魔導士は魔法使いに会う
翌日、カイはギルドの前にいた。
何日も日延べしたが、今日ギルドへ正式登録する為に来たのだ。
カイはキリッとした顔でギルドへ足を踏み入れる。受付にはフィリアが座っているのが見えた。
カイが受付の前に立つとフィリアは昨日の様に微笑み
「あ、カイさん。今日はずいぶんすっきりした顔をしていますね。」
「あ、ああ。昨日は久しぶりに眠れたからね。」
事実、昨晩は十分な睡眠がとれたらしく死人の様な姿ではない。
「もうあんな無茶をしてはダメですよ。」
「はい。反省しています。」
こう大人しく反省している姿を見るとフィリアのカイに対する印象が変わってゆく。当初、気難しい魔導士を連想していたのだが、今は”腕はいいのだが世話の焼ける人”と思っていた。
(世話を焼かれただけで自分に気があると思ってしまう。彼女はギルドの職員としての仕事をしているだけだ。とは言え、つい顔が緩みそうになる……自重せねば。)
カイはポーカーフェイスの維持に努める。
そんなカイの努力を知ってか知らでかフィリアは微笑みながらカイを案内する。
「ではカイさん、こちらへ。二階の奥の部屋でギルド長がお待ちです。」
ギルドの建物は石造りの二階建てで、内外を漆喰で塗り固め白くザラついた壁になっていた。
その二階の奥にギルドマスターの部屋がある。
フィリアは部屋の扉の前に立つと軽くノックし扉越しに声をかける。
「ギルド長。魔導士のカイさんをお連れしました。」
「おうぅ、入ってくるにゃァ。」
(・・・にゃァ?)
カイが妙な語尾に首をかしげながら部屋に入ると部屋の主が声をかけてきた。
「よくきたにゃ。魔導士殿。うちがこのギルドの代表、ギルド長の“ヴァニア・ベルトーニ”だにゃ。」
訪れた部屋の奥、大きな机と沢山の書類に囲まれた猫系獣人がいた。
「一応、フィリアから報告は受けている。が、君からも聞いておこうと思ったにゃ。時間が掛かるから座って話すにゃ。」
ヴァニアはカイに席をすすめる。ヴァニアはカイとじっくり話す気でいるようだ。
カイは観念した様子で工房に訪れてからの事を話しはじめた。
「ふむ、判ったにゃ。昨日聞いたフィリアとの話にも矛盾はないにゃ。」
「はぁ」
「二人の話を聞くに、魔導士カイお前は……」
カイはゴクリと息をのむ。
「お人よし過ぎるにゃ。」
「うっ。」
「そんなのでよくこの稼業を続けられているモノと思うにゃ。」
はぁー、ヴァニアはとため息をついた。
「兎も角、ようこそ。魔導士カイ殿。ギルド“リムスキレット”はあなたを歓迎するにゃ」
と言って手をスッと差し出した。カイは差し出された手をとり一礼する。
「よろしくお願いします。」
カイト握手をしたままヴァニアはイリアの方へ顔を向ける。
「それと、フィリア。」
「は、はい。」
「明日からカイの工房の受付をやるにゃ。」
「それは判りましたが、良いのですか?ギルドの仕事では無いのに給金を頂くのは……?」
「ギルドの少しシフトをいじる必要があるにゃ。でも他は問題ないにゃ。」
ヴァニアはニヤリと笑いカイの方へ向き直った。
「フィリアの給金はお前が出すからにゃ。」
「……」
「ただで人を貸すわけないにゃ。これでも格安にゃ。」
「あ、ありがとうございます。そうだ、ギルド長。前衛として戦うのなら回復薬や傷薬が必要でしょう。格安にしておきますよ。」
獣人は身体能力を生かし前衛で活躍しているものが多い。
ただ軽い防具を着ける為、怪我が多い。ヴァニアも同じだろうとカイは判断したのだ。
「む、失礼な奴だにゃ。」
「???」
「これでも私は魔法使いにゃ。」
ギルド長は猫魔法使いだった。
フィリア「ギルド長は攻撃魔法での手加減も出来るのですよ。」
カイ 「ほう。それは素晴らしい。どんな魔法ですかギルド長?」
ギルド長「肉球アローにゃ。無数の肉球で踏み踏みする技にゃ。
これをすると相手は戦意を喪失するにゃ。」
カイ 「・・・・・」




