俺のネコちゃん (あやしい魔術師 と 生贄の猫)
「俺のネコちゃんは、ご機嫌ななめだな?」
笑って頭を撫でてくる魔術師に、猫は自慢の尻尾をふるりと振って不満を伝える。
この魔術師は以前、領主に頼まれて見事な橋を作り、その対価として橋を最初に渡る者の魂を求めた。領民の命を惜しんだ領主がたまたま目についた猫を渡らせたところ、魔術師はその猫を持ち帰ったのだ。
(あのときは、すぐに魔術の材料にでもされてしまうのかと思ったけど……)
領主に対する冷酷な態度から死も覚悟した猫を、なぜだか魔術師はペットのように可愛がり始めた。
そうすると猫もやがて警戒心を解き、魔術師に懐いていった。
撫でられればもっとと体を押しつけ、鼻と鼻をくっつける挨拶を交わし、夜は寝台に潜り込んで魔術師のぬくもりを堪能した。
だから先ほど魔術師からグラスを差し出されたときも、猫は素直に口をつけた。
「……こんなの、やだ」
「そう言うな。すぐに慣れる」
先ほど飲んだのは魔術師の作った薬だったようで、猫の体を魔術師と同じように人間のものにしてしまっていた。耳と尻尾だけが猫の名残をとどめている。
「なんで、こんな」
「猫の体のままでは不都合だろう。まあ、そういう趣味の者もいるらしいが……」
「……そういう趣味って?」
「安心しろ。しばらくは待ってやる」
するりと尻尾を撫でる魔術師の手つきが、それまでとは違うような気がした。
魔術師は対価で得た猫が思いのほか可愛く懐いてきたので、全部もらっちゃうことにしました。
耳と尻尾を残したのは、魔術師の趣味(^^)




