弟子の許可が必要 (精霊の弟子 と 人間の魔女)
「ふんふふーん」
鏡の前で、魔女は鼻歌まじりに身支度を整えている。
そんな主の様子が気になったのか、使い魔の黒猫がひと声鳴いた。
「うん? なんでそんなにお洒落しているのかって? ふっふっふ。実はねえ、男性からお誘いを受けちゃったのだー!」
ご機嫌で答えた魔女に、なぜか黒猫は沈黙した。
すると窓の外で、同じく使い魔の黒鳥がきゅいきゅいとか細く鳴いた。
「どうしたの、そんな不安そうな声を出して。え? 弟子は許可したのかって? 子供じゃないんだから、いちいち言わないわ」
やはり、黒鳥も黙り込んでしまった。
魔女が使い魔たちの反応を不思議に思っていると、今度は扉のところで声がした。
「お師匠。可愛らしいな、似合っている」
柔らかな笑顔で褒めてくれたのは、まさに話題になっていた弟子だった。
見た目は魔女と同年代の彼だが、精霊なのではるかに長く生きている。魔術以外は魔女よりもずっと老成していて、こうして素直に褒めてくれるところが好ましい。
だから魔女も、可愛くしている理由を素直に告げた。
「ありがとう。これからデートなの!」
「…………は?」
およそ聞いたことのないほど低い弟子の声に、魔女はびくりと肩を揺らした。
何かまずいことを言っただろうかと助けを求めて振り返ったのに。
「お前たち、悪いが席を外してくれ」
声の調子を変えない弟子の言葉に、使い魔たちはさっと消えてしまったのだった。
弟子はよく、魔女のことを「可愛い」「愛らしい」と褒めていて、露骨にアピールしていました。
魔女は「精霊ってそういうものなのね」くらいに思っていたので、弟子の想いに気づかず。
使い魔たちはもちろん気づいていたので、痴話喧嘩に巻き込まれないうちに逃げ出しました。




