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第152話 試行錯誤しました

 その日の夜、夕食を兼ねてタイタイ茶漬けを作ってみることにした。


「まずは、タイタイを捌いていこう」


 ヒレや鱗、内臓を抜いてもらったタイタイを三枚におろしていく。


 動画サイトで魚を捌く動画を見るのは好きだったから、手順は覚えている。


 けど、いざ自分で捌いてみると、包丁が引っかかってうまくいかない。


 なかなか難しいな。


 しばらく格闘して何とか三枚におろし終えた。


 そしたら皮をひいて、刺身の形に切っていく。


 これも素人がやると少し不格好になるな。


 領主様のお屋敷に行くまでに特訓することにしよう。


「少しつまみ食いしてみるか」


 俺がポツリと呟くと、


「つまみ食いですか!?」


 テーブルで事務作業をしていたサラが素早く俺の横に駆け付けた。


 食べ物の事になると地獄耳だな。


 俺は小皿に醤油を注ぎ、タイタイの刺身を一切れ浸して頬張った。


「うっま」


 少しコリコリとした食感で、噛めば噛むほど口の中にうま味が広がる。


 やっぱり、刺身は原点にして最高の料理だ。


「塩釜焼きの時とは全然違いますね。調理方法でこんなに味が違うなんてびっくりです!」


 サラも美味しそうに食べてくれた。


「もうひと……いやもう二口♪」


 そう言いながら刺身に手を伸ばすサラの腕を俺は掴む。


「つまみ食いは少し食べるから美味しいんだよ」


「……はい」


 サラがシュンとしながら手を引っ込めた。


 厳しいようだけど、このままサラにつまみ食いを許すと刺身がなくなりそうだからしょうがない。


 そして、前もって用意しておいた、醤油やみりん、酒を混ぜ、一度沸騰させたタレにタイタイの刺身を漬けた。


 冷蔵魔導具に入れて馴染ませている間に、今度はだし汁の準備を進めていく。


 タイタイのアラに塩をまぶして、余計な水分を落とした後、昆布の葉っぱを入れた鍋に入れて少しずつアクを取りながら煮出していく。


 時間はかかるけど、丁寧にやらないとね。


 最後に汁をこしたら塩で味を整えて、タイタイだし汁の完成。


 その後、ご飯の上にタレに漬けたタイタイの刺身を乗っけて完了だ。




「お待たせ」


 テーブルで夕飯が出てくるのを待っていたサラの目の前に料理を出す。


「いただきまーす!」


 サラがスプーンでタイタイの漬けとご飯を頬張った。


「ご飯との相性が抜群ですね!」


 サラが嬉しそうに言う。


「ご飯粒ついてるよ」

「あっすみません」


 サラが恥ずかしそうに米粒をとる。


 俺も食べてみると、漬けたタレのしょっぱさがいい感じで、ご飯がすすむすすむ。


 酢飯でも美味しいんだろうけど、今回は茶漬けだからね。また別の機会に試してみよう。



「あ、ご飯を半分ぐらい残しておいてくれ」


 そのまま完食しそうな勢いのサラを制止する。


「残しましたけど、どうしてですか?」


「ここに熱々の汁をかけるんだ」


 俺はポットに入れただし汁をサラの皿の中に注いだ。


「タイタイの色が変わりましたね!」


 サラが目をキラキラと輝かせる。


「これでよし、召し上がれ」


「改めていただきます!」


「サラサラとしていて、とっても食べやすいです!あ、ダジャレじゃないですよ」


 サラが慌てて付け加える。


「分かってるって。俺も食べてみよう」


 汁と一緒にご飯を口に搔っ込むと、出汁の優しい味で口の中が満たされた。


 そして、タイタイの漬けも熱々のダシをかけることで半生状態になって違う美味しさがある。


 これも抜群の味だ。



「おかわりください!」


 サラが満面の笑みでお皿を俺に出してくる。


「了解、ちょっと待ってて」


 こうなることは予想通りだったので、俺は準備していた漬けをよそってサラに渡した。


「リュウさんの故郷の食べ物ってほんっとうにどれも美味しいです」


 サラも俺と出会ってからすっかり地球の料理の虜になってるな。


「ありがと、これからも色々作ってみるよ」


 こうやって喜んでくれるのなら、どんどんチャレンジしていたい。


「はい、約束ですよ!」



 ーーーーー



「ふー!ごちそうさまでした!」


 サラがそう言い終わった後、手で顔を仰いだ。


「暑かった?」


「はい、食べ終わったら少し汗が出てきました。もちろん、最高に満足ですよ」


 ケンドットは温暖だからな。熱いものを食べるとそうなる。


「領主様に出すときには、冷たい茶漬けも選べるようにしようか」


「そんなことも出来るんですか?」


「うん、ちょうど冷蔵魔道具があるし」


 どっちがいいのかは好みがあるから、2パターン考えておくのが正解かな。


「リュウさんの料理は奥が深いですね」


 サラが感心する。


「これから1週間は料理の方にも時間を割いていこう」


 さっきの刺身の切り方も含めてもっと色々改良できるはずだ。


 少しでも美味しい料理を作りたいからね。


「はい、お手伝いします!」


 サラが力強く頷いた。


「ありがとう、よろしくね」



 こうして、俺たちは準備を頑張っていった。

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