サーバル男爵を訊ねる
「領主のハロルド様はカイ様と出かけられてまだ帰ってきておりません。」
執事のロインが言うにはスコルナ領へカイと共に出かけたと言う。
「何でしたかな、たしか、“ぐえー”とか言う乗り物に乗って・・・」
「走空車だ。」
「そう、その走空車で出かけられたのが十日前でした。
スコルナ領へは馬車で片道十日ほどかかるので、まだお戻りになられないはずです。」
「走空車で十日前に出かけたのか。」
ディンカはロインの言葉を聞いて何やらややこしい問題に直面したと理解した。
馬車で十日の距離ならば走空車なら二日あれば到着できる。
途中、ゆっくりとした移動でも三日もかからないだろう。
それが十日経っても戻らないという事は何かあったと見るべきであった。
「どうする、これは何かがあったに違いないぞ。」
話を聞いていたスタンがディンカに訊ねた。
「だがどうする。
出かけたと言うスコルナ伯とは俺達は面識が無いぞ。
どうやって会うのだ?」
一介の冒険者が貴族と会う事はまずありえない。
まして、伯爵と会う事はそうそう無いのである。
「冒険者である私たちが訊ねても門前払いが良い所でしょうね。」
バハルの言う通りありえそうなことだった。
「あの、すみません。
わずか十日で帰らないのに何か問題でもあるのでしょうか?」
傍で話を聞いていたロインがディンカたちに質問をした。
ディンカははっと気が付く。
「そうか。ロインさんは走空車についてあまり知らないのか。」
ロインは走空車を見た回数は少ないし、乗ったことも無い。
その性能については判っていないのである。
「ええ、走空車を見たのはカイ様が帰られた時と、
十日前、ハロルド様を乗せて出かけられた時の二回です。」
「なるほど。だからあまり慌ててないのか。」
スタンは納得している様だ。
それを横目にディンカが説明を始めた。
「ロインさん。走空車は馬車とは一線を画する乗り物なのです。」
「ええ、それは判ります。空を飛びますので。」
ロインは走空車を思い出しながら答えた。
「それだけでしょうか?」
「それだけ?
そうですね、後は少し早いかと思ったぐらいでしょうか。」
「そうです。その通りです。
そして、走空車は魔道具なのです。」
そう言われてロインがはっとする。
「そうか!魔道具なのだ。
馬とは違って疲れないし、精霊石がある限り飛べるという事か!!」
「そうです。
さらに、速度も最高速は馬車の三倍は出るのです。」
それを聞いたロインは素早く計算する。
「馬車が十日かかる所を三日、場合により二日で移動できる・・・何という事だ!
ハロルド様やカイ様に何かあったに違いない!」
慌て始めたロインを見てディンカは静かに話をする。
「はい。ですが私達、冒険者では伯爵への伝手が無いため困っていたのです。」
それを聞きロインは立ち上がるとこう言った。
「判りました。
私が一緒に参りましょう。
これでもサーバル領主の執事です。
スコルナ伯とは言え、無下に断られることは無いでしょう。」




