、今までに味わったことのない最高の血。
皮膚の表面にあるものだけでは我慢できず、ちゅうっと吸い上げ、舌で舐め取った。
「やだ、ちょっ、なにするのよ変態!」
手首の持ち主が暴れながら何か言っていたが、もうこの血は自分のものにすると決めた。
このまま持ち帰ってしまおう。
こんなふうに強気で語っている彼ですが。このあと、彼女の見事な平手をくらって上下関係は逆転します(^^)




