最初のひとくち (王都の隊長 と 他国出身の調律師)
シロウ:王都の隊長
アキ:他国出身の調律師
イズル:王都の副隊長
市場で、イズルと出会った。
「やあ、アキ。夕飯の買い出し?」
「はい。今日はカボチャを食べる日だって、シロウさんから聞いたので」
この国では、この日にカボチャを食べるものらしい。
アキの故郷には無い風習だが、シロウと共にこの国で暮らしていくからには、そういった風習も積極的に参加していきたい。
アキが意気込んでそう言えば、イズルは優しく微笑んで頭を撫でてくれた。
「……そうだ。あのさ、カボチャはそのまま食べるだけじゃ駄目なんだよ」
「え、そうなんですか?」
今朝、そんなことは聞かなかった。
「ふふ。シロウは言い忘れたんだよ、きっと。カボチャの最初のひとくちには特別なきまりがあってね……」
とても楽しそうにイズルが教えてくれた食べ方に、アキは目を輝かせた。
「はい、シロウさん。口を開けて」
「アキ、これは…………?」
夕食の席で。アキはイズルに教えてもらったとおり、カボチャをひとすくい、スプーンでシロウに差し出していた。
「カボチャの最初のひとくちは、相手の幸せを願って手ずから食べさせるものらしいですね。イズルさんに教えてもらいました」
「………………アキ、待て」
眉間にしわを寄せたシロウの顔はとても迫力があったが、これは照れているだけだとアキは知っているので、もちろん待ったりはしなかった。
もちろん本来はそんなきまりなどなく、イズルの悪戯です。
ちなみにこの後、今度はシロウがアキに「あーん」するという試練が待っています。
こちらのふたりは、連載作品「調律師と隊長」からでした。
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