悪が来る!
「この度は、採用担当でございます。
本日は弊社の採用試験にお越しいただき誠にありがとうございました。
慎重に検討をいたしました結果、
誠に残念ながら、このたびは採用を見送らせていただくこととなりました。
皆様のご多幸をお祈りして・・・」
アウスゼンは新生フェールズの採用試験会場にいた。
フェールズが王直轄のギルドになって三か月後、
ギルドメンバーの募集は王都で大々的に行われた。
試験会場は王都の神殿を借りて行われ、
会場には200人ほどの人数が集まっている。
その内の何人かが会場から出て行った後に壇上から採用担当に不採用を告げられたのだ。
「なんだと!!」
アウスゼンは激高して壇上にいる採用担当に詰め寄り吼える。
「元フェールズの筆頭のこの俺が不採用とはどういうことだっ!!」
「貴方は・・・番号178番・・・後ろの方ですね、ええっと・・・」
採用試験を受けた人が書かれている冊子をめくり
「番号176,177、178、あったこれだ“アウスゼン”。元フェールズの戦士。」
「そうだ、それだ。」
「確かに、前のフェールズに所属していましたね。でもそれだけです。」
「なんだと!!フェールズにいたんだぞ!いたのだから試験自体おかしいだろう!」
「貴方は一度、フェールズを辞められていますよね?
それなのに試験を免除せよとはおかしなことです。
でも、所属を考慮して実技試験は免除になっているのですよ。」
「じゃあ、なんでおれが落とされるんだ!!」
「実技免除でも、筆記試験が・・・一桁ですが・・・断トツの最下位ですね。
話になりませんね。」
アウスゼンと採用担当の言葉を聞いた会場の人々の間で
「おいおい、聞いたか?」
「王立ギルドを受ける者がその程度とは・・・」
「あんな問題で一桁なんてどうやったら取れるんだ?」
プー、クス、クスと嘲笑が巻き起こる。
「ぐがッ!紙切れなんか関係ない!実力があれば問題は無いだろう!!」
採用担当はフッとため息をつくと
「そうですか。そこまで言うのならその実力を見せてもらいましょう。」
壇上を降り、アウスゼンの前に立つ。
「私は動きませんから、有効打が一撃でもあれば考慮してもいいでしょう。」
「くくくくく、言ったな!俺様の実力を見せてやるぜ!」
アウスゼンは採用担当を殴り付けようとした。
しかし!
ヴォン!
採用担当の前に障壁が展開されアウスゼンの拳を遮断する。
ガッ!
「くそっ!障壁か!卑怯な奴め!」
「あ、何なら愛用の武器を使ってもいいですよ。
その程度の実力なら何度来ても同じ結果ですから。」
「あ、それと今のフェールズは前とは違います。
何人か残っていたギルドメンバーにも試験を受けてもらっています。
誰も残りませんでしたが・・・。」
「おいおいあの程度で俺様の実力と言っていたのか?」
「そう言えばあいつ、筆頭と言っていたな」
「なるほど、あの程度を筆頭にするしかないからあんな事故を起こしたのだな。」
「お、まだやるのかな?」
「プー!クスクス、がんばれよー。無駄だと思うが。」
「おいおい、俺達は生暖かく見守ってやろうぜ。」
「採用担当を長くやっているとあなたの様な“身の程知らず”は結構多いのですよ。」
「あまり採用担当を舐めないでいただきたいものですね。」
採用担当の目がカッと見開くと
まるで轟音が鳴り響くかの様な霊気の輝きが見えた。
「すげえ!なんて輝きだ!」
「ぬ!あれは!」
「知っているのか、サンダーボルト!」
「霊気によって相手を威嚇することが出来る男、
元王国騎士団長の“ドレッド”!彼は引退していたはずだ。」
「そんな人物が採用担当なのか、中途半端な実力では落とされるのは無理もない。」
「ああ確かに。」
「あいつは問題外だがな。」
「全く。同じフェールズでも辺境に行ったという魔導士とは大違いですな。
彼は辺境伯が工房を任せるほど、と聞きます。
それほどの人物なら新生フェールズでも採用になったでしょう。」
それを聞いたアウスゼンは
「く、くそっ!覚えていやがれ!」
と捨て台詞を残し脱兎のごとく駆けだした。
(ちくしょう!なんで俺がこんな目に。)
(だがまてよ、あいつは同じフェールズの魔導士と言っていたな。)
(ヤツに違いねぇ。)
(あいつ程度が工房なら俺はギルドでも任されるにちがいない!)
(ギルド長になってやりたい放題のいい目が見れるぜっ!)
(こうしちゃいられねぇ。早速、リモーデに行かなきゃな!!!)




