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第148話 子供の笑顔

明日の投稿が難しそうなので、早めの投稿です!

「私も一本貰おうかしら」


 コワモテのおじさんが去った後、すぐに一人の女性がやってきた。


「さっきの人が美味しそうに食べている姿を見てねぇ。気になったのよ」


「ありがとうございます」


 これも屋台の醍醐味だな。


 目の前でお客さんが食べていってくれるから、その反応を見てさらに人が来てくれる。


 俺は一本手渡した。


 女性は小さく一口かじる。


「ん!思ったより味がしっかりしてるわね。でも酢漬けよりも味がまろやかでいいわ」


 顔をほころばせる。


「自家製の液に漬け込んでいますから」


 分量も考えて酸味は抑えたからね。実験した甲斐があったよ。


「あらそうなの。是非その調理方法を教えて欲しいぐらいだわ」


「そこは秘密にさせてください」


「ふふっ、そうよね。また来るわ」


 女性は食べながら去って行った。



 その後も、少しずつ売り上げを伸ばしていき、夕方になった。



「あ、キュウリが売ってる。ミリ、食べてみる?」


 母親と4歳ぐらいの女の子が店の前にやってきた。


「いやっ!たべない!」


 女の子はお母さんの手は握ったまま顔をプイッと背ける。


 野菜嫌いなのかな?


「ごめんなさいね」


 母親は俺の方を見て謝ってきた。


「いえいえ、大丈夫ですよ」


 子供の頃は嫌いな食べ物って多かったりするからな。


 俺も小さい頃グリーンピースが苦手だったんだ。


 サラダに入っているとこっそり横によけるんだけど、見つかって親によく怒られたもんだよ。


「野菜を食べさせたいんですけどね……」


 まだ顔を向けない女の子を見て苦笑いする。


「お子さんにも食べやすい味付けになっている思うので、もしよかったらお一ついかがですか?」


「そうですね……一ついただけますか」


 俺は屋台の反対側にまわって、女の子の前でしゃがみ込む。


「どうぞー」


 出来るだけ笑顔で女の子の前にキュウリを出してみた。


「ほら、ミリ。受け取りなさい」


 女の子はめちゃくちゃ嫌そうな顔をしながらも俺からキュウリを受け取った。


「いやっ!」


 やっぱりまだ抵抗しているな。


「一口食べてくれたら、今日のデザートにミリの好きなリンゴを出そうかなぁ」


 お母さんが独り言のようにつぶやく。


「りんご!?」


 女の子がお母さんの顔を見る。


 お、釣られてるな。そうだ、


 俺は創造魔法を使って、屋台の上に一つリンゴを作り出した。


 そして、再び女の子の前に戻る。


「もし、一口食べてくれたら、このリンゴあげちゃおうかな」


「!?」


 女の子は俺が手に持つリンゴを見て目を丸くする。


「いいんですか?」


 お母さんも驚いた反応をする。


「ええ、お一つ差し上げますよ」


 創造魔法だから原価は0円だ。一つサービスするぐらいなら問題ない。


「すいません、ありがとうございます」



 肝心の女の子は俺の手に握られているリンゴと自分の手に握られているキュウリとを交互に見つめている。


 多分、心の中で葛藤してるんだろうなぁ。


 そして、


「……たべる」


 そう小さく呟くと、女の子は、ものすごく小さな一口でキュウリを食べた。


 ぎゅっと目をつぶりながらもぐもぐ噛んでいく。


 すると、急に目をパッと輝かせた。


「おいひい!!」


 女の子は夢中になって食べていく。


 良かった、一安心だ。


「この子が野菜を嬉しそうに食べるなんて……」


 お母さんが感動している。


「ママにも一口ちょうだい」

「いや!」


 今度は別の意味で顔を背けながら、リスのようにキュウリを頬張っていく。


「しょうがないわね。すいません、味が気になるのでもう一ついただけますか?」


「かしこまりました」


 俺はキュウリを手渡した。


「……食べやすい。この子も夢中になって食べる理由が分かります」


 お母さんも納得の表情だ。


 こうして、親子二人は仲良く食べていった。


 ーーーーー


「ごちそーさまでした!」


 女の子はキュウリを食べて満足そうに俺にお礼を言ってきた。


「はい、これは約束のリンゴだよ」


「わー!」


 女の子は俺からリンゴを受け取ると大事そうに両手で抱える。


「ほら、ちゃんとお礼をいいなさい」


「おじちゃん、ありがとう!」


 女の子は満面の笑みでそう言い放った。


「お……、うん、ありがとうね」


 俺は喉元まで出てきた様々な言葉を飲み込んで返事をする。


「すいません、本当にありがとうございました」


 母親が謝ってくる。


 別にほんの少しも気にしていないわけではない気がするけどいいんだ……うん。


 前にもマイマイ村で似たようなことあったし、耐性はできてる。


「ばいばい!」


 まあ、手を振りながら去っていく女の子の可愛さに免じて許してあげよう。



 ただ、横で笑いを必死にこらえているサラ、お前は許さない。

第一巻が発売中です!


書店に自分の作品が並んでいるところを見れてとても嬉しく思っています。


皆様本当にありがとうございます!


どうぞよろしくお願い致します!

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