暗い焚火
町に入れず門前払い。
これは当人にとって死を意味する。
辺境の町リモーデから一番近い町まで馬車で1週間、徒歩だとその倍の二週間はかかるだろう。
リモーデから隣町に行く馬車に便乗を希望するが断られる。
当然である、町の外にいる人間を信用する貿易商はいないのだから。
途中に村もあるかもしれないが(来る途中には見当たらなかった)そこで宿をとれる可能性は低い。
街道から外れた村を訪れる旅人はいない為だ。
村を不意に訪れるのはお尋ね者や盗賊なのだから。
アウスゼンは食料を持っていない。
邪魔になるからと、到着直前に食べてしまった為だ。
食料を買おうにも、町の外なので買うことは出来ない。
出入口にいる衛兵に頼めば手に入っただろうが、頭を下げてまで頼む気はない。
アウスゼンは隣の町、ミストへの道を歩くしかなかった。
(くそ、くそ、くそ、くそ、どいつもこいつも、くそだ!)
(なぜあのできそこないの魔法使いを認めてこの偉大な俺サマをみとめない!)
アウスゼンが体力のある戦士だからと言って、丸一日、歩き続ける事は無い。
日が暮れた頃、休憩することにした。
食料の無い場合、もう少し明るいうちに狩りをすれば野ウサギぐらいなら仕留める事も出来たかもしれない。
アウスゼンにはそんな知識さえない。
そんな中を不器用ながら焚火をしようとする。
なんとか火を点けた頃には辺りは夜の帳がおり真っ暗となった。
その真っ暗な中、焚火に近づく者がいた。
「へへへ。ちょっと当たらせてもらってもいいかね?」
見ると汚れた皮鎧を着た男が立っている。
「すきにしろ。」
身なりが汚らしく、普段なら近づけないのだが、この時は、疲れと空腹でなけなしの思考力無くなっていた。
「くへへへ。すまねえな。」
男はアウスゼンの向かいに腰を下ろした。
「こう暗いと、焚火の明るさはありがたいねぇ。」
「・・・・・」
「こいつはお近づきの印だ。」
と言って男はバックパックからエールを取り出す。
アウスゼンは空きっ腹にアルコールを入れた為か程なく泥酔する。
それと同時に、愚痴も多くなる
「くそ、この俺サマが何故こんな目に!!」
「そうだな、そりゃおかしい。あんたほどの戦士がそんな目に会うのはおかしい。」
「そうだろう、そうだろう。これもあのカイの奴が裏で何かをしたに違いない!」
「あんたも大変だったな。まあ、気が晴れるまで飲んでくれ。」
男は更に酒をすすめた。
「ところで、俺はあんたを男と、一流の戦士と見込んで頼みがあるんだ。」
「・・・・・何だ?」
「なぁーに。ちょいと仕事を手伝ってくれるだけでいいんだ。」
「仕事?」
「王都にいる俺の仲間の情報によると、大金を積んだ馬車がこの街道を通る。」
「・・・大金・・・」
「その額、なんと“500万GP”!!」
「500万」
額を聞いたアウスゼンはゴクリとのどを鳴らす。
「俺たちの仲間は、そいつを頂いちまおうと言う寸法さ。」
男は更に続ける。
「俺はあんたを男と、一流の戦士と見込んでいるんだ。」
「一流の戦士・・・」
「王都へ返り咲くためには金が要るだろう。」
「だが、しかし、・・・」
「ばれやしねえ。辺境は暴力が支配する土地なんだぜぇ。
見つかっても黙らせればいいのさ。」
と言って男は首を掻き切る仕草をする。
「暴力が支配する土地・・・・・」
そう呟くアウスゼンの目に暗い輝きが灯っていた。




