魔導士はパーティを組む
「しかし驚いたな。猫獣人の魔法使いとは・・・。」
「“ヴァニア”ギルド長は優秀な魔法使いですよ。攻撃も回復もできますし。」
工房に帰り道、カイはフィリアとギルド長の話で盛り上がっていた。
フィリアの話によると、ヴァニアを戦士系だと勘違いする人は多いそうだ。カイも故郷いる猫獣人の多くが戦士系なので勘違いしてしまったのだ。
「それはそうとカイさん。回復薬や傷薬の予備はいくつ位あるのですか?」
「十本、傷薬は六つですね。」
「判りました。では材料の在庫は?」
「辺境伯からの支給材は手付かずです。都から持っていた物は使い果たしました。」
「そうですか。……辺境伯の支給材?」
カイは辺境伯からの依頼の内容をフィリアに話す。
フィリアは辺境伯から依頼があったとは知らなかった。しかし工房の受付を担当するのなら知っておいてもらう必要がある。
「だ、大丈夫なのですか?辺境伯からの依頼は?」
「そうですね……。材料さえあれば一週間でできると思います。」
カイは作成日数をすばやく暗算する。
「い、一週間?!それで間に合うのですか?」
「調合する時間に問題はありません。ただ材料が……。」
カイとフィリアは工房へ戻ると早速、支給材を確認する。支給材を確認した途端、カイの顔が険しくなる。
「カイさん。どうしました?」
「……通常ならこれらは良い物なのですが、自分の調合には使えません。」
「ええ?」
錬金術師と違い魔導士の調合は自己流に改良を加えたものが多い。カイの調合もその例の通り独自の調合になっている。
辺境伯の支給材は一般的な錬金術師用の物でありカイの調合には向かない物だった。
「森へ採集に行く必要があります。」
「でしたらギルドで採集の為のパーティを募集してはいかがでしょう?」
次の日、カイはフィリアの助言に従いギルドに足を踏み入れた。
今日は前に来た時と違い空気が変わることはない。この間の件が知られたことで“緊張する相手ではない“と言うことが判ったのだろう。
窓口へ向かうと今日は受付にいたフィリアに話しかける。フィリアはカイの工房の受付をしない日はギルドの受付をすることになっている為である。
「森へ採取に出かけるのでパーティの斡旋を頼みたい。」
「はい、カイさん。リストアップしておきました。」
フィリアはそう言うとカイに冒険者のリストを渡した。
リストには様々な経歴の冒険者が名を連ねていた。辺境の為、エルフの国やドワーフの国に近い為か王都と違いエルフやドワーフが多い。
その中の一人、エルフの名前にカイの手が止まる。
「ルリエル・ギルヴォーレン、遊撃士か。」
この間のエルフだ。
遊撃士はエルフとの相性がとても良い。薬草の採取も期待できる。話が弾んだこともあり、一人は彼女で決まりだろう。
「他は前衛が二人ほど必要だな。フィリアさんどの人が良いと思いますか?」
「そうですねぇ。ルリエルさんを加えるなら、・・・」
そう言って二人の人物を紹介してくれた。
一人は人間の重戦士、名前はバハル・ゴラウズ。
もう一人は人間の神官戦士 ニライ・ゴラウズ。
家名が同じという事は血縁ではないかとカイは推測した。それに併せてパーティに兄弟や夫婦がいる場合のメリット・デメリットを考えておく。が、採集程度で問題になる事はないと判断する。
「判りました。フィリアさんの推薦なら問題ないでしょう。」
「はい。では呼んできますね。」
返事をするとギルドに併設されている宿屋の方へ走っていった。二人はギルドの宿に部屋を取っている様だ。程なくフィリアは二人の人物を連れてギルドに戻ってきた。
「・・・女性だったのか。」
「変なことを言うね。女だったら何か不都合でもあるのかい?」
少し肌の黒い大柄な女性がカイを睨みつける。
「いや、そう言う訳ではなく。名前で男かと思ったのです。」
「ああ、バハルもニライも男の名前であるからねぇ、なるほど。」
「で、どうするんだい?あたしはバハル・ゴラウズ、戦士だ。こっちは妹の」
「ニライです。神官戦士をやっています。」
二人とも魔導士であるカイに物怖じしていない。これならば薬草の採取ならば問題ないだろう。
「よろしく。カイ・サーバル 魔導士です。」
「よろしくたのむよ!」
「よろしくお願いします。」
「あとは・・・」
カイはエルフがいないか辺りを見渡す。
「ルリエルさんなら後から来ますよ。」
フィリアによると採集の為に用意する物があると言う話だ。
このパーティ、薬草の採取にしては豪華なパーティ編成だが東の森はカイにとって初めての場所である。
準備をどんなに周到にしても問題は無い。カイは装備や道具の入念に確認をする。
その姿をバハルはじっと見ている。
「話には聞いていたけど、結構出来る人みたいだね。」
「???」
「ああ、あたし達の旦那はディンカって言うんだ。」
カイはその言葉を聞いてドレッドヘヤーの男を思い出していた。




