いただきます (雇われ傭兵 と 学者)
古い遺跡の調査へ向かうのに、護衛として傭兵を雇った。
数日かぎりのことだから、腕が立つなら誰でもよかった。だが、最初の食事の席で考えを改めた。あまりに食べ方がひどい。食べものに対する冒とくだ。
「食べ方が汚いひとは嫌い」
「えっ、」
きっぱりと言えば、ひどく動揺したような顔で傭兵は口元を拭った。
「それから食べる前は、いただきます、と言ってくれるかしら」
「…………なんでだ?」
「これからあなたを大事に食べますねっていう、挨拶よ。食い散らかさないで」
「分かった。大事に食べる」
それから傭兵は、律儀にいただきますと言うようになったし、食べ方もきれいになった。素直なところは好感が持てる。
他にも、道中でこれはなんだと聞いてくるのに何度か答えた。傭兵が思いのほか熱心に聞いてくれるので、こちらも面白くなって詳しく解説してしまう。意外なことに、傭兵は学者の仕事に興味があるらしい。
そんな時間が楽しいなと思い始めたある日、ふとした拍子に、壁に押しつけられた。両手を押さえられて身をよじると、足も押さえこまれた。
なんだなんだと見上げれば、ごちそうを前にしたような傭兵の笑顔。
「あの、これは……?」
「まずは、挨拶からだったな」
「うん?」
「…………いただきます」
素直な傭兵は、ちゃんと「これからあなたを大事に食べますね」と挨拶をしてから、がぶりと学者をいただきました。




