手紙のお作法 (他国の文通相手 と 私)
山ふたつむこうの国に、長く文通をしている友人がいる。
その文面から察するに彼は細やかな気遣いのできるひとで、いつか会ってみたいと思っていた。
そんな友人が、前回の手紙に贈り物を同封してきた。手作りらしい革紐のブレスレットと、自分で磨いたという石を使ったイヤリング。
友人は手紙の中で、どうかなと感想を求めていた。
どうして急にそういったものを贈ってくれたのか分からなかったが、もちろん好意で贈ってくれるものをむげにもできないから、ありがとう、嬉しいと返した。
実際、とても丁寧に作られたアクセサリーには気持ちがこもっているのがよく分かったから、嬉しかった。
ある日、家の扉をたたく音がして、手紙の配達人かなと確認もせずに開ければ。
「はじめまして」
笑みを浮かべた青年が立っていた。
その手には、一ヶ月ほど前に自分が送った手紙が大事そうに握られている。
「……想像どおり、可愛い。僕のお嫁さん」
「お、およめさん?」
混乱しながら尋ねたところ、青年の国では、男性が手紙に手作りの贈り物を同封することは求婚の印らしい。女性はその贈り物を気に入れば、求婚を受け入れる。
(え。私、嬉しいって返事をしたわ……)
すっかり気持ちが通じたと思っている青年に、そんなお作法はこの国にはないのだと言っていいものか、私は頭を悩ませた。
その後なんとか説明はしたものの、青年の猛アタックを受け、けっきょくお嫁さんになっちゃいました。




