不惑の理性 (四十代の文官 と 三十代の魔術師)
前回のお話と同じ設定です。
王宮とは職場であり、出会いの場でもある。若者たちは皆、少しでも良い相手を探そうと躍起になっている。
だが、文官として王宮に上がり、仕事に打ち込んでいるうちにいつの間にか若い盛りは過ぎていた自分には、もう関係のないことだ。
(関係ない、はずなのだが…………)
仕事を終えたところへやって来た、魔術師の女性。わずかに頬を染めてこちらを見上げ、遠慮がちに口を開く。
「次官殿。夕食をご一緒しませんか?」
「…………魔術師殿。親しくない男性を夕食に誘うものではありませんよ」
「っ……、私は次官殿と親しくなりたいからお誘いしているのです」
「ますますいけません。私のような年の離れた者を相手にするのはお止めなさい」
「………………」
悲しそうにうつむいてしまう様子に、内心で慌ててしまう。初めて見かけたとき、辛そうに泣いていたのを覚えているからだ。
「…………夕食はいけませんが、昼食なら」
「は、はい!」
萎れていた花が、ふわりと花開くように笑うから。どうにも完全に拒絶できない。このひとには、ずっと笑っていてほしい。それを遠くから見ているだけで満足するつもりでいるのに、どうしてこのひとは自ら近づこうとするのか。不惑を越えた男の理性を、むやみに揺さぶらないでほしい。
文官は小さくため息を吐いて、胸の内にくすぶる熱を吐き出した。
年長者としての自覚が強い文官。いつまでもつかな~。
-----2021年9月19日追記-----
このふたりの設定で、短編にして投稿しました。
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