魔導士の方法、その4
「カイ!」「カイさん!!」
スタンとルリエルが同時に叫ぶ。
「グギャギャ、グギャギャ。ヤタドー!!」
グレンデルはばちゃばちゃと沼を波立たせながら手を叩いて踊っている。
その右腕はダメージを受けていたようだがもう治りつつある。
カイは殴られて吹き飛ばされたが、気絶には至っていない。
(精神力が1/4くらい残っている・・・どういうことだ?)
「グヒ、グヒ、グヒ、トドメヅァ!」
グレンデルは倒れ込むカイにとどめを刺そうと接近して来た!
「雷精よ!我が盾となれ!雷電障壁!」
雷光が迸る壁がグレンデルとカイの間に出現する。
バリバリバリバリ
グレンデルは雷光に阻害されその歩みを止める。
雷電障壁の特殊効果の麻痺は受けるようだ。
(コアではなく俺の方へ来るのはこちらにとって好都合だ。)
カイは急いでグレンデルから距離を取る。
その時カイの歩みが急に早くなった。
ルリエルの加速呪文だ。
移動するカイを見て咄嗟に呪文を使ったようだ。
何とかグレンデルから距離を取った物の、盾役の前衛がいない為、じり貧だ。
本来ならばスタンが前衛の盾役となるのだが、走空車を運転する為、
盾や重装備を外していた。
ディンカは最下層で盾役の連中に交じっていた為、この場にはいない。
様々なことをカイが考えている間にグレンデルの麻痺が解けた。
麻痺と言っても一時的な物で数秒しか効果が無い。
そんな時、待ちに待った連絡が来た。
{こちらフローム。全員ダンジョンから脱出した。繰り返す、全員脱出した。}
それを聞いたカイはルリエルに呪文を頼む。
「ルリエル、僕が呪文を使った後、冷却を使ってほしい。」
「了解。」
「不味い!!炎の業火よ!焼き尽くせ!火炎球!」
カイは火炎球を沼に撃ち込んだ。
白い蒸気が濛々と上がり辺りを埋め尽くす。
その蒸気の上がる沼にルリエルが冷却を使用する。
埋め尽くされた蒸気が急激に冷え、霧が発生した。
「グォゥ!マホウヅカイドゴイッダ?」
グレンデルは辺りを探すが、この霧で見つけられない様だ。
だがその霧の中、動く影を見つける。
「グヒゥ、グヒゥ、イタダァ。」
ローブを着た影が周囲に目を凝らしている。
魔法使いだ。
グレンデルはその影にゆっくり近づいてゆく。
「ヂネイ!」
両拳を振り上げると最初に右拳で軽く叩きつけ、間髪を入れず体重をかけて左拳を叩きつけた。
バギツ!
何か固い物が割れる音が聞こえる。
それと同時にグレンデルの体が崩れだした。
「グァハァァァ、ナジェイ?ナジェイ?」
ヒュウと一陣の風が吹き、当たりの霧を吹き飛ばす。
グレンデルが叩きつけた所にはコアの挟まった割り機があった。
挟まったコアはグレンデルの力により綺麗に二つに分かれていた。
カイは霧の中、映像変位により、
グレンデルに自分の位置を割り機の上にずらせて見せていたのだ。
「イヤダァ、イヤダァ、オレさまハサイキョウニなったんだダ。」
グレンデルはダンジョンに戻ろうと踵を返した。
瘴気の沼を物ともせずに進む。
だが沼を進む度、身体の一部が崩れ落ちて行く。
やがて、動かなくなり、終には沼に倒れ込んだ。
そして瘴気が漂う沼に吸い込まれていった。
「終わった・・・のか?」
カイはそう呟いた。




