魔導士は台を作る
一週間後、冒険者十名が護送しながら王都行の馬車が出発した。
中身はダンジョンコア三つである。
当初は辺境伯にも打診したのだが、“使い道が無い”という事で断られた。
あまりにも大きなダンジョンコアであったためだそうだ。
この大きさからカットできる精霊石は超大型ゴーレムの製作が可能だろう。
それは“戦争準備”ととられかねない。
“いらぬ疑い”を防ぐため、買い取らなかったらしい。
馬車が王都へ向かって出発している時、
カイは工房で親指ほどのコアをカットしていた。
宝石職人(王都ではカットは宝石職人が行う)ではないので効率良いカットは出来ないが、
それなりの効率にカットできるだろうと目論んでいた。
モンスターから採れる魔石は適切な処理を行いカットすると精霊石になる。
だが、モンスターから採れる魔石は穢れがあり浄化の必要がある。
ダンジョンコアは魔石と違い穢れがない為、カットするだけで精霊石になる。
そして精霊石はカットによって輝きが変わる。
輝きはマナ放出効率と比例し、美しいカットであればあるほど効率が良くなる。
逆にカットの良くない、効率が悪い精霊石はすぐに消耗する。
カイは精霊石をある物に組み込もうと考えていた。
“保温の魔法陣”
“魔力照明”の魔法陣の一部を改造して保温出来る様にしたものである。
これによって精霊石で保温できる“台”いわゆる“保温台”を作るつもりなのだ。
“魔力照明”の魔法陣は大きく分けて三つの魔法陣になっている。
一つ目の魔法陣は一番内側にあり、明るさが低い。
二つ目の魔法陣は一つ目の魔法陣のすぐ外側にあり、一つ目の魔法陣のよりも明るい。
三つ目の魔法陣は一番外側にあり、三つの魔法陣で最も明るい。
“魔力照明”はこの明るさの違う魔法陣を組み合わせることで
明るさが七段階に調整出来る様になっている。
これを“保温台”に応用するのだ。
“魔力照明”より魔法陣の数を一つ減らし、調整を三段階変える。
必要な保温の温度が三種類であったのと、作業を減らすためだ。
カイは台の外側に二つの魔法陣を刻んだ。
そこに精霊石と調整機構を組み込む。
「というわけで、この保温台をこの間のジョン少年に試してもらおうと思う。
だが、少年の居所が判らない。」
とカイはルリエルやフィリアに尋ねた。
「少年?」
「この間、怪我をした少年ですね。彼は酒屋のダニエルさんの息子さんです。」
「それなら話は早い、彼にこれを試してもらおう。」
「わかりました。では、呼んできますね。たぶん店にいると思いますので。」
と言うとフィリアはジョン少年を呼びに行った。
もうそろそろ昼になる為、時間は取れるだろう。
“保温台”を色々操作していたルリエルが聞いてきた。
「魔法陣、替える、どうなる?」{この魔法陣が別の物だったらどうなりますか?}
「刻み方にもよるが・・・
例えば火だったら、強さの調整できる火が・・・。」
この時カイの頭に、“魔力焜炉”と言われるものが閃いた時であった。




